【検証】生活保護「外国人優遇説」は本当? データで見る驚きの実態
「外国人は簡単に生活保護を受けられるのに、日本人はなかなか通らない……」
そんな話を、あなたも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
もしかしたら、「不公平だ!」「税金が外国人のために使われているの?」と、もやもやした気持ちを抱えているかもしれません。
でも、その噂、本当に事実なのでしょうか?
この記事では、そんな巷にあふれる「外国人の生活保護優遇説」について、データを元に徹底検証していきます。
(約7,000字。忙しい方は結論だけどうぞ。NotebookLMのAIがこの記事の概要についてざっくり会話したポッドキャストも添付します)
前書き:筆者の立場について
さて、この記事を書いている私について少しお話しさせてください。
人々の不安や怒りを煽るような記事は、よく読まれます。生活保護というテーマは、特に批判の的になりやすく、そういった記事は注目を集めやすい傾向にあります。
でも、私はしがない零細noter。ライティングで生計を立てているわけではないので、記事がバズっても大きなメリットがあるわけではありません。ライターとして特定の企業に所属しているわけでもなく、生まれも育ちも国籍も純粋な日本人です。現在のところ、生活保護も受給していません。つまり、生活保護制度や外国人の方々に対して、特別な利害関係はほとんどない立場です。
また、学生時代は留学生が多い環境にいたため、外国人に対する偏見もあまりありません。「〇〇人」とひとくくりにするのは無理がある、人それぞれだ、と感じています。思想的にはどちらかというとリベラルで、差別は好きではありません。多様性を重視し、立場が弱い方の味方でありたいと考えています。
このような視点から、できる限り客観的かつ正確に事実を調べて、皆さんにお伝えしたいと思います。
生活保護における「外国人」とは誰を指す?
まず、この記事で扱う「外国人」が誰を指すのかを明確にしておきましょう。
生活保護の文脈で「外国人」と言う場合、一般的には日本国籍ではない方で、在留カードや永住許可証などを持っている方が該当すると考えられます。
(後ほど詳しく触れますが、外国人への生活保護は法律で権利が保障されているわけではなく、この点に関する明確な法律は存在しないため、やや曖昧な書き方になります。)
具体的には、以下のような方々です。
永住者
日本に原則として10年以上在留し、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産または技能を有することなど、厳しい条件があります。 (参照:出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」)定住者
第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人などが該当します。
(参照:出入国在留管理庁「定住者」)特別永住者
主に在日韓国人、朝鮮人、およびその子孫の方々です。1952年のサンフランシスコ平和条約により日本国籍を離脱した方や、その子孫などがこれにあたります。実質的に日本国民と同様に永住している方を対象としており、日本から長期間出国するとその権利を失うこともあります。
(参照:日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)
※厚生労働省によって平成16年に行われた「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の説明資料によれば、「在留カード」を持っていても「中長期在留者」は対象外となるため上記から省きましたが、これは権利ではなく措置として行われている制度なので、現運用には則していない可能性もあります。
※ちなみに、日本に帰化した方は法的に日本国民なので、当然保護の対象です。今回、調査の対象としません。
そもそも、なぜ外国人に生活保護を適用しているの?
