記憶の糸は重なり合いながら
記憶に語りかける糸
糸に込められたが様々な形に連なり、広がり、絡み合い
ながら様々なイメージに変換されて、見る者の記憶に
語りかける。人は膨大な視覚情報の中、様々な選択を
して今に至る。私の日々の旅の記録もそのさなかに。

線としての糸が重なることで

時間を内包するような厚みを持った作品や

糸は重なっては立体として立ち上がり

生じる影はそのものの奥行きをも表して

展示室に設置された家に巡らされた赤い糸

家というものは、取り巻く関係を象徴するもので

それらの持つ記憶も一様ではなく

その上に記憶の糸は、幾重にも重ねられていく

人を包み込むようなイメージの家の形に

過去に見た家の形の記憶を
おぼろげにも重ねながら

家は満たされているものでもなく

そこに生じた隙間が記憶の不確かさを表しつつ

家という形を通して、記憶の形が表現される

展示されるドレスは赤から黒、そして白へ記憶をなぞるように

天井から床までの大きなドレスに姿を変えて

それは目にする現実や形がいかに多様かを、つながりの中で

展示物に与えられた動きによって指し示してくれる

動きが与えられた形は姿を変え続け

ゆっくりとした回転運動の中で

重なる円は、惑星を表すようにも

展示は宇宙全体をもモチーフとするように

惑星のような円の形は、落とす影との関係を変えながら

円の形の記憶にもつながるように

四角のフレームも、ゆっくりとまわり

そのフレームの向こうに、うねるような記憶の形の

作品の中には、メッセージが書かれた白い紙が

とりこまれ、それらは宙を舞うように散りばめられる

糸の連続や舞う紙が映し出す影さえもが

意味を帯びるようで。メッセージが込められた

白い紙自体は、つながる輪という作品の一部となり

ミクロの部分からマクロの形へと

作品全体は、見る者を吸い込むように広がって

それらを構成する赤い糸は、人と居場所をつなぎ

つむがれては人と人をつなぎ

そして糸は自由に広がり、展開し

様々な形へと連続していく

赤い糸は自由に踊るように

空間や画面全体に広がって

私へとつながり

その糸の連続は、また誰かへとつながるように
つながる私という、世界にひたり
塩田千春さんの世界感をうけとめる

塩田千春 つながる私 という大阪中之島美術館だけの展覧会
つながる私。目に見えない記憶に形が与えられ、それら
は目に映る日々の形に重なる。私が行うのは、世界に
浮遊するものを繋げ、重ね合わせていくこと。それは
私にとって世界とつながることでもある。数多の物と、
つながる私。世界はあまりに広く、歴史は途方もなく、
その中で出会う僅かなものに、つながりを感じながら。
