【データで検証】「年金だけじゃ暮らせない」は本当? 知っておきたいお金の真実と日本の福祉制度
年金について、どういうイメージをお持ちでしょうか。
元気な時に、貯金箱にお金をコツコツ貯めておいて、年を取ったらその中身を少しずつ使っていく。
そんなイメージの方もいらっしゃるかもしれません。
でも、もしそうだとしたら、少しだけ誤解があるのかも。
今日は公的なデータも交えながら、私たちの大切な「お金」について見ていきましょう。

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年金は「自分の貯金」ではなく「助け合い」
年金は、今は現役世代(年金を受給していない方)が払った年金保険料を、その時々の受給者に分配する仕組みで成り立っています。
積み立て運用分もありますが、基本的には、「働ける人が、働けない人を支える」という「助け合い」の仕組みなんです。
(出典:厚生労働省 教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?)
だから、年金について少し「モヤモヤ」する方は…。
貰う側は、「現役世代に支えてもらっている」という意識、払う側は「このお金で年金生活者を支えている」という意識を持ってみるというのはどうでしょうか。
「自分の将来のために払っている」「当然もらえるもの」と思うよりも、少しだけ社会とのつながりや、支払う意義を感じられるのではないでしょうか。
お年寄りなど、何らかの理由で働けない人を「助ける」お金。
私たちが払い、そしていつか貰うのは、誰かを支えるためのお金です。
年金は払った以上に貰える、お得な制度
「でも、払った分くらいは回収したいよ!」
そんな声も聞こえて来そうです。
でも計算してみると、実は年金という制度は「払った分がもらえる」どころか、ずっと「お得」な仕組みになっています。
誰でも入れる国民年金でざっくり計算してみましょう。
まず令和7年の月あたり支払額は、17,510円です。
(※厚生年金はもっと高いですが、今回は分かりやすく国民年金のみ計算します)
1年間で210,120円。
20歳から60歳まで40年間保険料を納めたとして、払う総額は大体840万円(8,404,800円)。
これで、貰える額は月額69,308円(令和7年改定額)です。
約10年間(約121か月)で、自分が払った額を超えます。
私たち日本人の平均寿命は令和6年時点で、男女平均84歳でした(令和6年簡易生命表)。
60歳から年金を貰い始めたとしても、70歳以上になるまで生きている可能性はとても高いです。
もし、84歳まで24年間貰い続けた場合、受け取る総額は19,960,704円。
約2000万円になり、支払った金額(840万円)に対して2倍以上になります。

実際には物価や年金額の調整が入ります。
その間の物価上昇などを加味しても、基本的に年金は、「払った以上に貰える制度」になっているんです。
「そうはいっても、そんな余裕はないよ……」
そんなあなたにも、安心なお知らせが。
本当に苦しい時は、国民年金なら、年金保険料の免除や猶予の申請ができます。
単に「滞納」してしまうと後々困ることも多いのですが、正当な理由(お金がない、仕事がない、など)があっての「免除」「猶予」は不利益が少なくすみます。
もし年金だけで足りなかったら?
「でも、月に7万円じゃ生活できない。年金だけで生活していけないなんて……」という声も聞かれますが、「年金」は自助と合わせた共助の仕組みであって、それだけで生活を完結させてください、というお金ではありません。
(ただ、国民年金のみ加入している、というのは主に自営業などの場合であって、会社員の場合は基礎年金と厚生年金、両方合わせて、実際にはもっとたくさん受け取れます。)
ですから、貯金や労働と合わせて生活する。それが出来なければ、親族などから援助を受け、それでも足りないなら、生活保護を受給できます。
生活保護について誤解をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、生活保護費は収入のうち、「最低生活費」に満たない分を補填する形で支給されます。
収入が完全なゼロになってから受け取るものではなく、「最低生活費」に不足した時から使える制度であり、足りない分を補う制度なのです。
参考までに、ある年の東京都23区の単身高齢者に対する最低生活費は「約13万円」と計算されました。
(出典:厚生労働省 生活保護制度の概要等について)
これはあくまで一例で、市区町村の物価や住居費、年齢や家族構成によって変動しますし、障害者など特定の条件の場合は加算手当が支払われます。
この場合、年金収入が10万円だったら、差額の3万円は生活保護費として受け取れる、ということになります。
「13万円って安すぎない?」と感じるかもしれませんが、生活保護受給者は医療費、介護費、税金(所得税・住民税)、NHK受信料など、多くの支払いが軽減、免除されます。
今のあなたの状態で収入が「13万円」になるのとは、少し状態が違うのです。
病気のせいで福祉制度を頼ることも多かった私には実感できることですが、日本の福祉制度は、全般的に「ないところ」からは取らない優しい制度になっています。
年金と生活保護、実はとてもよく似ている
「年金額が足りないから、生活保護を頼る」ことに、抵抗がある方もいらっしゃるかもしれません。
「年金は、今まで自分が払ってきたから、貰える正当な権利だ」
「一方、生活保護は血税。怠けてきた人が受け取るものだから、恥ずかしい」
といった信念をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが……
実はすでに、年金はある程度の割合を国庫(つまり税金)が負担しています。国民の保険料負担軽減などのためです。
厚生労働省は年金の財政収支を公開しています。
例えば、令和5(2023)年度)の公表データを見ると、全体の年金収入(54兆3904億円)のうち、12兆1034億円が国庫(つまり税金)です。