生活保護法第一条には、こう書かれています。
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
ここにある通り、生活保護は基本的に日本国民、つまり日本国籍を持つ方に対する保護を目的としています。外国人に対して生活保護費を支給すべき、という直接的な法律は存在しないのです。
実際、島根県や大阪市などの自治体のウェブサイトを見ると、「外国人への生活保護費支給について疑義を申し立てる」意見が寄せられていることがわかります。
(参考:島根県「知事への提案箱」)
(参考:大阪市「市民の声」)
これに対して、例えば島根県は以下のように回答しています。
「生活保護法では、生活に困窮する国民を対象に必要な保護を行うこととされていますが、生活に困窮する外国人に対しても、人道上の観点から、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」(昭和29年5月8日付け厚生省社会局長通知)に基づき、国民に対する生活保護の決定実施の取扱いに準じて、必要と認める保護を行うこととされており、県内においても各市町村に設置されている福祉事務所において、この通知に基づき、必要な保護が行われています。」
この回答の根拠となっているのが、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」という厚生省(現在の厚生労働省)社会局長通知です。
調べてみると、確かに厚生労働省のページにこの資料がありました。
(参照:厚生労働省「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」)
驚くことに、この通知は昭和29年(1954年)のものなんです。今から約70年も前の資料を根拠に、現在も運用されているのですね……。正直、現状にどこまで即しているのか、少し疑問を感じてしまいます。
この通知をざっくりまとめると、こういうことです。
「本来、外国人は生活保護の支給対象外ではある。しかし、現状の社会情勢などを考えると、人道上の観点から、当面の間は外国人にも生活保護を準用する」
そして、その条件はこうなっています。
「保護が必要な困窮状態にある外国人が、在留カードまたは特別永住者証明書と共に申請を提出し、その国の領事館などに確認してもなお保護が受けられない場合」
ただし、この通知には続きがあります。
「朝鮮人、台湾人は領事館等への確認は不要」などとして、少し特例的な措置を設けているのです。
なぜでしょうか?
歴史的背景を考えると、その理由が見えてきます。
当時の日本は、「朝鮮や台湾とは外交関係が複雑で、手続きを経て交渉しても実質的なメリットがない(つまり、相手国が自国民の保護費をすんなり負担するとは考えにくい)」という事情がありました。
それに加えて、当時日本にいた朝鮮人や台湾人の方々は、もともと日本の植民地支配によって日本国籍を持っていたという経緯があります。サンフランシスコ平和条約の発効に伴い、ある日突然、日本国籍を失うことになったのです。
この中には、日本による植民地支配の結果、日本に来ざるを得なかった方々も大勢いました。中には自ら望んで来日された方もいらっしゃるのかもしれませんが、もはやその区別は不可能です。
ここには、日本がかつて行った植民地支配に対する責任や、道義的な配慮があったのではないかと考えられます。
日本の都合で他国を占領し、日本に連れて来たり、来ざるを得ない状況を作ったりしたのに、不要になったら「あとは知らないから出てって」とは言えません。さらに、当時は生活に困窮している元日本国籍者も多く、いちいち厳密に審査していては事務処理が追いつかない、という現実的な問題もあったのかもしれません。
しかし、現在は国交もある国がほとんどですし、昭和29年当時とは状況が大きく変わっているのも事実です。
それでも、約70年前というと、植民地支配によって日本に来ざるを得なかった方々の中には、まだご存命の方もいらっしゃるでしょう。それに日本の永住権を持っているのに「子孫は対象外」とも言いづらい。そう考えると、途中で扱いを大きく変えるのもまた難しい。
ただし、この通知は同時に、生活保護自体は憲法25条や生活保護法第一条に基づき、原則としては国民に向けたものであることも明確にしています。
「外国人への給付は、あくまで行政措置として行っているものであり、日本人と違って、保護費が減額されたり停止された場合に不服を申し立てる権利(受給権)はない」としており、この点では日本人を優先していると言えます。
また、「日本人と同等に生活実態を調査し、調査の結果、困窮が認められない場合は申請を却下すべき」ともしています。
つまり、現状はこう整理できます。
生活保護は原則として日本国民のための制度である。しかし、人道的な観点やその他の事情から、生活に困窮している外国人に対しても、行政の裁量で準用的に適用されることがある。
人道的な観点以外にも、以下のような問題点があります。
・国内に全く保護されない生活困窮者が増えると治安の悪化を招く
・本国に帰ってもらうにしても、そもそも帰る場所がない方もいる
・帰国のための費用負担、手続きなどを誰が行うのか
こうしたコストや外交の複雑さを考えると、ある程度の保護を提供した方が、結果的に社会全体の負担が少ない、という判断もあるのかもしれません。
大阪市の前述の回答にも、「外国人による生活保護費が目的とみられる不適切な請求に関しては精査している」という旨の記述があり、不正な利用を防ぐ努力は行われているようです。
日本人と外国人の審査に差はあるの? データで見てみよう
さて、本題です。「外国人の方が審査が甘い」という噂は本当なのでしょうか?
