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昨年公開作品中、「ルックバック」と互角の評価だったアニメ

今回は、海外アニメ「ロボットドリームズ」について書いてみよう。

これは、昨年のアニー賞長編インディペンデント部門最優秀作品賞をとり、話題になったアニメである。
いや、それだけじゃないさ。
その賞歴を他にもざっと挙げると、以下の通り。

・アヌシー国際アニメーション映画祭長編コントルシャン部門賞受賞
・シッチェスカタロニア国際映画祭観客賞受賞
・コロナド島映画祭最優秀長編アニメ映画賞受賞
・ヨーロッパ映画賞長編アニメーション映画賞受賞
・フォルケ賞アニメ映画賞受賞
・トロント映画批評家協会賞アニメ映画賞受賞
・ネバダ映画批評家協会賞長編アニメ映画賞受賞
・フェロム賞コメディ映画賞含む3冠受賞
・CEC賞最優秀アニメーション映画賞含む2冠受賞
・ガウディ賞アニメ作品賞含む2冠受賞
・ゴヤ賞長編アニメーション映画賞含む2冠受賞
・プラチノ賞アニメ映画賞含む2冠受賞
・キリノ賞最優秀イベロアメリカ最優秀映画賞含む2冠受賞etc

「ロボットドリームズ」(2023年)

監督/パブロ・ベルヘル(スペイン/フランス)

まぁ、ここ最近において

世界から最も称賛されたロボットアニメ


といっていいだろう。
といっても「ガンダム」「マクロス」系ではなく、そもそもSF系ではないファンタジー系である。
なんせ本作には人間が全く出てこず、人間に該当するのは擬人化された動物キャラたちだから。
動物たちが二足歩行し、服を着て、普通に町で文化的な生活を営んでいる。
なぜ、敢えて動物?と思うけど、おそらく原作からしてそうなっているんだろう。

原作となっている漫画「ロボットドリームズ」

原作は、アメリカの漫画らしい。
私はこれを見たことはないけど、どうやら子供向けの寓話的漫画みたいだよ。
外国って、児童向けコンテンツだとやけに動物キャラを使いたがるよね。
かつて宮崎駿がイタリアとの合作で「名探偵ホームズ」作った際にも、宮崎さんが「人間のキャラでやりたい」と主張したのに、イタリア側が頑としてそこを譲らなかったそうだ。
結局、あの宮崎さんほどの人が折れたんだから、相当なもんである。

じゃ、この作品の中でホームズが犬であることが活かされる設定があったかというと、特にそんなの無かったと思うんだよね。
だから、いまだなぜ、これの動物擬人化にイタリアがこだわったのかの意味を私はよく分からない。
コドモは動物が好きだから?
あるいは、暴力シーンを人間がやると生々しくて教育上悪いが、動物キャラがそれをやっても「これはあくまで物語の世界なんですよ」と印象付けられるので教育上セーフ、という考え方なのかもしれない。
思えば1930年代ディズニーの時代から、ずっと動物擬人化は児童向けの世界じゃ王道中の王道ともいえるか・・。

で、この「ロボットドリームズ」でも主人公の一方が犬なんだが、彼が犬であることに特別深い意味はなかったように思う。
まぁ、犬ゆえ嬉しいと尻尾振るし、感情表現には便利だろうけど(笑)。
あと、この作品の最大の特徴は

セリフが一切ないこと


であり、つまり会話がないのよ。
といっても彼らが喋れないという設定ではなく、あくまで作品の表現としてそういう形をとってるだけだと思う。
ただ、この「会話がない」という表現スタイルは動物キャラだからこそ許容できたという気もする。
人間キャラでずっと黙りっぱなしというのは、さすがに見ててしんどくなるだろ。

主人公の犬「ドッグ」

で、この主人公の犬、性別は男か女かもよく分からず、見た感じティンポはついてないんだけど、その立ち居振る舞いから見て男かなぁ・・?
まぁ、この作品の世界観は全て男/女がハッキリしてないので、そういうのはふわっと抽象的に捉えればいいんだと思う。
個人名にも具体性は特になく、彼は「ドッグ」。
年齢、性別不詳。
学生か社会人かも分からない。
働いてるふうでもないのにおカネに困ってることもなく、そういう具体的なところを考えていってもキリがない。
この作品は寓話だし、あくまで抽象で捉えなきゃダメ。
彼はドッグ、ただそれだけでいいんです。

で、このドッグにはなぜかトモダチがいない。
その理由も、よく分からない。
とりたてて見た目が冴えないわけでもなく、性格が悪いわけでもなく(いやむしろ心優しい)、おカネがないわけでもなく、ちょっと不器用であること以外に特に問題のないキャラである。
なのに作中、初対面の相手にいきなりソッポ向かれる描写があり、私なんかは「はは~ん、こいつワキガだな?」と一瞬考ちゃったけど、いや、だからそういう具体的なディテールはどうでもいいんだってば。
ただ抽象的に「トモダチがいなくて寂しい」、それだけでいいんです。

で、寂しいドッグは、通販でロボットを買うところから物語は動き始めるんだね。

通販でロボットを購入したドッグ
制作するドッグ
動き始めるロボット
ドッグの導きで、世の中を色々と知っていくロボット

このロボ、動力源が何なのか全く分からない。
作中、一度も充電してなかったような気もするし。
でも結構ハイスペックで、明らかに<自意識>まで有した自律型AIである。
草薙いうところの「ゴースト」を宿してる感じだなぁ。

で、ドッグとロボットはとても仲良くなる。

このへんの描写、明らかに<LOVE>だよね?

