「三つ目がとおる」に見る、手塚治虫の女性嗜好
今回は、手塚治虫の名作「三つ目がとおる」について書いてみたい。

これは、結構知名度高い作品だと思う。
しかしその割に、「鉄腕アトム」「火の鳥」「ブラックジャック」あたりと比較すれば語られることの少ない作品だとも感じる。
なぜだろ?
この作品が扱ってるネタは
・超古代文明(ロストテクノロジー)
・超能力
・考古学
といった感じで、いわば「ムー」的世界観であり、いまどきのアニメファンにこそウケそうなテイストなんだが・・。

この「ムー」って都市伝説ばかりのフザけた雑誌に思えて、実はあの学研が発行してるんだよね。
で、アニメ「三つ目がとおる」はその学研が製作のメインスポンサーだったらしく、なかば「ムー」の販促に見えなくもないけど(笑)。
ちなみに原作は、週刊少年マガジンに1974年~1979年に連載されていた漫画だという。
この70年代半ばという時期は、手塚先生にとっての「返り咲きブレイク期」。
「ブラックジャック」(週刊少年チャンピオン連載)と本作「三つ目」が、手塚先生復活の決め手になったのだという。
正直、このふたつの連載が始まる前までは
「手塚治虫は、もう時代遅れのオワコン」

というのが、率直な世間の認識だったんだってさ。
「神様に対して、なんと不遜な・・」と私も思うけど、でも当時を知る人は真顔でそう言ってたよ。
実際、1973年には虫プロも倒産してるし、70年代初頭は先生にとってドン底だったんじゃないか?
かなり切羽詰まってたと思う。
・・いやいや、そうは言っても「アトム」や「ジャングル大帝」があれほど売れてたし、もう十分に印税収入で食っていけるでしょ?
と我々シロウトは軽く考えてしまうが、どうも実情は、そんな甘くなかったみたい。
というのも、先生はそれまでに私財をかなりの額、虫プロのアニメ制作赤字補填に注ぎ込んでたらしいのよ。
おまけに、先生のマネージャーをしてた西崎義展という奴が、いつの間にか手塚作品の著作権を個人で買い取ってたらしく、おまけに彼はそのまま先生の元から去ってしまった・・。
「アカン、このままではボクの人生終わってしまう」

と一念発起し、火事場のクソヂカラで生み出したのが「ブラックジャック」と「三つ目がとおる」だった、ということ。
背水の陣の先生は、復活の為に2つのベクトルを示した。
①自分にとって最後の切り札、医学知識をネタにした漫画を描く(先生は医師免許所持者)

②描きたいものを描くのでなく、市場分析して「売れる漫画」を描く

うむ、「三つ目」は明らかに売れセン狙いなんですよ。
おそらく先生が「三つ目」の参考とした作品は、これ↓↓である。

ちょうど「三つ目」の連載が始まる前年まで、同マガジンで連載されてたのが、この「デビルマン」なんだ。
もちろん、手塚先生も「デビルマン」見て「やられた!」と思ったクチだろうし、と同時に「ボクにだって、こういうのは描ける!」と奮起したことは想像に難くない。
「デビルマン」悪魔を内包する主人公/不動明

「三つ目がとおる」三つ目族の世界支配をもくろむ主人公/写楽

「デビルマン」ヒロイン/美樹

「三つ目がとおる」ヒロイン/和登

ヒロインが活発で男勝りなキャラというところまで、手塚先生はきっちり「デビルマン」を模倣している。
手塚先生ほどの大御所が、まだ若手の永井豪の模倣をすることには抵抗がなかったのか?
と思うが、いや、この時期の先生はそれほどに切羽詰まってた、ということなんじゃないだろうか・・。
でね、このヒロインの和登さんというのが、また異様にイイのよ。
いわゆる、ボクっ娘

しかし、ボクっ娘といっても常に男性的なキャラというわけじゃなく、母性の強いキャラでもある。
そもそも主人公の写楽が
①オデコに絆創膏を貼ってる状態の写楽

・幼稚園児並みに純粋、天真爛漫
・学校ではイジメの対象
②オデコの絆創膏を剥がした状態の写楽

・IQ300の天才
・三つ目族の世界征服という野望を抱く
・オラオラ系のDQN男子
という二重人格設定なんですよ。
母性の強い和登さんは、①状態の時の写楽をイジメっ子たちから守るような役回りで(彼女は戦闘力が高い)、その時の写楽は和登さんを疑似母として慕ってるのさ(写楽に母はいないので)。



