「あなたの文章がAIに使われる?」noteの新方針、拒否する前に知ってほしい「日本語」の未来
さて、2025年6月17日。
noteの公式から、私たちクリエイターにとって少し驚くような告知がありました。
note、AI学習へのデータ提供プログラムを始動。クリエイターの新たな収益機会を創出へ
この記事に丁寧にまとめられていますが、要点をすごく簡単にまとめると、こういうことです。
・noteの記事(テキスト部分)をAI事業者に学習データとして提供し、私たちクリエイターに収益として還元する
・学習データとして提供したくない場合は、設定画面からオフにできる
・2025年8月1日から実際に適用されるので、それまでに意思表示が必要
つまり、「何もしなければ、あなたの記事はAIの学習に使われる」「たまに対価としてお金がもらえるかも!」ということです。
もちろん、記事単位での許可/拒否設定も6月30日以降に可能になるそうです。
▶お忙しい方のために、この記事概要のポッドキャスト(NotebookLM製)を用意しました。
文章の方が良い、という方は、引き続きお読みいただければ幸いです。
先行プログラムに参加して見えたもの
実は私、この仕組みが本格始動する前の実証実験(第三回:2025年5月15日〜6月2日)に、こっそり参加していました。そして先日、その還元額の通知が届きました。

これまで2年間、100万字以上毎日noteに書いてきました。ですが、安くはない額面ですね。この額が定期的にもらえたら、嬉しい方も多いのではないかと思います。
(なお、あくまで参考になるかなと思って載せてみましたが、記事が提供するAI学習データとしての価値が、文章の優劣や記事自体の価値を決めるものではありません。)
私はAIに関して推進派ですし、滅びつつある日本語の学習データを提供することは、日本人全体にとって利することになると考えています。だから、自分の記事データを学習データとして使われることに、そこまで強い抵抗感はありません。
でも、もちろん、これに抵抗を感じる方もいるでしょう。
その場合は、必ずご自身の「アカウント設定」から意思表示をしてください。

「AIに学習させる」って、どういうこと?
「AIに自分の記事データを学習データとして使わせる」
この言葉だけ聞くと、なんだか自分の文章を丸ごと盗まれて、模倣されてしまうような不安を感じるかもしれません。
でも、少しだけ仕組みの話をさせてください。
AIの学習データとして使われる、というのは、あなたの文章をそのまま真似したり、あなたの人格や著作権を侵害したりする、ということではありません。AIがより自然で、精度の高い文章を生み出すための「言い回しのパターン」や「知識の断片」として、膨大なデータの中に溶けていくイメージです。
私自身、個人的にAIモデルをトレーニングすることがあるので分かるのですが、精度の高いモデルを作ろうとすると、偏りのない、大量の質の良いデータが必要になります。
あなたの文章だけを学習させたAIは、たしかにあなたそっくりの文章を書くようになるでしょう。
でも、この仕組みは、そういうことではありません。
noteが提供するのは、何十万、何百万という記事の中の、ほんの一部。
あなた個人の個性は、巨大な情報の海の中で希釈され、ほとんど影響しないと思った方がいいでしょう。
コーヒーに投じた一滴のミルクが、もはや目に見えなくなるのと同じように。

