「結局なんなの?」noteのAI学習に関する不安と疑問、ITエンジニアの私が分かりやすくお伝えします。
先日、note社から「note、AI学習へのデータ提供プログラムを始動。クリエイターの新たな収益機会を創出へ」という発表がありましたね。
この発表を受けて、私も、こんな記事を書きました。
改めて書くとこの変更は、
「何もしなければ、8/1からあなたのnote記事がAIの学習に使われる」
「たまに対価としてお金がもらえるかも!」
「嫌な人は、設定画面から拒否できるよ」
ということです。
ですが、どうやら、多くの方にとってこの発表は「寝耳に水」で、「どういうことかよく分からない」というのが最初の感想だったようです。
私自身は、10年以上ITエンジニアとして働き、仕事でも趣味でもAIに触れているので、あまり大きな恐怖や驚きはありませんでした。
だから、皆さんの反応との温度差に、少し驚いてしまったのです。
前回の記事を書いても、まだ不安や疑問を抱えている方がいらっしゃるように感じました。
この件でnoteから離れてしまわれる方がいると寂しいです。
何かお力になりたいけれど、私の感覚や知識が「ふだんAIをあまり使わない方」とは全く違うようなので、何から説明すればいいのか、分からなくなってしまいました…。
なので、この記事ではもう少し踏み込んで、皆さんがお持ちかもしれない疑問に、なるべく分かりやすく、Q&A形式でお答えします。
それでもなお、よく分からない、不安だ、ということがあれば、コメント欄で質問いただけるようにしようと思います。
ご不安を解消しつつ、これを機に、AIについて少しだけみなさんに知っていただくきっかけになればいいなと思います。
※ただし、私はあくまで一人のITエンジニアです。noteの人間ではないので、ここでの回答は「note社の発表にはこう書いてあります」「一般的にはこう考えられます」という視点のものになります。その点だけ、ご了承ください。
Q. そもそもAIの学習(トレーニング)って何?
A.
ざっくり言うと、AI(LLM)は、文章データを元に、「単語と単語の関連性」や「文脈として何が自然か」を学習します。
例えば、「猫はかわいい」という文章は、「猫は」と「かわいい」という組み合わせで出来ていますよね。
でも実際は、「猫は」に続く「確率」がある言葉は無数にあるわけです。
例えば、「かわいい」「自由」「肉食」「腎臓病になりやすい」など。

この例では「猫は」ときたら
80%の確率で「かわいい」と生成します
このパターンを正しく増やすために「学習」が行われます。
また、文脈。
例えば、「猫はどんな生き物ですか?」と聞かれた時に、どう答えるのが自然かな? というパターンも学習します。
つまり、
「猫はかわいいです」
生き物としての猫について聞かれているのに、印象を答えるのはちょっと微妙かな?🤔「猫は肉食です」
客観的な情報なのでいいかも!😊「猫は腎臓病になりやすいです」
ちょっと細かく言い過ぎかな?😅
といった風に。
この単語のつながりや、文脈のパターンを、コンピューターが計算で出力するための数値にまとめる、ということが「AIのトレーニング」です。
ですから、「私たちのnoteの記事を学習データとして提供する」ということは、あなたが提供した文章をそのまま覚える、という仕組みじゃないんです。
私たちの文章を「思いつける言葉の可能性」「自然な文章の流れ」まで分解し、そのパターンを正しく増やすための「自然な日本語のお手本」として、私たちのnoteの記事を利用する、ということです。
Q. 私の書いた貴重なノウハウを盗まれるんじゃないか?
A.
あなたの書いた珠玉のノウハウ記事が、そのたった1件だけなら、膨大な学習データの中に埋もれてしまいます。
前回の記事でも触れましたが、精度の高いAIモデルを作るためには、「質の高い大量のデータ」が必要です。
あなたの書いた珠玉のノウハウは、まるでコーヒーに落とした一滴のミルクのように、ほとんど見分けがつかないものになってしまう。
具体的に何が起きるか説明します。
たとえば
「売れるnoteのタイトルのつけかたは、25文字でカタカナを入れること!」
というノウハウをあなたが書いたとします。
もし、似たようなノウハウ記事が他にも大量にあって、
「noteのタイトルは25文字くらいがいい」
「タイトルはシンプルに25文字程度で」
といった感じで「コア」になる部分が大量に共通していれば、AIは「noteのタイトルは25文字くらいがいいらしい」と学ぶかもしれません。
でもそれは、あなたのノウハウが盗まれたというより、学習データの中に同じような情報がたくさんあった結果です。
もちろん、データを購入したAI事業者がたまたま悪質で、あなたのノウハウを抜き出して別のサイトで売る、といった可能性はゼロではありません。
でもそれはもう、note社がまともな事業者と取引すると信じるか、しないか。そういう次元の話になってきます。
ですが、それでも「有料記事のデータまで渡すのは気が引ける」というお気持ちも、すごくよく分かります。そんな方のために、6/30から、記事ごとに許可/拒否設定ができるようになるそうです。
Q. 私の「文体」がそっくり真似されることはないの?
A.
