見出し画像

「機動戦士ガンダム」という企画が立ち上がった経緯

皆さんは、世界三大SF作家というのを知っていますか?
それは、次の3名です。

アーサーCクラーク(1917年~2008年)

アイザックアシモフ(1920年~1992年)

ロバートAハインライン(1907年~1988年)

いわゆる古典作家、ミステリーでいえばアガサクリスティみたいな存在ですね。

しかし、日本では「エヴァ」や「ガンダム」等でがっつりSFという文化は根付いてるくせに、上記3名の小説を読んでる人は皆無に近いだろう。
学校でも1クラスに1名いるかいないか、じゃないの?

・・ぶっちゃけ、ハードSFというのは人気ないんですよ。
「要素」としてのSFは昔から人気あるんだけど(タイムリープとかね)、がっつりしたものは誰しも「難しそう・・」と言って敬遠しちゃうものなんだ。

そうね、こういう古典を愛読したのは主に古い世代だと思う。
たとえば、手塚治虫アイザックアシモフを愛読してたのは間違いない。
「鉄腕アトム」とか、ほぼそのまんまだからね。
あと、これはオールドファンぐらいしか知らんかもしれんが、「ガンダム」の元ネタが実はハインラインだったりもするんですよ。

ガンダム元ネタ/「宇宙の戦士」(1959年)

ガンダム元ネタ/「月は無慈悲な夜の女王」(1966年)

この2冊のうち有名なのは「宇宙の戦士」の方で、これはハリウッド映画化もされてますね↓↓

「スターシップトゥルーパーズ」(1997年)

監督/ポールバーホーベン

・・おいおい、昔に「スターシップトゥルーパーズ」は見たことあるけど、これ「ガンダム」とは似ても似つかないやつだったぞ?と思う人は多いだろうが、それは確かにそうでしょうね。
実をいうと、「ガンダム」に活かされた「宇宙の戦士」の要素は作中に出てくる「パワードスーツ(戦闘強化服)」という概念だけであり、しかも映画「スターシップトゥルーパーズ」ではその一番肝心なスーツ設定がまるごとカットされていて、つまり「ガンダム」とは何から何まで1ミリもカブってないのよ・・(笑)。

ハヤカワ文庫「宇宙の戦士」挿絵(画/宮武一貴)

この上の画はハヤカワ文庫版「宇宙の戦士」挿絵で、描いた宮武一貴というのは「スタジオぬえ」の人ですね。
どうも「ぬえ」の初代メンバーたちは小説「宇宙の戦士」の大ファンだったらしく(日本の初版は1967年)、「これをアニメ化したい!」といって代表の高千穂遥さんがサンライズ企画部長山浦栄二(別名/矢立肇)に掛け合ったらしい。

サンライズ/山浦英二

山浦さんも「おぉ、いいね!」と乗り気になり、企画は始動したわけだが、フタを開けてみたら、人体装着型のパワードスーツがいつの間にか巨大ロボというコンセプトになってる!

高千穂「山浦さん、これ<パワードスーツ>じゃないですけど?」
山浦「はい、これは<モビルスーツ>です」


というやり取りを経て、「ガンダム」という企画が立ち上がったらしい。

そう、それまでの鉄人28号⇒マジンガーZの系譜とは異なり、「ガンダム」は一応、ハインライン考案の<パワードスーツ>から全てが始まってるわけだね。
なぜか矢立肇というフィルターを通した途端、サイズがやたら大きくなってしまったわけだが・・(笑)。

でも、高千穂さんは念願の「宇宙の戦士」アニメ化が巨大ロボ系作品に転換されたことを快く思ってなかったんだろう。
「ガンダム」が大ヒットしてもなお

「『ガンダム』はSFじゃない!」

といって彼は「ガンダム」ブームに食って掛かったわけだが、その実情は「ハインライン先生のコンセプトをめちゃくちゃにしやがって・・」というハードSFへの愛がコジれた形で顕れていたんだと思う。

そうね、確かにハードSF観点でいえば、数十メートル規模の二足歩行ロボなんて工学的にまず実用化できない。
理系の人ほど、このへんはよくご存じだろう。
一方、人体装着型<パワードスーツ>は海外にて普通に実用化されつつある傾向。

で、サンライズ側も内心「高千穂さんには悪いことしたなぁ・・」と思っていたんだと思う。
というのも1988年、サンライズは遅ればせながらの贖罪のようにして「宇宙の戦士」アニメ化に踏み切ったのよ。

OVA「宇宙の戦士」(1988年)

監督/アミノテツロー

これ、見たことある人、めっちゃ少ないんじゃないかなぁ?

