めっちゃアブない内容・・OVA「ゲッターロボ」シリーズ
少し前のことなんだが、庵野秀明がProductionI.Gの役員に就任したというニュースが報じられたよね。
その際、こういう情報↓↓が同時にリリースされたわけです。

特に注目いただきたいのが、<新規IP>のところである。
既に作品タイトルが公開されてるのは、次のふたつ。
WIT STUDIO版「THE ONEPEACE」

「春夏秋冬代行者」原作/暁佳奈

このふたつのうち、「大型投資」とされてるのは「THE ONEPEACE」ではなく、「春夏秋冬代行者」の方みたいだね。
これの原作者の暁佳奈先生って分かります?
「ヴァイオレットエヴァーガーデン」書いた人だよ。
・・必然、号泣系やつでしょう。
で、「大型投資」は上の図を見てお分かりのようにあとふたつあり、ひとつが「ロボット作品」、もうひとつが「SF作品」。
どちらもタイトルは公開されていない。
で、1カ月ほど前のことだが、ニコ生で岡田斗司夫さんがこのふたつの作品が一体何なのかというのを予想する回があったのね。
まず、「SF作品」の方は普通に考えれば「宇宙戦艦ヤマト」でしょう、と彼は言っていた。

問題はもうひとつの「ロボット作品」の方で、これは「GQuuuuuuuX」の続編という可能性があることを前置きをしつつ、でも岡田さんがもうひとつ実は可能性がある、とした作品がこれ↓↓
「ゲッターロボ」

ちょっと意外なタイトルですよね。
しかし、庵野さんを古くから知る岡田さんは
「庵野にとって『ゲッターロボ』は最も好きな作品のひとつで、昔からず~っとリメイクしたいと言ってた」

とおっしゃってました。
ただし、庵野さんが好きなのは、アニメ版よりも漫画版の「ゲッターロボ」らしいのね。
漫画版「ゲッターロボ」(1974年)

これ、読んだことある人います?
アニメとは全然違って、かなりバイオレンスとグロが強めなんですわ。


一応誤解ないように言っておきますけど、これ↑↑悪役じゃなくて主人公のうちのひとりですから・・w
もちろん、アニメの方ではこういう描写はないし、そもそも設定から大きく異なっている。

じゃ、なぜこんなにもアニメと漫画が乖離してしまったのかというと、当時永井豪先生が色々連載抱えてて忙しかったらしく、「任せるし好きに描いていいよ」と、アシスタントの石川賢先生に漫画版の方を丸投げしたらしいのよ。
石川先生も「好きに描いていい」と言われたからこそ好きに描いたんだが、どうも彼は過激な描写に走る傾向があるみたいだね。
どこか常に狂気みたいなものがある・・


ぶっちゃけ、永井/石川系作品の中でも「ゲッターロボ」は「デビルマン」と並ぶほどのトラウマ系作品である。
思えば、ちょうど庵野さんが中学2年の時にこの連載があったわけだから、そりゃ大きく影響受けたでしょうね。
ただ、私は岡田さんが言うような庵野さんが「ゲッターロボ」のリメイクをやるというのは無いと思ってるクチで、というのも漫画版「ゲッターロボ」のアニメ化に近いことを、20年以上前に川越淳さんがやってるのよ。
OVA版「ゲッターロボ」リブート企画(1998年~2004年)

1998年「真ゲッターロボ」監督/川越淳
2000年「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」監督/川越淳
2004年「新ゲッターロボ」監督/川越淳
いわゆる「シン」シリーズというやつですね。
ひょっとしたら庵野さんの「シン」シリーズも、実はここからきてるのかもしれない。
・・あ、ひとつ断っておきますけど、これは純粋な漫画版のアニメ化というわけではありませんし、そもそもこの3つの作品に繋がりなどまるでなく、それぞれが独立した作品です(3つのパラレルワールド?)。
ただ、04年に制作された「新ゲッターロボ」は明らかに石井賢版オマージュだと思う。

この3つのOVAを見るにあたっては、まずこの「新ゲッターロボ」から見るのをお薦めしたい。
制作年順に・・と考えて「真ゲッターロボ」から見始めると多分混乱しますから。
「真ゲッターロボ」と「真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ」は、新世代の子たちが主人公なんですよ。
対して、「新ゲッターロボ」はオリジナルの旧メンバーが主人公。
だから、まずはここから入った方がいい。
<旧メンバー主人公>
流竜馬

神隼人

武蔵坊弁慶

早乙女博士

・・もう、主人公の顔つきじゃないでしょ?
というかね、この中では武蔵坊弁慶だけが唯一マトモなんだが、彼を除いた3人はもう全然ダメ。
みんなアタマのネジ一本抜けてる狂人というか、隼人なんてテロリストかつサイコパスだからね?
多分、キャラ設定としては「西遊記」から引用し
竜馬⇒孫悟空
隼人⇒沙悟浄
武蔵⇒猪八戒
なんだと思う。
ほら、確か「西遊記」でも、悟空/沙悟浄/八戒は「邪悪な悪党」という設定だったでしょ?
その設定を引っ張ってきて、敢えてダークヒーロー的なキャラにしたんだと思う。
ある意味、石川賢の世界観を忠実に再現