(なお、この年の年金支出は54兆4703億円で、799憶円の赤字でした)
さらに、2025年のデータで、すでに「年金」などの社会保障に関する給付と負担のバランスは全くの赤字になっていて、公費(つまり税金)が55.3兆円も投入されています。
これは、給付全体の40.2%を占めています。

つまり年金や医療費の財源って、ほぼ「税金」になりつつあるんですよね。
しかも、日本の人口ピラミッドを見ると、今後は第二次ベビーブーム世代が年金生活に移行し、少子化で働き手の数は減るという「年金の波」がくることが分かります。

人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)より引用
このため、社会保障費に伴う税金の支出は増えていく見込みです。
ただ、年金に関しては、朗報も。
最初に述べた通り、年金って完全に分配制度となっているわけではなく、余剰金などを積み立てて来た、「積立金」もあるのですよね。そして、積立金はGPIFという機関が資産運用しています。
(お金の価値は不変ではないので、貯めているだけだと価値が下がっていく可能性があるからです。)
そして、この積立金の運用実績がなかなか良くて。
2025年度は、260兆243億円が運用資産となっていて、しかも、この1年で10兆円のプラス収支。累積では165兆円の収益になっているんです。

2025年度の運用状況より引用
(すっっごい稼いでる…(・□・;))
…だから、これを切り崩せば、たとえ年金収支が毎年1兆円赤字でも、250年はもつ計算になります。しかもとても成績がいいので、さらに運用に回すことで、今後も増えていく見込みは高そうです。
もちろん、この運用状況は経済に連動するため、「100%安全」ではありません。
ですが、グラフを見るとコロナ禍でも致命的な「大損」にはなっていませんから、よほど手堅く運用しているのでしょう。
こうした事情もあり、私たちが「年金がこれからも貰えるか心配」という懸念には、財源としてはそんなに現実味がありません。
社会保障費の増大は確かに課題で、厚生労働省も引用元のURL内で「不断の検討が必要(≒マジヤバそう)」と訴えていますが、私たち個人が「生活保護を控えよう」と思う必要も、ありません。
生活保護の受給を控えたことで貧しい人が増え、治安が悪化し、経済状況がさらに悪くなる……なんて負の結果をもたらす可能性だってあります。
誰だって、嫌ですよね。
隣人が食うや食わずやの生活をして、道端で倒れていたり、物乞いをするようになる社会。治安も悪いです。私は想像するだけで辛いです。あなたはどうですか?
年金は、確かに「年金保険料」として徴収されるので別枠のように思えますが、特に会社員の場合は天引きされるので、実質的には「税金」と変わりませんよね。
「働けない人を、税金や保険料といったみんなのお金で支える」
このコンセプトにおいて、生活保護制度と年金制度は、非常に似通っていると言えないでしょうか?
生活保護受給者は、怠け者?
生活保護を受け取ることになった方は、今まで怠けていて、一切税金を払っていないのでしょうか?
多くの場合、そうではありません。
その人も国を支えるためにきちんと税金や保険料を納め、そして、何かの事情で今までのようにお金が稼げなくなった。そういう方がほとんどです。
生活保護の財源となる税金だって、年金保険料だって、私たちが働ける時にできる限りの分を収めてきたもの。
生活保護を受けた瞬間に、その人が一生懸命に生きてきた実績がゼロになるのでしょうか? そんなはずはありません。
それに、人生が終わってみるまで、その人が社会にとってどのくらい大きな「力」となるか。はっきり数値化できるような単純なものではありません。
年齢のために働けなくなった方だって、その存在自体が現役世代を支えていることだってありますし、子育てや教育、働き手のサポート、消費者としての影響力を持つ場合もあるでしょう。
「働く」ということは社会に貢献する分かりやすい手段ですが、そうではない選択肢だってたくさんあり、「働いて」いないから「社会参加」していないことにもなりません。
生活保護を受けている方をさらに叩いて絶望に陥れるメリットは誰にもありません。むしろ応援して、できればまた立ち直り、何らかの形で、みんなを支える力になってもらう。
それが結局は合理的で、「社会全体の幸せ」につながるのではないでしょうか。
自分のための「貯金箱」が欲しいなら
それでも「助け合い」ではなく、自分が貯めておいて困ったら受け取る仕組みが欲しい。