先ほどの昭和29年の通知にも、「日本人と同等の調査を行うべき。それができないなら却下すべき」といったことが書かれていました。
実際のデータを見ていきましょう。
ここでは、2023年度(令和5年度)の被保護者調査(厚生労働省)のデータをもとに検証します。
(参照:政府統計の総合窓口 e-Stat「被保護者調査」)
生活保護は世帯単位で行われるため、世帯数で比較します。
・2023年度の総被保護世帯数
162万6,263世帯

・うち、世帯主が外国籍の世帯数
4万5,973世帯

この数字から計算すると、生活保護を受けている世帯のうち、外国籍の世帯が占める割合は約2.8%です。
では、日本に住んでいる外国人世帯の割合はどのくらいなのでしょうか?
2023年(令和5年)の住民基本台帳に基づく世帯数を見てみましょう。
(参照:政府統計の総合窓口 e-Stat「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」)
(※総務省によれば、住民基本台帳には外国人の情報も登録されます)
・2023年1月1日時点の総世帯数
約6,026万世帯
・うち、日本人住民(複数国籍含む)の世帯数
約5,849万世帯
・うち、外国人住民の世帯数
約177万世帯
ここから、日本に住む世帯全体のうち、外国人世帯が占める割合は約2.9%となります。
さて、思い出してみましょう。
生活保護受給世帯のうち外国籍世帯が占める割合は約2.8%でした。
日本に住む外国人世帯の割合が約2.9%であることを考えると、生活保護受給世帯における外国人世帯の割合は、人口全体の外国人比率とほぼ同じです。
同じ社会で生活していれば、国籍に関わらず経済的に困窮する可能性は誰にでもあります。ましてや、外国人であれば言語の壁や文化の違い、就労の機会の制約など、日本人以上に困難に直面することも多いはずです。そう考えると、この2.8%という数字は「外国人が不当に多く受給している」とは言えないのではないでしょうか? むしろ、もう少し高くてもおかしくないのでは、とさえ感じます。
「元気で働ける若い外国人が不正に受給しているのでは?」という疑問も湧いてくるかもしれません。
これについてもデータを見てみましょう。
外国籍の受給世帯の内訳は以下のようになっています。

・高齢者世帯
・母子世帯
・障害者世帯
・傷病者世帯
これらの、一見して就労が困難と推察される理由を持つ世帯が、外国籍受給世帯全体の約82.5% を占めていました。
この割合は、日本人の受給世帯の場合と大きな差はありません。つまり、「働けるのに働かない外国人が生活保護に頼っている」というイメージは、データからは支持されないようです。
残念ながら、申請者別の外国人割合に関するデータは見つからなかったため、外国人と日本人の申請がどれくらいの割合で承認されているか(申請通過率)を直接比較することはできませんでした。
参考までに、2023年度の全体の生活保護申請状況を見てみると、

(被保護者調査2023年度版)より抜粋
・申請件数(累計)
25万1,384件
・うち保護が開始された世帯数(累計)
22万2,102世帯
となっており、申請のうち約88.3%が保護開始に至っています。また、申請件数は毎年増加していることも上記の表から読み取れます。
一方で、前年度(2022年度)の外国籍の被保護世帯数は4万6,005世帯でした。

2023年度は4万5,973世帯だったので、外国籍の保護世帯数はわずかに減少しています。これは、2023年度においては新たに保護が開始された外国人世帯よりも、保護が停止(生活状況の改善などによる打ち切り)された外国人世帯の方が多かったことを意味します。
一方で、日本国籍のある保護世帯は、2022年度の約157万3,400世帯から、2023年度の約158万世帯へと増加しています。
(それぞれの年度の総世帯数-外国人世帯数で計算)
このデータだけを見ると、むしろ日本人の方が保護に至りやすかった、あるいは外国人の保護はより慎重になっている、と解釈することもできるかもしれません。
結論……そして、どう考えますか?
