「天久鷹央の推理カルテ」佐倉綾音が魅力的すぎて逆に問題
皆さんは今冬アニメで、「天久鷹央の推理カルテ」というのをご存じだろうか。
これ、いわゆる探偵モノである。
それもただの探偵モノというわけじゃなくて、医学/薬学の知識を総動員したタイプ、いわゆる「医療ミステリー」ってやつだね。
・・そう、タイプでいうとヒット作「薬屋のひとりごと」と同じカテゴリーだということ。
「これ、『薬屋』の大ヒットに触発されてのアニメ化だろうな・・」というのが私の一番最初の印象である。
「天久鷹央の推理カルテ」(2025年)

この作品、普通に面白いんですよ。
でもね、こういう言い方をするのも申し訳ないけど、「医療ミステリー」というやつはもともとハズレがないジャンルである。
このての物語で、面白くないとかは有り得ないと思う。
・・あ、でもよく考えたら、アニメというジャンルでの「医療ミステリー」は決して多くないわ。
思えば、私が知ってる「医療ミステリー」傑作のほとんどがテレビドラマである。
「アンナチュラル」

「チームバチスタ」シリーズ

「臨場」シリーズ

多分こういうのって、「テレビドラマの縄張り」というべきジャンルなんだと思う。
もともと、「ミステリー/サスペンス」と「医療」はテレビドラマにとっての花形であって、そのハイブリッドである「医療ミステリー」はめちゃくちゃおいしい位置付けである。
当然、そこには「アニメ屋は不用意に近づくんじゃねーぞ」的なテレビ業界の不文律が存在してたんじゃないだろうか?
基本、テレビ局内でのチカラ関係は【ドラマ>>アニメ】。
アニメは「ドラマの邪魔にならないテリトリー」を主戦場にするのが昔から暗黙の了解で、ぶっちゃけ、そういう意味では異世界ファンタジー、あるいは異能力系アクションがベストなんだよね(笑)。
ホントはアニメ側だって、東野圭吾作品や宮部みゆき作品を扱いたい気持ちはあったと思うのよ。
アニメ化すれば、そりゃ順当に面白い作品はできるだろうし。
でも敢えて、そこには手を出さなかった。
その大きな理由は「これ、アニメでなければ表現できない類いのコンテンツなのか?」という問いに答えられないからさ。
で、今回、この「天久鷹央の推理カルテ」を見て率直に思ったけど、
これ、どう考えてもテレビドラマの方に適した原作だよな?

上の画↑↑を見てご理解いただけるだろうけど、これ、やっぱり「アニメ化に適した画」じゃないでしょ?
どっちかというと、テレビのサスペンスドラマでよく見る系の画である。
じゃ、「薬屋のひとりごと」はどうなのか?

これは、逆に日本のテレビドラマの予算規模ではちょっと無理かと。
あの壮大なスケールの宮廷を実写で再現するにはめっちゃおカネがかかるだろうし、衣裳/小道具を揃えるだけでも大変である。
いやもちろん、本場中国でなら実写化できるだろうけど、しかし日本でこれを映像化するのは、もはやアニメしか方法論がないだろう。
そういう意味じゃ、「天久鷹央」と「薬屋」は似てるようで実は似てないというか、「薬屋」がOKだから「天久鷹央」もOKだよね?というほど単純なものでもないような気がするわ。
ただ、この「天久鷹央」原作者・知念美希人先生は、ぶっちゃけアニメ化の方を想定してたのかもしれない。
だって、原作小説の装丁がこれだもん↓↓

ほぼラノベじゃん?
・・いや、この知念先生というのは「仮面病棟」とか書いてた人である。
医師兼作家という人らしい。

私は以前に映画「仮面病棟」見たんだけど、テイストは「天久鷹央」の系統と全然違うなぁ。
「仮面病棟」は社会派、「天久鷹央」は娯楽作、といった印象。
あるいは知念先生側の意思として、作品ごとの「実写」「アニメ」振り分けがあるのかもしれないね。
・・いや、私個人としては、「天久鷹央」もテレビドラマ向きだと思ってるんだけど。
ただ不思議なもんで、ヒロイン鷹央のcvを佐倉綾音が担当してるもんだから、もうそれだけで妙に「アニメとしてのカタチ」が出来上がっちゃうのよ。
彼女の声は妙にクセがあって、どんな役柄をやっても「あ、佐倉さんだ」とすぐに分かる類いの声優である。
私が大好きな声優のひとりなんだが、ただひとつ難をいうと、佐倉さんの声の魅力が時に役柄そのものの魅力を「上書き」しちゃうことがあるのさ。
実は、今回もそのケースである。

