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繊細な会話

【新本】丸山健二 著 2005年2月11日発行 『夏の流れ』 講談社文芸文庫:読了(2025.5.20付) 

ある本屋の店主さんと話をしているとき、好きな作家のことが話題にあがった。そのお店は、文学や雑誌もあるけれど、特にポップカルチャー、サブカルチャーの分野に属するような本がよく目に付く。僕は店主の趣味もそこにあるものだと思っていたが、僕は昭和の渋い文学が好きなんです、若いときはそういう本ばかり読んでいたと聞いて意外に思った。自分にとって大事な作家が3人いると言った。佐藤泰志、丸山健二、もうひとりをうっかり忘れてしまったけれど、僕自身どの作家も読んではいなかった。
これは3人のうち、どれかの作家と縁を結ばないといけないなと思ったので、せっかくなら店主さんのお店で買いたい。3人の作家のあるものでいいので、一番安い本を買おうかと思って、店内の棚をしらみつぶしに探したが見当たらない。何か探してるのかと聞かれたので、いや、さっき聞いた3人のうち、誰か読みたいなと思ってと言ったら、今な、ないねんと言って笑っている。棚にささっているだろうと勝手に思っていたので、思わず、ええと声が出てしまったが、店主の読書趣向とお店にある本は必ずしも一致などしない。お客さんの求めていることと、店主の好きな本は別なのだろうと思う。
なんか読みたいのあるんやったら頼んどくよ。じゃあ、丸山健二お願いしていいですか、本はお任せします。ほんまに、僕は丸山文学の初期が好きやし、講談社にしようか。

講談社文芸文庫に高額な値段を許せてしまうのはなぜか

そうして手もとに届いたのが、『夏の流れ』である。
表題作を読んで思ったけれど、会話をこんなにもていねいに書く人は初めてである。それが独特のリズムを生んでいる。心理的な描写よりも登場する人物がうなづく一言でなんだかすべて伝わってくるような繊細さを僕は感じた。内面の描写が凄まじいのは、どの作家にも言えるだろうが、丸山健二の作品には、おもむろに口からついた一言に、重々しい感情がのっているような気がする。『夏の流れ』にある囚人が処刑される描写も、読んでいて胸が苦しく、読んでいるこちらの呼吸が荒くなるようだった。この作品を書いたのは弱冠23歳というのが、驚きである。

目次

夏の流れ
その日は船で
雁風呂
血と水の匂い
夜は真夜中
稲妻の鳥
チャボと湖

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