データを様々な角度から調べてみましたが、巷で囁かれる「外国人の方が生活保護の申請において優遇されている」という明確な根拠は見つかりませんでした。
外国人の受給世帯は全受給世帯の約3%であり、これは人口における外国人世帯比率とほぼ同等です。むしろ、今回調査した範囲では、外国人の被保護世帯比率は減少傾向にさえあります。
もちろん、「政府がデータを隠蔽している!」とか「統計が改ざんされている!」といった陰謀論的な見方も出てくるかもしれません。しかし、そこまでして政府が外国人を優遇する具体的な理由というのも、なかなか考えにくいのではないでしょうか。
そして、忘れてはならないこともあります。
外国人も、生活保護の財源となる税金を納めているという事実です。
日本で働き、所得を得ている外国人は、基本的に、私たちと同じように所得税を納める義務があります。
(※本国と日本による二重課税を防ぐために租税条約がある場合もありますが、限定的)
年の初めに日本に住んでいれば住民税も課されますし、買い物をする際には当然、消費税も支払っています。
(参考:外国人と日本人の税金の違いは?雇用する前に知っておきたい基礎知識)
「生活保護は税金で賄われているのだから、外国人には支給しないでほしい」という意見を時々目にします。しかし、その外国人の方々も、日本で税金を納めているのです。それなのに、生活に困窮したとき、法的には生活保護を受ける「権利」は保障されていません(現在はあくまで人道的見地からの「措置」として運用されています)。
もちろん、中には、制度を悪用しようとする不心得者もいるかもしれません。
でも私たちは、国籍に関わらず、同じ社会で協力し合って生きています。大半の方は、これまで真面目に税金を納め、日本の貴重な労働力として社会を支えてきてくれた方ではないでしょうか。私たちが受けている行政サービスの一部は、そうした外国人の方々が納めた税金によって支えられている部分もあるでしょう。
それなのに、いざ彼らが本当に困ったときには何も支援しない。「外国人は保護するな」「好きで日本に来たんだろう」「国へ帰れ」……。
これって、どうなんでしょうか……?
かといって、日本としての立場を鑑みれば、公に外国人を保護するという法律を軽々に作る訳にもいきません。このような事情から致し方なく、70年前の通知を根拠に支援を続けている現状も(個人的には)理解できる気がします。
この記事を読んで、あなたはどう思われましたか?
後書きとお礼
様々な言説があふれている世の中です。中には憶測や決めつけによる、根拠のない意見もあります。そういう意見を目にした時、私たちは鵜呑みにしなくても「そういうもんなの?」「みんな言ってるからそうなのかな」と事実を検証することなく受け入れてしまいます。
もちろん、これだけの情報が氾濫している中、全てを検証することは時間的にも難しいですよね。ですが、私は今回の記事で事実を述べる際、誰にでも検証可能、かつ、なるべく公平で客観的な情報源を根拠としました。読んだ方が、自ら一次情報に当たることは難しくないと思います。
ご興味があれば、この記事が事実無根の捏造か、恣意的な解釈をしているのか。もしくは本当に客観的な視点をある程度保っているのか。ぜひご自身の目で確認されてみてください。
「常識」とされている誰かの思い込みを自分が拡散してしまう前に「本当にそれが正しいのか?」と疑ってみる態度こそ、これからの時代に必要であると感じます。この記事が生活保護にまつわる誤解を解消すると共に、そのきっかけになれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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