・・ん?BL?と一瞬考えたが、よく考えたらこのロボも、性別がよく分からない。
ちなみにティンポはついていない。
まぁ、だからこういうのはジェンダーとかは度外視した抽象的な<友情>と解釈すべきなんだろうけど、でも私は

ドッグ=男
ロボット=女

という解釈でも別に構わないと思う。

つーか、このロボの立ち居振る舞いを見てると時々オトメっぽさを感じるし、このふたりの関係性は<友情>というより<LOVE>で解釈した方がよりしっくりくるんだよ。
あくまでプラトニックなやつだけど・・。

で、ラブストーリーともなれば当然、ふたりを引き裂く障害が発生するのがお約束だよね。
本作もまたその例外ではなく、ある不幸な事件が起きてしまうんだわ。

<不幸な事件の流れ>

①ふたりで海水浴場に行く

②海から上がって、浜で休んでいるうちにロボの体が動かなくなってしまう(ロボは海水NGだった?)

③ドッグは故障したロボを連れ帰ろうとするが、重量が重すぎて運搬できない

④日が暮れたので、ドッグは翌日修理道具を揃えて再び海水浴場に来ることにして単身帰宅、とりあえずロボを一晩浜に放置することに

⑤翌日ドッグが海水浴場を訪れるとフェンスが立てられており、海水浴場は今日からシーズンオフで来年6月まで閉鎖、この場所は立ち入り禁止だという

⑥ドッグはフェンスを破壊して海水浴場に侵入しようとし、結果逮捕される

結局、その後ドッグは色々手を尽くすも無駄だと諦め、海水浴場がOPENになる来年6月まで待とう・・と判断。
この判断に「もっと他にも手段あるやろ!」とツッコミたいのはヤマヤマだが、まぁ、それはやめておこう。

で、ロボットの方はどうなってるかというと、こいつ体は動かないけど意識は全然はっきりしてるんだよね。
バッテリー切れを起こすでもなく(永久機関なの?)、あの日以降、ずっと砂浜に横たわっている。
ロボはドッグを想い、ドッグはロボを想い、会えないふたりは悶々とその後をすごしていくことになる。

で、ここから先のネタバレはやめておきます。


なぜって、この作品最大のキモはやはりオチだと思うし、そこは御自身の目で確かめてほしい。
多分、大方の予想を裏切る展開だし、いや、逆にこのオチがあるからこそ、本作はここまで世界中から大絶賛されたんじゃないか。

多分、ここまでの大絶賛は2024年において「ルックバック」と互角だったんじゃないかと思うんですよね。
いや、ホント凄いアニメですよ。

驚くのは、この作品の監督がアニメ畑の人じゃなくて、実写畑の人だということだよ。
名前はパブロ・ベルヘル、私は見たことないんだけど「ブランカ二エべス(スペイン語で白雪姫)」という映画で2012年に大絶賛された大物らしい。
で、その「ブランカ二エべス」は無声映画、モノクロ映画というレトロ調のやつで、そういう意味じゃ「ロボットドリームズ」と通じるものがあるね。

「ブランカ二エべス」(2012年)

で、もともとはアメリカがベルヘルに3DCGアニメ化として持ち掛けた企画だったらしい。
ところがそれが頓挫し、まぁ私はこれをこの作品のオチが絡んだ話じゃないかと睨んでるわけで、

つまり、このオチはどう考えてもハリウッド的じゃないのよ・・

というか、どっちかというとバンドデシネ的だよね。

で、最終的にベルヘルはこれの制作の為にわざわざスペインに複数の会社を設立したらしく、結構大変な思いをして作ってくれてるのよ。
いやいや、その甲斐は十分にあったってば・・。
しかしあれだな、実写で名声を得た監督がここまでアニメに心血注いでくれた例は非常に珍しいと思うし、なんか嬉しいな~。
思いっきり手描き2Dでやってくれたのもなんか嬉しい。

で、本作は日本でも昨年11月に公開されてスマッシュヒットしたわけだが、といっても上映館数が案外少なかったこともあるし、きっと未見の方は多いと思う。
・・はい、未見の方にはネットで無料動画視聴をお薦めいたします。
Google等のネットで「robotdreams anime」と検索すれば必ず海外のサイトがフル動画をアップしてくれてるはずなので、それをご覧ください。
なんせ本作はセリフないし、字幕もほぼないし、敢えておカネを出してまで日本語版を見る必要は全くないんだよ。

基本的にオトナ向けの作品と思うが、でもキャラが全体的にかわいらしく、案外お子さんも喜んでくれる全世代対応型のコンテンツだと思う。
いずれ<不朽の名作>認定されるのはほぼ間違いないだろう。

ひょっとしたらベルヘルは、これに味をしめてアニメ企画第2弾とか着手するんじゃないか?


楽しみである。


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