また、「西遊記」でいう三蔵法師的ポジションを担うべき早乙女博士が三蔵みたいな聖人では全くなく、むしろこいつが一番タチの悪い悪党だった気がしなくもない。
ただ、この物語を最後まで見ると、このダークヒーロー的設定にもひとつの意味があったことに気付くというか、つまり終盤にいくと「デビルマン」的な展開になっていくわけさ。
ラスボスとして神様みたいな奴らが出てくる。

神様といっても「デビルマン」みたくキリスト教的なやつじゃなく、〇〇天という名がつくような仏教(バラモン教)的なやつで、さらにいうと配下の中ボスが安倍晴明だったりするのよ(笑)。

で、この安倍晴明が時空を超えて「鬼」を現代日本に送り込んでくるという設定になっており、・・あ、やっぱり、ついてこれませんか(笑)?

うむ、確かに原作でも「百鬼軍団」という頭にツノの生えた種族と闘う展開ではあったが、でもそこではその百鬼が何者なのかはふわっと誤魔化してたのね。
ところが「新ゲッターロボ」ではここを敢えてハッキリさせたかったのか、お陰で竜馬たちは平安時代にタイムスリップした末に源頼光たちと共闘し、安倍晴明率いる鬼軍団と闘うというマジでワケ分からん展開に・・。

これ、アホ作品?と聞かれれば、「はい、そうです」と答えざるを得ない。
なんていうか、ロボット+伝奇(山田風太郎的なやつ)というテイストですね。
だけど、これは原作「ゲッターロボ」からは大きく逸脱しつつも、永井豪のテイストからは決して逸脱してないことを理解してほしい。
むしろ、永井豪成分100%濃縮還元といったところである。
そう、永井豪ファンを公言するアニメ作家というのはほぼ皆さん信者みたいなもんで、大体そういう人は「永井先生なら、おそらく展開をこうする」という文法みたいなものをきちんと理解してるのさ。
ゆえに、たとえ原作を逸脱しようとも文法を踏まえてるから世界観は意外と崩れない。
・・たとえば、皆さんはアニメ「デビルマンレディー」を知ってる?

これも原作漫画はちゃんとあるんだが、しかしアニメはそれとは全く異なる独自の展開を見せている。
ただ、それでファンがキレたかというと実はそうでもなく、一部では「原作以上に永井豪だ」という評価すらあったんだ。
・・そう、いうなれば永井豪の作風というのは森進一の歌唱のような領域である。
たとえばコロッケさんとか、森進一さんのモノマネができるだろ?

彼に限らず多くの人ができる森進一は、かなりポピュラーな古典のひとつである。
で、コロッケさんの森進一を見た後に、ご本人の歌唱を見ると

あぁ、森進一がやる森進一は、いまいち森進一じゃないんだよなぁ、というふうに思ったことありません?
多分、「デビルマンレディー」にしてもアニメの方が原作より永井豪っぽさがあったのは、もはや永井豪の作風が森進一の領域にまできてるということなんだと思う。
それは「新ゲッターロボ」もまさしくそうで、これはもともと石川先生が「永井豪っぽく」というのを意識して描いた作品である。
その原作を、今度は川越監督がさらに「永井豪っぽく」とアレンジした作品であり、最後はほとんど善と悪の逆転、まさに「デビルマン」をオマージュしたかのような締め方である。
石川「永井豪っぽく」⇒川越「永井豪っぽく」、いわば「二重のバイアス」がかかっており、そういう意味ではめちゃくちゃ純度が高い永井作品として仕上がっています。


「新ゲッターロボ」を見た後は、ぜひ「真ゲッターロボ」も見てください。
これも熱くていいですから。
多分だが、ガイナックスが2007年にリリースした「天元突破グレンラガン」は思いっきり「真ゲッターロボ」の影響を受けてると思う。
これが元ネタなのは、ほぼ確定とさえいっていいだろう。

とにかく、見てるだけでエネルギーをだいぶ持っていかれるやつなので、「グレンラガン」等が苦手な人にはお薦めしません。
・・ただね、この得体の知れない「ゲッターロボ」の熱量は一体何なのかと私なりに考えたけど、多分これ、根っこにあるのは「石川先生の怒り」だよね。
あの当時、永井先生/石川先生の描く漫画は「悪書追放運動」のターゲットにされていて、マジで焚書(本を燃やされる)をされたりもしてたらしいのよ。
そりゃ鬱屈がタマるよね。
だって、自分たちが完全に悪魔扱いだもん。
多分、そういうところから石川先生の作風は破壊衝動が強くなっていったんだと思うよ。

そりゃ、主人公の人相が悪くもなるわな・・。
とはいえ、OVA「ゲッターロボ」が面白いのは紛れもない事実であり、未見の方はぜひ一度ご覧いただきたいと思う。
スーパーロボット系アニメの中では、最も見ておかなくてはならん作品のひとつなのは間違いないぞ?


