「生活保護はズルい」と感じるあなたへ
「生活保護を受けている人は、働かないでお金をもらっているんでしょ?」 「私たちは必死で働いているのに、あの人たちは楽をしている気がして……」
こんな風に感じたことはありませんか?
でも、本当にそうなのでしょうか。
私自身は生活保護を受けたことはありませんが、精神疾患を抱える日々の中、様々な社会保障のお世話になってきました。それでも、いつ仕事ができなくなって、生活保護を受けることになるかは分からない、と感じています。
そこで今回は、生活保護制度について抱きがちな疑問や偏見の答えを探しながら、制度の意義を考えてみたいと思います。
(情報の出典は、特に明記が無い限り、厚生労働省の生活保護制度のページを参照しました。)
そして最後に、それでも「モヤモヤ」した気持ちが残ってしまうあなたに、ひとつのメッセージをお伝えします。
Q1:「生活保護って、誰でも簡単にもらえるんじゃないの?」
いいえ、そんなことはありません! 生活保護の申請には、厳しい条件と審査があります。
資産調査(預貯金、不動産、自動車など)
就労の可能性の調査
親族への扶養照会
などの調査を経て、「本当に困窮している」と認められた場合にのみ、生活保護が支給されます。 申請には多くの時間と労力がかかり、「恥ずかしい」という気持ちから申請をためらう人も少なくありません。
Q2:「本当に困っているなら、もっと努力すればいいんじゃない?」
「努力」という言葉は、とても力強い響きを持っています。 しかし、全ての人に同じように「努力」ができるかというと、そんなこともなく。
病気や障害、家庭環境、職場の問題……。 困窮の原因は人それぞれであり、一概に「努力不足」とは言えません。
生活保護は、そうした「努力」をするための土台を築くための制度なのです。 スタートラインに立つための助け、と言えるかもしれません。
Q3:「生活保護でパチンコ三昧の人がいるって本当?」
残念ながら、ごく一部にはそのようなケースも存在するかもしれません。 しかし、それはあくまで例外です。 メディアはセンセーショナルな話題を好み、そうした一部のケースを誇張して報道する傾向があります。
また、パチンコに「行ってしまう」背景には、依存症や孤独、精神的な苦しさがあることも否定できません。
むしろ、「生活保護費を使い込み、パチンコに行ってしまう……」そんな方にこそ、一方的な批判ではなく、温かい支援が必要ではないでしょうか。
とはいえ、現状の生活保護制度では、その辺りのフォローアップが追いついていないという現状はあるようです。
Q4:「年金より生活保護のほうが多いのはおかしい!」
この疑問は、多くの方が抱くと思います。 長年真面目に年金を払ってきたのに、生活保護の受給額の方が高い……。 それは、まるでアリとキリギリスのようです。
しかし、年金と生活保護は、制度としての役割が異なります。
年金:老後の生活を支える「共助」の仕組み
つまり、自助とセットでうまくやりくりしてください、という仕組みなんですね。必ずしも生活の全てを支える制度ではなく、補助として用意された制度です。生活保護:最終的なセーフティネットとしての「公助」
年金(共助)では不足する場合に利用する制度です。
こうした考え方については、厚生労働省の白書にも記載されていました。
つまり、生活保護は、他の手段では生活を維持できない場合に、最低限の生活を保障するための制度なのです。 「どちらが得か損か」ではなく、それぞれの制度が果たすべき役割があるんです。
Q5:「お金じゃなくて、現物支給にすれば無駄遣いを防げるのでは?」
一見、合理的な考え方のように思えます。 しかし、現物支給には大きな問題点があります。
自己決定権を侵害する
尊厳を傷つける可能性がある
現物支給にかかる運用コスト、人件費
生活保護は、単にお金を支給するだけでなく、自立を支援するための制度です。 お金を自由に使うことで、自分で考え、判断し、生活を立て直す力を養うことができる……という考え方に基づいています。
米国ではフードバンクやフードスタンプといった仕組みがありますが、それらを利用するのは、どうしても周囲に「私は困窮しています」と言ってまわるようですよね。
それで食べ物を買ったりもらうのも恥ずかしく、制度を利用できないという方もいらっしゃるようです。
食べものを得るにも尊厳を踏みにじられる。
生活保護は誰でも受ける可能性のある制度です。
そんな時、そのような状況になりたいでしょうか。私は嫌です。
また、誰が食べ物を手配して、配給所を用意し、分配するのか。配給所まで歩いていけない方もいらっしゃいますので、必要に応じて配達のコストもかかります。
かえって生活保護にかかる費用は増えてしまう可能性もあります。
桐生市の「水際作戦」から学ぶこと
2023年、群馬県桐生市で、生活保護の申請を妨げる「水際作戦」が行われていたことが報道されました。
本来、困っている人を助けるはずの行政が、門前払いをする……。
「生活保護を受給するような甘えた人間には、厳しくして当然」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、私は「困っている人が適切な助けを得られたほうがいい」と思います。
これは、制度の問題であると同時に、社会全体の意識の問題です。
生活に困窮した人々に冷たい社会は、いつか自分自身を苦しめることになるかもしれません。
それでも、責めたくなってしまうあなたへ
正直に言えば、「生活保護をズルい」と感じるのは、あなたが今、とてもがんばっている証拠だと思います。
一生懸命働いても手取りが少ない、生活が苦しい、将来が不安。 怒りや不満を感じるのは、当然のことです。
でも、そんなあなたにこそ、伝えたいことがあります。
生活保護は、あなたのための制度でもあるんです。
生活に困ったとき、頼っていい制度なんです。
怒りの奥にあるのは、あなた自身の「助けてほしい」という声かもしれません。 だからこそ、誰かを責める前に、どうか一度、あなた自身のしんどさを、認めてあげてください。
そして、必要なら、どうか生活保護、利用してください。それは恥ずかしいことではありません。
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