見出し画像

#008 「え、二回お辞儀するの?」リッツ・カールトンで出会った“記憶に残る達人”


こんばんは😊
『記憶に残る人になる』著者の福島靖です。
このnoteでは、人の心を動かし、記憶に残る人になるための思考と実践を、
ホテルマン・営業マンとしての実体験からお伝えしています。

リッツ・カールトンには、記憶に残る人が沢山いました。

と言うと、
「きっと凄いサービスをしていたんでしょう?」
と思われるかもしれません。

でも実は、そんなことはありませんでした。

むしろ逆で。

僕の印象では、リッツ・カールトンというホテルは
「大きな感動」よりも「なんかいいな。」という小さな感動を積み重ねているホテルでした。

だから、やっていることの多くは特別なことではありません。
誰でも真似できることです。

ただし一つだけ違うのは、
そこに気づいているかどうか。

今日はそんな、小さな感動の話です。


「二度のお辞儀」をする女性スタッフ

よく言われることですが、
人の印象は「最初」と「最後」が一番残りやすい。

だからホテルでは、
お出迎えとお見送りをとても大切にしています。

今日のエピソードは、その「お見送り」のお話。

ザ・リッツ・カールトン東京の45階には、
「ザ・ロビー・ラウンジ & ザ・バー」という場所があります。

アフタヌーンティーからお茶、軽食、お酒まで楽しめる人気の場所です。

そこに、僕と同い年の女性社員がいました。

彼女は別のラグジュアリーホテルから転職してきた人で、
とにかく笑顔が素敵な人でした。

そして彼女には、ひとつ特徴的な行動がありました。

それが――

「二度、お辞儀をする」

というものです。

彼女はお客様をラウンジの出口までエスコートすると、
満面の笑顔で見送ります。

そして、お客様に向けて深々と一礼。

ここまでは普通ですよね。

でも不思議だったのはそのあとです。

お客様の姿が見えなくなった後に、
もう一度、深々とお辞儀をするんです。

一度目は理解できます。

でも二度目は、どう考えてもおかしい。

だって、もうお辞儀をする相手がいないんですから。


周りのお客様へのお辞儀

気になった僕は、彼女に思わず質問してしまいました。

「二度目のお辞儀って、何のためにしてるの?」

すると彼女は、こう答えました。

「一度目はお客様へのお辞儀。
二度目は、周りのお客様へのお辞儀なの。」

最初は意味が分かりませんでした。

周りのお客様へのお辞儀?

すると彼女は、こう続けました。

「福島さんって、こんな経験ない?
直接自分が接客された訳じゃないけど、
気持ちのいい接客を見て気分が良くなったこと。」

確かにあります。

レストランで子どもに優しく接しているスタッフを見たとき。
居酒屋で笑顔で接客している店員さんを見たとき。

自分が接客されたわけでもないのに、

「この店いいな」
「気持ちのいい店だな」

そう感じたこと。

彼女は、その空気をつくりたかったんです。

本当なら必要のない
**“二度目のお辞儀”**をしてまで。

そのお辞儀を見た他のお客様が、

「気持ちのいいお辞儀だな」
「ここは心地いい場所だな」

そう感じてくれることを願って。

この話を聞いたとき、
僕は心が震えるほど感動しました。

なぜなら当時の僕は、

周りのお客様の視線まで考えたことがなかったからです。


理念を行動で表現する

リッツ・カールトンには
「クレド」と呼ばれる理念があります。

ラテン語で「信条」という意味です。

そのカードには、こんな一節があります。

「感じのよいお見送りを。
さようならのごあいさつは心をこめて。」

でも、この言葉はとても抽象的です。

「感じよくしよう!」

と言われても、
具体的に何をすればいいのか分からない。

だから多くの現場では、
つい精神論になります。

でも彼女は違いました。

「感じのよいお見送り」とは何か。

それを、
お客様が実感できる形にしようと考えた。

きっとそうじゃないかなって思うんです。

その結果が、

「二度のお辞儀」

だったんです。

理念を、行動で表現する。

言葉だけではなく、
人の心にちゃんと届く形、「行動」で表現する。

それが彼女のサービスでした。

彼女には沢山のファンがいました。

女性も男性も、
彼女の笑顔や立ち振る舞いに魅了されていたんです。

こんな話をすると、
よくこう言われます。

「そこまで考えるのって大変ですね。」

確かにそうかもしれません。

ただ「頑張ろう!」「おもてなしの気持ちで!」と接客するだけなら、
もっと簡単です。

でも、それでは伝わらない。

その店が何を大切にしているのか。
なぜその店が存在しているのか。

根拠を持って伝わらないんです。

リッツ・カールトンが
リッツ・カールトンである理由は、

豪華な内装でも、料理でもありません。

理念を、行動で表現する人がいること。

そこに価値があるんです。

色を出せば、好き嫌いも生まれます。

でも色を薄くすれば、
誰の記憶にも残らない。

言葉も大事です。

でも人の心を動かすのは、
最後はやっぱり表現です。表現すること。

それも、自分らしい表現。
自社らしい表現。
「在り方」に沿った表現。

あの「二度のお辞儀」は、
僕にそのことを教えてくれた、小さな出来事でした😊

この記事が参加している募集