上の画を見ての通り、この作品のヒロイン鷹央はとても魅力的なオンナノコでしょ?
・名探偵並みに、めっちゃ頭がいい
・体は小さく、幼く見えるが病院副院長(27歳)
・優秀だが歯に衣着せぬ物言いをするタイプで、周囲から常に疎まれてる
・好奇心が旺盛で、のめり込むと歯止めがきかないタイプ
うん、こういうの、アニメの世界では「よくいるタイプ」だよね。
で、このキャラ設定に、佐倉さんの声が当てられるのを想像してみてくれ。
十分「想定の範囲内のキャラ」でしょ?
と同時に、何となく「既視感あるキャラ」とさえ言えるでしょ?
でもさ、第8話で鷹央のセリフにこういうのがあったんだ。
「臨機応変、か・・。
私には、それができないんだ。
相手が何を求めているか、読み取れないから」

このセリフ聞いて、私はハッとしたのよ。
・・そうか、今までの鷹央のエキセントリックな言動は全て「疾患」だったのか、と。
ようするに、彼女の異様なまでの知能の高さは「サヴァン症候群」が起因ということだよね?
サヴァンって、ほら、映画「レインマン」でダスティンホフマンが患ってたあれだよ。
だけど、このアニメでは佐倉綾音の「健康的な声」がキャラを完全に上書きしちゃってたもんで、今まで視聴者がそれだと気付かなかったんだよね。
むしろ視聴者的には、「ちょっと変人」「推理オタク」ぐらいで解釈してたと思う。
つまりcvが、このキャラの「病み」をマイルド化してたということ。
これは率直に、いかんなぁ・・と思った。

おそらく、原作者の知念先生はこのヒロインを「病みを抱えた人物」として構築していたんだろう。
でも、これがアニメになると鷹央はアニメ的「ツンデレ」カテゴリーの中に包括されてしまった、という事実。
本来なら深みがあるはずのキャラ設定が
POPでかわいいキャラデザ+cv佐倉綾音の圧倒的な魅力
という化学反応により、むしろアニメとしては「テンプレキャラ」になってしまったわけだね。
これぞ、
アニメ化の弊害
というやつじゃないのか?

そのへんでいうとね、私は「薬屋のひとりごと」の方が演出として一枚上手だったと思うのよ。
そもそも作画のカロリーとして「薬屋」の方が上なんだが、あともうひとついわせてもらうなら、この作品の成功は、cv悠木碧の圧倒的うまさによる部分が大きかったと思う。
その悠木さんの「圧倒的うまさ」とは、彼女が「悠木碧」を殺せるところにあるんだよね。
殺せるから、この作品の中にいるのは悠木さんじゃなく、「猫猫」なのよ。
いや、何かこういう書き方をすると【佐倉綾音<悠木碧】と言ってるみたいで気が引けるなぁ・・。

聞けば、この「天久鷹央」は近いうちに実写ドラマ化されることがほぼ内定してるという。
主演女優が誰になるかは知らんけど。
どうなるんだろう。
テレビドラマがウケてアニメの方は忘却の彼方に消えていくのか、あるいはテレビドラマがコケて、「アニメの方が良かったな~」⇒再評価⇒2期決定⇒劇場版制作、という展開になるのか。
とにかく、物語の内容は
・青い血液の遺体
・呪いのビデオを見て自殺未遂
・呪いによる人体発火の連続殺人
など、かなりエッジがきいてて、普通に興味をそそられるものだと思うんだよね。
もちろんオカルトで済ませず、ちゃんと論理的なオチがつけられるし。
「本職のお医者さん」が、こういう荒唐無稽な医療ミステリーを書いちゃうあたりが逆にいいと思った。
だけど個人的には、繰り返すが
「薬屋のひとりごと」>「天久鷹央」

なんです。
というかさ、これは佐倉さんがどうこうという次元の話じゃなく、
もはや、ここ最近の悠木碧はほとんど神の領域じゃないですかね?