それなら、NISAやiDeCoがオススメです。
完全に自分に受け取る権利があり、助け合いではなく、まさに「自分のために」積み立てるものになります。
私も老後資金のために何年かつみたてNISAで運用していますが、適当なインデックス投資でも、掛け金が160%になっています。
それでも年金のお得度(驚異の238%)に比べると、全然ですが…。
というのも、全世界の株価自体が、短期的に多少の落ち込みはあっても、長期スパンで見ると、年々上昇しているのですよね。

グラフの開始時点から2025年9月現在の価格を比較すると、300%に上昇していると分かります。2018年に100万円積み立てていれば、現在、300万円になっているでしょう。たった7年間なのに。
コロナ禍、ウクライナ戦争、パレスチナ問題、トランプ関税、などなどの経済的なインパクトを経ても、なお……。これってすごくないですか?
まさに、何もしなくても、持っておくだけで自動的に増える(可能性が高い)。目に見えるメリットの多い制度です。
しかも、投資することで、社会に対して「応援」の意味も持ちます。私も採算にはあまり期待せず日本株にも投資しましたが、想像に反して、日本株もちゃんと数年で200%前後成長しているんですよね。
(買い始めた当時は、上がることは一切期待しておらず、
「えっ? 日本にも投資してるの…?」
と同僚に白い目で見られましたが…。)

特に難しいことは何もないので、まずは月々500円からでも、コツコツ積み立ててみることで、未来の安心感が大きく変わってくるなと感じます。
もちろん、リスクはゼロではありませんが、このような成長経済の中では、お金って持っているだけだと、価値が下がっていくのですよね。
10数年前は100円で買えた缶コーヒー。今は200円出さないと買えなくなっています。つまり、市場が成長した分、「持っているだけ」のお金の価値は下がっているんです。
万一失敗しても、ここまで述べてきた通り、日本には生活保護などの福祉制度がありますから。「食えなくなる」ということはないでしょう。
セーフティネットの知識は、学ばなければやってこない
日本の福祉制度は「知らなければアクセスできない」ことが、本当に多いです。
生活保護や、その受給者を叩く人は、おおむね「自分が苦しい」方が多いように感じます。
苦しいと「私はこんなに苦しいのに、あいつはなんだ」と、不満を抱きやすくなりますから。
そういう方にこそ、生活保護や、その他の福祉制度が必要なケースだってあるのに、それが届いていない現状。
でも、苦しくなると視野が狭くなり、自分を助けるための方法すら遠ざけてしまうこと、ありますよね。
だからこそ、自分が困る前に、元気な時から「困った時に頼れる制度」をざっくり知っておく。
これは、誰にとっても意味がある、素晴らしいことだと思います。
私自身、精神疾患を抱えながら働く上で、福祉制度の知見も多く得てきました。
そうした知識を、これからも少しでもお伝えしていきたいな、と思います。
来週は、じゃあ「13万円で暮らしていける?」という、より具体的なお金の疑問にお答えしていく予定です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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