アイドルが声優を務めるということ
今回は「アイドル」の話をしてみようと思う。
で、私が最近気になってるアイドルが<あのちゃん>である。

最近、この人は凄い人気ですよね。
系譜としては、きゃりーぱみゅぱみゅの後継みたいな感じ?
聞けば年齢は現在28歳、そこそこイイ齢である。
しかしその年齢に合わずたどたどしい喋り方をする人で、しかも一人称が「ボク」という実にあざといキャラ設定。

・・と、最初のうちは思ってたのよ。
実際、このてのサブカル系アイドルというのはこれまでもいなくはなかったわけで。
しかし見てるうちに、さすがに「・・あれ?」と少し違和感を覚えるようになってきたのね。
というのも、この人は剥いても剥いても、出てくるのがどこまでいこうとも<あのちゃん>だから・・。
それ以外が見えてこない。
おそらくだが、これは周囲のオトナたちがプロデュースした類いのものではあるまい。
つまり養殖モノでなく、天然モノ
めったにお目にかかれない、希少種のホンモノである。

まぁ、ひと昔前の表現をするなら、「フシギちゃん」ということになるんだろう。
聞けば、一人称の「ボク」は中学時代からずっとそうだという。
いまどきの中学生は知らんが、少なくとも私が中学の時は一人称が「ボク」という女子は学校にひとりもいなかったぞ?
仮にいたとしても、そういう子は周囲に「あざとい」と解釈され、イジメの対象になった可能性が高い。
事実、あのちゃんは中学時代イジメに遭い、不登校になったという。
同じく高校でも不登校になったという。
普通なら、みんなイジメを怖れて自身のキャラを学校用にチューニングしていくものだったよね?
いわゆる「迎合する」「自分(個性)を殺す」というやつだ。
しかし、あのちゃんの場合、周囲に迎合して自分を変えるぐらいなら学校に行かないという選択をしたわけさ。
頑固者?
いや、実にZ世代らしいスタンスだと思うよ。
映画「デッド デッド デーモンズ デデデデデストラクション」(2024年)

で、私があのちゃんのことを明確に認識するようになったのは、このアニメ「デデデデ」↑↑のcvからです。
セカイ系の傑作として非常に評価の高い本作。
作品の雰囲気的には、今夏ヒットした「タコピーの原罪」にめっちゃ似てると思う。
どちらも、コンセプトはブラック系「ドラえもん」。
多分こういうのが、今の時代の空気感というやつなんだろうなぁ・・。

で、どういう経緯であのちゃんが主演声優に抜擢されることになったのか、その詳しい経緯は知らん。
ただ、どう考えても彼女が声優オーディションなどを受けたとは思えんし、おそらく最初から幾田りら&あので主題歌+cvという、彼女たちありきのプロジェクトだったんだと思う。

まぁそれはそれでいいとして、しかし驚くのは、このメインヒロイン凰蘭があのちゃんにぴったりハマってたことなんだよね。
彼女は声優初挑戦、しかも例のたどたどしい滑舌ゆえ、ヘタすりゃせっかくの映画を潰しかねない、めちゃくちゃリスクあるキャスティングである。
なのに、この作品をご覧になった方はお分かりだと思うが、意外なほど彼女のcvは悪くなかったんだわ・・。


・・いや、厳密にいうと決して上手くはないんですよ。
そりゃシロウトだし、当然でしょ。
聞けば、監督さんも彼女に「演技しなくていい、いつも通りの自分でやればいい」と言ってたらしくて、確かに劇中の喋りは大体あのちゃんそのまんまである。
そもそも、この鳳蘭という役柄自体、
かなりクセのあるフシギちゃんですから

しかし驚かされるのは、この鳳蘭のエキセントリックなキャラはアニメ的にデフォルメされた感じではなく、「こんな子、確かにいるよね」という感じで自然に描写されてること。
何よりもそれを演じてるのがあのちゃんだし、現実に存在する彼女が無添加でcvやってるんだから、そのキャラの信憑性は限りなく高くなっていた。
というか、画風にクセがあるからついつい騙されてしまうが、実はこの作品は現実離れした描写が一個もない、全体的に超リアル志向の作風なのよ。
凄いよなぁ。
リアリティを追求したら、なぜかアニメっぽくなった、という令和独特の時代性・・

あのちゃんを見てて痛感するが、
もはや3次元世界(現実)が2次元的っぽいものに変質してきてるのが今だよな?

仮に、あのちゃんが日常生活で「はにゃにゃフワー!」とか言ってても特に驚きはないほどである。
これが<時代>というものだろう。
私のようなオジサン世代は「世界名作劇場」や「まんが日本昔ばなし」等を幼少期に見て育ったものだが、あのちゃんは1997年生まれだからそういうのを見てない。
じゃ、一体何を見て育ったのかといえば、一説によると
「ケロロ軍曹」(2004年~)

だという(笑)。
なるほど、いかにもこういうの見て育ったという感じするわ~。

この作品のコンセプトは「ユルい侵略者」。
「ユルい」⇔「侵略者」という全く相容れないものが絶妙なバランスで同居してるあたりが本作における最大のキモで、
まさに、あのちゃんのキャラそのものじゃん?

・・そう、確かに彼女は芯に毒のあるキャラである。
そりゃイジメにも遭ってきた人で、人の悪意を知ってるし、世の中が不条理だということも彼女には前提なわけですよ。

で、こういう今まで傷ついてきた子がその後も強く生き抜く為の第一段階は、まず「武装すること」だよね。
彼女の場合、それが<あのちゃん>というキャラで自我をコーティングすることだったんだと思う。


思えば「デデデデ」ヒロイン/鳳蘭も、もともとの人格は極めて内気で繊細なものだった。
一人称も、この頃はまだ「ボク」じゃなかった。
彼女の一人称が「ボク」になり、「はにゃにゃフワー!」とか言い始めたのは「やり直し(二度目)の人生」からだよね?
そう、一度目の人生の記憶がないとはいえ、彼女は二度目の人生から無意識的に自我をキャラクターでコーティングし、武装強化したんだわ。
このへん、鳳蘭/あのちゃんが完全にシンクロしてると思う


そもそも、この「デデデデ」のプロットを要約すれば、「鳳蘭が親友の門出を死から救う為、その代償として首都を壊滅させる(家族を含む多くの人々が死ぬ)」という救いのない、めちゃくちゃ残酷なものである。
トンデモないスケールの大罪を背負う鳳蘭・・

それでも映画のラストシーン、
門出を救えたことに自らの罪を納得し、

この満面の笑顔ですから・・(笑)

こういうオチは、幼少の頃からずっと「ヒーローが世界を危機から救う」というアニメばかり見てきた私のようなオジサン世代からすると「はぁ?」というものである。
しかし、あのちゃん世代は真逆なんですよ。
「自分にとって一番大切な人を守れるのなら、最悪、セカイが滅亡しても構わない」

セカイ系の基本思想ですね。
昭和より平成、そして平成より令和、こうして時代を経るにつれて<闇>が深くなってきてるような気がするのは私だけでしょうか?
思うに、アイドルというのは時代を映す鏡であり、またアニメというものも同様に時代を映す鏡。
この両者、本質的には酷似している。
だからこそ、実は親和性高いんですよ。
特にあのちゃんみたく「演技しなくていい」といわれた無添加のパターンでそこにハマるってのは、そのコンテンツが映したのが時代そのものだということなんでしょうね。