あなたの文体が「そっくり」コピーされることは、通常起こりません。
仮にあなたが書いた記事が100件含まれるとしても、AIが学習する何百万という文章全体の中に比べれば、あなたの文体が持つ比率はごくわずか。まるで、海に一滴だけ絵の具を落とすようなものです。
でも、例えば、あなたが特定の個性的なフレーズを全ての記事で多用していたとします。
例)「万障繰り合わせて、やったろうかい!」
この言葉が出現する頻度が、全体の比率に対してとても多いと、AIは、そのフレーズを「何かを勢いよく始めるときの表現」の候補として学習する可能性はあります。
しかし、文体というのは、フレーズだけで決まるものではありませんよね。 文章のリズム、接続詞の選び方、感情の込め方……。そういった様々な要素が複雑に絡み合って、あなたの「文体」は作られています。
AIが学習するのは、そうした無数のクリエイターが持つ文体の、いわば「平均」。
あなたの文体が持つ独特の「風味」は、AIの表現力を豊かにするために貢献するかもしれませんが、あなたそっくりの文章を書くクローンAIが生まれるわけではないのです。
Q. 私の記事の「著作権」はどうなるの?
A.
あなたの記事の著作権が、AI事業者に移ることはありません。著作権は、あくまであなた(クリエイター)のものです。
AIの学習データとして著作物を利用することについては、以前私も記事で触れました。日本の著作権法では、AI開発のための情報解析は、原則として著作権者の許諾なく行える(つまり、著作権とは無関係)、と解釈されることが多いです。
Q. 私の個人情報が抜かれるんじゃないか?
A.
今回、データ提供の対象となるのは、現在公開されている記事と、その作品タイトル、クリエイター名、投稿日等だけです。
(典拠:利用規約改定およびプライバシーポリシー改定のお知らせ)
あなたが公開記事(無料/有料/限定記事問わず)に個人情報を書いていないのであれば、抜き出される心配はありません。
例え、記事内に個人情報を書いてしまっている場合でも、note社はそれをマスキングする(見えないように加工する)と表明しています。
Q. すでにAIで書いた記事はどうなるの?
A.
AIが生成した記事は、対価還元の対象外になるか、還元されてもごく少額になると考えられます。
note社は、提供する記事が「AI学習に適しているか」を独自にスコアリング(点数付け)するようです。
この評価は、おそらくAIによって自動で行われます。人間が目で見てチェックするには、データ量が多すぎますから。
そして、AIはかなりの精度で「AIが書いた文章かどうか」を見分けることができます。
AIが書いた文章には、書き手の経験から生まれる独自の視点や、生々しく個性的な表現、構成の揺らぎといった「人間らしさ」が欠けているのです。
もし気になるなら、ご自身がAIに書かせた記事をChatGPTやGeminiに貼り付けて、「この記事はAIが書いたものか判定して」と聞いてみてください。驚くほど正確に当ててくるはずです。
私自身の経験や一般論から言っても、「質の高い学習データ」とされるのは、
ある程度の文章量があり、誤字脱字などの不備が少ない
自然で、多彩な表現が使われている
書き手自身の[多様な]独自の視点、ニュアンス、専門性を含んでいる
こういった記事です。
Q. もし万が一、AIが生成した記事を学習データとして使われたらどうなるの?
A.
場合によっては、AIにとってあまり良くないことが起きます。
まるでタコが自分の足を食べてしまうように。

これは「モデル崩壊」と呼ばれる現象です。
たとえば、現状のGemini(by Google)というAIは苦しい状況を表現するときに、「見えない鎖」、心が楽になるときに、「心が軽やか」というような、少し独特で平坦な比喩表現を好む傾向があります。(現状ですでに、日本語の学習データが偏っているせいだと思います)
その文章を再度、Gemini自身の学習データとして繰り返し使えば、「この場面では『見えない鎖』という言葉を使うのが最高にクールなんだな!」と学習し、さらにその言葉を多用するようになってしまう……。
これでは、表現の幅が狭まる一方で、質の高いAIは育ちません。
だからこそ、事業者は「人間が書いた、自然な文章」を求めるのです。
Q. noteより辞書や本を学習データに使ったら?
A. はい、そうですよね。
noteなどのSNSに書いてある情報は、時に誤情報や書き手の偏った知識に依存していることがあります。それを学習データに使うって、どういうことなんでしょうか?
実は、まず前提として。すぐにデータとして活用できるような辞書や本は、真っ先に、学習データとして使い果たしてしまいました。
また、今のAIに求められているのは、単に「正しい知識」を羅列することだけではありません。
AIがより身近になってくる中で、「話し相手になってほしい」「気軽に相談したい」といったニーズに答える、人間に寄り添うような自然なコミュニケーションが、ますます重要になっています。
もしAIが辞書などの専門書で学習した堅苦しい言葉ばかり使ったら、普通の人が、日常生活で気軽に使うのは難しいですよね。
だからこそ、AI事業者はnoteやSNSから、人間が実際に使う「生きた言葉」を学ばせ、自然で分かりやすいコミュニケーションを目指しています。
そしてもちろん、誤情報の対策として、専門家や人間が情報を確認し、誤りがあれば除外したり修正したりして使用しています。
AIモデルの正確性は、AI事業者にとっても重要な懸念点です。
例えば、xAI社のGrokというAIは、Xの投稿文を学習データとして利用している……ということで有名ですね。
しかしGrok自身が他のAI(LLM)と比べて誤情報を拡散しやすいかというと、そんなこともありません。
このように、今は、SNSのような多様な情報源も、慎重に活用されているんです。
もし、他にも、何か分からないこと、不安なことがあれば、遠慮なくこの記事のコメント欄でご質問ください。できるだけ、エンジニアではない方にも分かりやすくお伝えできるよう、努力します。
あなたの疑問が、きっと誰か他の人の安心にも繋がります。
「知る」ことで、あなたの世界が少しでも安心できるものになりますように。
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