カリスマの旅立ち 冬の時代 [茶トラ猫まいけるアイドル伝説] 第6話
〜金のローラースケートと、雨に濡れた肉球〜
ニャらシがマグロとカツオの絆を取り戻し、さらなる高みへ昇ろうとした矢先、運命の歯車が大きく、そして残酷に回り始めました。
ニャニーズの象徴であり、すべての猫たちの父親代わりだったジャニー猫さんが、静かに息を引き取ったのです。
1. 鳴き声の消えた夜
その夜、代々木の夜空には重く冷たい雨が降っていました。
病院の窓辺で、ジャニー猫さんは最後にまいけるを呼び寄せました。
かつて鋭かった眼差しは穏やかになり、震える前足で一つの大きな包みを差し出しました。
「まいける……YOU、これを持って行きなよ。これは、ボクがずっと隠していた、ニャニーズの『魂』なんだ……」

それが最期の言葉でした。ジャニー猫さんは、大好きなジャズの音色に包まれながら、虹の橋を渡っていきました。
翌朝、新聞の1面には「カリスマ猫、逝く」の文字が躍り、猫界全体が深い悲しみに沈みました。
2. 秘密の遺言は金のローラースケート
四十九日が過ぎた頃、まいけるは遺品の包みを開けました。
中から出てきたのは、まばゆいばかりの輝きを放つ「金のローラースケート」でした。
「ローラースケート……? ジャニーさん、これで何をしろって言うんだよ」
レオが不思議そうに覗き込みます。添えられていた手紙には、独特の筆跡でこう書かれていました。
『YOUたち。アイドルは、立ち止まったら終わりだよ。地面を蹴って、風を切って、常に転びながら前に進むんだ。この黄金の車輪は、止まらない勇気の証さ。悲しみに暮れて丸まっている暇があったら、滑り出しちゃいなよ。』
3. 降りかかる「冬の時代」の嵐
しかし、ジャニー猫さんという大きな傘を失ったニャニーズに、世間の風当たりは一変して厳しくなりました。
「カリスマがいなければ、ただの野良猫集団だ」「過去の栄光に縋っているだけ」 週刊誌やネットのSNS(ニャッたー)では、連日のようにニャらシへのバッシングが続きます。
さらに追い打ちをかけるように、事務所の運営方針を巡って大人猫たちの争いが勃発。看板番組は次々と打ち切られ、あんなに華やかだった六本木のディスコからも「出入り禁止」を言い渡されてしまいました。
「まいける、もう僕たちの居場所なんて、どこにもないよ……」 おもちが、金のサングラスを曇らせて俯きました。
4. 雨のストリート、孤独な滑走
ある晩、まいけるは一人で「金のローラースケート」を履きました。四輪の車輪がアスファルトを叩く音が、静かな街に響きます。
最初は上手く滑れません。何度も転び、自慢の茶トラの毛は泥だらけになりました。膝を擦りむき、肉球が悲鳴を上げます。それでも、まいけるは立ち上がりました。
(ジャニーさん……僕、滑るよ。止まらないよ!)
そこへ、雨を突いてルナ、レオ、おもち、プリンが集まってきました。 「一人でカッコつけないでよ、リーダー」 ルナが不敵に笑い、自分たちの分として用意されていた「銀のローラースケート」を取り出しました。
5. 泥だらけのパフォーマンス
5匹は雨の代々木公園、かつてボトルキャップで遊んでいたあの場所で、ローラースケートを履いて踊り始めました。
観客は誰もいません。照明もありません。あるのは街灯の鈍い光と、車輪が水を弾く音だけでした。
しかし、その動きは全盛期よりもずっと鋭く、必死でした。
「レッツゴーニャンニャン」のリズムを刻みながら、泥を跳ね飛ばし、滑走する。転んでも、すぐに起き上がってポーズを決める。

「見てよ、僕たちの車輪! 泥にまみれても、まだ光ってる!」 まいけるが叫びます。
その姿を、偶然通りかかった一人の子猫が、スマートフォンのカメラで撮影していました。
「すごいや……あのお兄ちゃん猫たち、あんなに転んでも笑ってる」

その動画が、沈みきったニャニーズの運命を再び変える「小さな火種」になるとは、まだ誰も気づいていませんでした。
冬の時代は厳しい。けれど、金のローラースケートの車輪は、確実に未来への道を切り拓き始めていたのです。
第6話 完
次回予告
雨の中の動画が拡散され、再び注目を浴びるニャらシ。
しかし、世間はまだ彼らを許してはいなかった。 「本物の実力を見せろ」という厳しい声に応えるため、彼らはあえて猫としての本能を体現する、ある場所へと向かう。
そこには、悪天候を逆手に利用した、命知らずのパフォーマンスがあった。
第7話:どん底からのグルーミング をお楽しみに!
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