なぜ今、日本語の学習データが必要なのか
一方で、少し大きな視点で見てみましょう。
世界的に見ると、英語話者(約15億人)と比べて、日本語話者は約15分の1しかいません。しかも、減り続けています。
それに伴って、Web上に存在する日本語コンテンツの量も、英語などに比べて貧弱です。
海外製のAIに文章を生成させると、特定の言い回しに妙に固執して、不自然な文章が出てくると感じたことはありませんか?
例えば、一部のLLMは「胸がキュッとする」とか「心がほぐれる」とか、少しクセのある表現を何度も繰り返します。これは、日本語の学習データが限られていることで、表現のパターンが貧弱になっていることの一つの現れです。
このままでは、日本語のAIは創造性のない、同じような言葉を繰り返すだけの存在になってしまうかもしれない。そうした状況を変え、より豊かで、美しい日本語で応答できるAIを育てること。それは、日本でAIを活用し、国際競争に取り残されないためにも必要なことです。
そして、これは私の祈りに近い願いですが、
滅びつつある日本語という文化が、たとえ機械の海の中であったとしても、どこかにその魂を残していくための礎になればいい。
そう、願っています。
どんな記事に価値がつくのか?
では、「AIの学習データとして価値が高い」と判断されるのは、どのような記事なのでしょうか。
note社の説明では、「記事のPV数・スキ数・文字数、文章の構成や表現、専門性などを元に、AIの学習データとしての有用性を総合的に評価して決定します」とあります。
これはあくまで私の推測ですが、自身の経験や還元額から考えると、おそらく、
・ある程度の長さがある、誤字脱字の少ない文章
・独自の視点や経験、知識に基づいている
・独特で、多彩な表現を含んでいる
といった、正確で多様性のあるコンテンツが学習データとして高く評価されるのだと思います。
それは小説や詩、専門的なエッセイなど、形式を問いません(トレーニング用途次第)。むしろ、多様であればあるほど、AIにとっての価値は高まります。
無断で学習される現実と「正当な対価」
「でも絶対に学習データとして使用されたくない!」
はい。そうお考えになる方もいらっしゃるとは思います。
FAQには「AI学習対価還元プログラムに参加しない設定をした場合、note社からクリエイターのみなさんのコンテンツをAI事業者に提供することは一切ございません」と書かれています。
ですが、これはあくまで「note社が公式には提供しない」というだけ。
悪意のある事業者がWebを巡回してデータを収集する、いわゆるスクレイピングを完全に防ぐことは、Webの仕組み上、極めて困難です。
設定をオンにしようが、オフにしようが、あなたの文章がどこかで学習データとして使われる可能性はゼロにはならない。
これが、私たちが向き合わなければならない皮肉な現実です。
しかし、だからこそ、今回のnote社の取り組みには意味があります。
「対価を払ってでも、正当なデータを買いたい」
そう考える事業者は、note社が具体的な社名を公開しないとしても、強引な手段に頼る者たちより、比較的良心的だと言えるでしょう。
これは、かつて問題になった漫画の違法アップロードサイト「漫画村」への対応と似ています。
違法にコンテンツをばらまく者が現れたからこそ、出版社やプラットフォーム側が正規のルートで、しかも魅力的な方法(読み放題など)でコンテンツを提供し、作者に正当な利益を還元する流れが加速しました。
それと同じです。
無断で盗まれるくらいなら、こちらから「私たちの文章には価値がある。対価を払うなら、提供しよう」と、正当な対価を要求する。
これは、クリエイターにとって、とても前向きな一歩だと私は感じます。
これからの「書く」ということ
AIによる生成コンテンツが溢れつつある今、逆説的ですが、「人間が書いた文章」の価値は、相対的に上昇している。
私はそれを、肌で感じています。
私たちが「文章を書く」という営み。
その意義が、AIに一方的に奪われるのではない。
巡り巡って、私たちの書いた文章がAIを成長させ、そして成長したAIが、私たちの創作をさらに刺激する。その先にある、まだ見ぬ新しい表現や創作の世界を思うと、私は個人的に、とてもワクワクしています。
この変化を受けて、「面白そうだから参加してみよう」と思うのも、「やっぱり嫌だからやめておこう」と決めるのも、もちろん個人の自由です。
ただ、「絶対にこうだ」と決めつけるのではなく、あまり偏見に囚われず、まずは冷静に「様子を見る」というのも、一つの賢明な選択かもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
もっと、詳しく知りたい方はこちらもお読みいただけると幸いです。
ありがたいご反応🙏
羽田光夏さんから、ありがたいご感想をいただきました。羽田さんは、全盲というご状況にありながら、稀有なご視点ですてきなnoteを綴っておられるクリエイターさんです。
普段からそのご視点に、学ばせていただくことがたくさんあります。
記事を書く時、(見る、ということに制限がある方へ向けた)画像のAltタグや説明書きを忘れてしまうことがあるのですが、羽田さんのお立場や、発信から、いつも、大切なことを思い出させていただいています。
みなさま、ぜひ、羽田さんのnoteもご覧になってみてくださいね。
いいなと思ったら応援しよう!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「役に立った」「読んでよかったな」と思っていただけたら、無理がない範囲で応援いただけると嬉しいです。
いつも、皆様のあたたかいお気持ちで活動できています😊