いわゆる「作画厨」とされるコアなアニメファンの間でのみ、有名な作品である。
作画は、確かにいい。
メカデザインを元祖「ぬえ」宮武さんが担当しており、それだけでも十分に価値のあるアニメだといっていいだろう。

あと、注目ポイントは池田秀一さんが「関西弁のヘタレ兵士」という珍しい役を演じてることかな。
こんなカッコ悪い池田さんは他では見られませんから(笑)。

ただし、原作ファンからの本作の評価は芳しくないらしく、というのも原作は比較的政治色の強い作品であるのに対し、本作はそこをばっさりとカットして青春ドラマっぽくしちゃってるんだよね・・。
なお、サンライズは「北米での非公開」という条件でアニメ化の権利を取得した経緯らしい。

ぶっちゃけ、これはサンライズ的においしいアニメ化ってわけでもなかったと思う(OVAだし・・)。
ホント、「ぬえ」へのご褒美(もしくは贖罪)として作ったアニメじゃないかと。
見てると「ぬえ」の「パワードスーツを描きたい」という思いが強すぎて、逆に敵の宇宙生物の描写がめっちゃテキトーだったりもするんですわ。
そこの描写は、パーホーベン版「スターシップトゥルーパーズ」の方が圧倒的にいいんだよなぁ・・。

多分、パーホーベン版のこれは後の「マブラヴ」の元ネタになってるんだろうし、そう考えると「宇宙の戦士」が日本のサブカルに与えた影響というのはめちゃくちゃ大きいと思う。

ちなみに、2012年には再び日本が荒巻伸治の監督作品として3DCGアニメ化をしてます。

ホント、オタクってつくづく「宇宙の戦士」が大好きなんだね。

だが、これら作品群に先駆けて「世界初の映像化」となったのは前述1988年スタジオぬえ版「宇宙の戦士」であり、やっぱりこれは「古典」として見ておいた方がいいかと。
YouTubeで「宇宙の戦士1988」と検索すれば全6話を普通に見られると思うので、興味の湧いた方はぜひどうぞ。

で、ここからは私なりの「オタク論」を書かせてもらうわけだが、私の持論として、もともとオタクというのは何層かのステージに分かれてるものだと思うのね。
で、中でもそのステージの最高層に位置すると思われるのが「SFオタク」であり、ぶっちゃけ、こいつらこそがオタクの中のオタクなんですよ。
・・あ、ちなみに私は「SFオタク」じゃありませんけど。

でね、そいつらが大体といっていいほど購読してるのがこれ↓↓

月刊「SFマガジン」(早川書房)

これねぇ、1960年に創刊されて、今もなお続いてる老舗月刊誌なんですよ。
これを今なお購読してるという人は、私は無条件で「ホンモノ」認定しますね。

で、これ読んでるのは若い人じゃなく、大体オッサン、もしくはお爺ちゃんなんですよ。
というのも創刊された60年代当時、この誌は結構人気だったらしいのね。
だからアニメ黎明期の人々、宮崎駿にせよ富野由悠季にせよ押井守にせよ、みんなSFマガジン購読してたらしいぞ?

・・どうだろうなぁ、きっと庵野秀明ぐらいの世代で読んでるか読んでないかが怪しくなってくるグレーゾーンだね(1960年代生まれ)。
多分、ガイナックスでそこに確実に足を突っ込んでたと断言できるのは最年長の岡田斗司夫さん(ギリギリ1950年代生まれ)ぐらいで、どうやら社で「SF」に一番強かったのは彼だったらしい。
だから初期のガイナックスは、庵野さんが作ったプロットを岡田さんが検閲するというのが恒例だったっぽいのね。
岡田さんは「自分では作れないけど他人の創作物の揚げ足とるのは得意」というタイプで、これが初期ガイナックスでは庵野⇔岡田間でイイ感じに機能していたという(笑)。

あとは押井守
彼こそはガチガチのSFマニアで、相当SF小説を読み込んでいたらしい。
どっちかというと、彼は「活字の世代」だから。

で、彼は士郎正宗攻殻機動隊」アニメ化で名を馳せたわけだが、でも彼は「攻殻」という作品に出会う前からサイバーパンクをやりたいという意思が既にあったらしく、そりゃ当然だけどウィリアムギブソンをきっちり読んでたわけさ。

ウィリアムギブソン

思えば、彼は80年代の「パトレイバー」で既に<OS>の概念をあそこまできっちり描いてたわけで、モトからSFにやたら強かったんですよ。
ビューティフルドリーマー」もしかり。

なお、押井さんは昔から現在に至るまでずっと「SFマガジン」を購読してきてるらしいんだが、ちょうど彼が大学の頃ぐらいにこの誌で面白い事件が起きたんですよ。

それが

1969年2月号「覆面座談会事件」

これ、ようするにこの誌の編集部員が覆面(匿名)で日本のSF作家たちをことごとくディスっていくという内容だったらしく、そのディスられる対象となったのが

・小松左京
・筒井康隆
・眉村卓
・光瀬龍
・平井和正
・豊田有恒


といった大御所の方々だったみたい・・・。

いや、これマズイんじゃね?と思ったら、

後日、編集長のクビが飛びましたww

クビになった初代編集長/福島正実

・・でもさ、これって凄いと思いません?

まだネットも何もない1969年という時代に

「匿名で人をディスって、その結果、炎上する」

という、まるでSNS時代を予見したかのような事件を起こしてるのよ。

さすが、「SFマガジン」ならではの近未来的不祥事ww


お世話になってる先生方をディスるって、なかなかの反骨だね。

うむ、こういうのを若い頃から読んで育った押井守が、後に高橋留美子先生を怒らせることになったのも、全て必然といえば必然の流れだったような気がしてきたわ・・。


いいなと思ったら応援しよう!