・・くっそエロいww
一応いっときますけど、写楽は14歳、和登さんも14歳、同学年なんですよ。
だから本来なら、一緒にお風呂入ってることは少し問題あると思うんだが、でも①状態の時の写楽は精神年齢が5歳児ぐらいなので、特に問題はないんです。
この子、断じて勃ったりしませんから・・。
上の画で写楽はオパ~イを求めてる感じではありますが、それは母への恋慕であり、決して性欲とかではありません。
ところが、②状態(本人格)の時の写楽はまた話が別なんです・・。

うっわ~、これぞ手塚的エロシチュエーション炸裂ですわ!!
多分、先生の趣味は「リボンの騎士」からしてボクっ娘だと思うし、普段は気丈なボクっ娘が、ふとした瞬間、オンナの顔、みたいなシチュエーションに萌えるタイプなんだと思う。
ちょっとした変態、ですね(笑)。
まぁ、こういうのは永井豪先生の作風を意識したという部分もあるだろうし、あとは純粋に、この作品のヒットを狙ったんだと思う。
この時期の先生は、何よりヒットに飢えてたから・・。
でね、我らが和登さんは、①状態の写楽は受け入れるけど(疑似母として)②状態の写楽はムリ(さすがにオンナとしては・・)というスタンスなんです。
ところが問題は、この作品の最終回ですわ。
最後の1コマがまたしてもお風呂シーンなんですけど、そのコマを再現したフィギュアがこういう感じなのね↓↓
【和登モノローグ】
「僕は当分彼と別れることはできないだろう。
もしかしたら、一生そうかもしれない。
それは三つ目の底知れぬ魅力の為だろうか・・」

分かります?
このお風呂シーン、なんと写楽のオデコに絆創膏が無いんですよ。
つまり、和登さんが②状態の写楽を受け入れたことを示したコマで最終回が締めくくられたわけです。
完墜ちエンド!
この最終回、個人的には「デビルマン」最終回に匹敵する破壊力だと思っています。

じゃ、こういう前提を踏まえた上で、「三つ目」がどういうふうにアニメ化されたか、ですよね。
まずアニメ化第1弾は、日テレ24時間テレビ内のスペシャルアニメ枠で放送されました↓↓
「三つ目がとおる」(1985年)制作/東映動画 時間約85分
これは原作をかなり改変している。
最後のオチが「その日以来、写楽くんのオデコから絆創膏が外されることは2度と無かった」となっており、つまり原作とは真逆なのよ。
全1話で全て完結させちゃったということ含めて、納得いかんわぁ・・。

で、皆さんにお薦めしたいのは1990年版アニメの方だね。
1990年版「三つ目がとおる」制作/手塚プロ

こっちは全48話、なかなかいいアニメ化です。
ただし、原作にあるエロ要素はまるごとカットされてます。
まぁ、低年齢層に向けたアニメ化だろうし、そこは致し方ないでしょう。
でも、そこさえ目を瞑れば、これ実に面白いアニメですよ。
「デビルマン」っぽい鳥も出てくるし・・

前半は、大体1話完結のオカルト系ミステリーといったテイストなんだが、第23話あたりからは連続ドラマっぽいテイストになってくる。
この写楽という主人公、二重人格というより絆創膏を外した時が「本人格」であり、この本人格がマジでヤバいのよ。
【写楽(本人格)の野望】
・二つ目族(現人類)の文明を滅ぼし、三つ目族の王国を築く
・二つ目族は奴隷化し、労働力とする
・和登さんに子供をたくさん産ませ、三つ目族を増やす

基本、こいつ生かしといたらヤバいんだよねぇ・・。
実際に人智を超えたチカラを扱える奴である。
ただ、絆創膏を貼ってる時の写楽はホントに天使みたいなイイ子。

で、和登さんは「写楽くんを信じる(本人格の方も)」というスタンスなのよ。
だが、その思いを踏みにじるようにして騒動を巻き起こしていく写楽。
それでも、和登さんは最後まで写楽を信じ抜くことができるのか・・?

というドラマなんですよ。
ラストは「火の鳥」的というか、「ナウシカ」的というか、めっちゃ壮大な物語に発展するわけで、これはアニメオリジナルの脚本らしいが、なかなか悪くない締め方だったと思う。
多分、これはあらゆるサブスクで配信されてると思うので、未見の方は是非ご覧ください。

和登さんが、もうちょっとだけでも原作に寄せてればなぁ・・と思うけど、まぁこれはこれで悪くないですよ。
いやホント、無条件で自分のこと信じてくれるオンナノコって、男のロマンですよね・・


