図像論争としてのAIエージェント——「行為するイメージ」の統治をめぐる概念整理
濱中春『図像論争——ゲーテのニュートン批判を再考する』を補助線とした概念整理〔ネット公開版〕
目 次
はじめに——この文章を読むための五つの前提 3
早見表——七つの図法とその責任領域 4
対応表——濱中『図像論争』から本稿への移植. 5
序章 知能の論争ではなく、図像の論争である. 6
第1章 同じ「エージェント」という語、異なる「図」. 7
第2章 ニュートン型とゲーテ型——二つの図像. 8
第3章 半透明なイメージ——エージェントの存在論的両義性. 10
第4章 戯画と風刺——楽観と悲観、二つの単純化. 11
第5章 グリッドの解体——構成図の恣意性と論争の非対称性. 12
第6章 行為するイメージ——図が予算と組織を動かす. 13
第7章 四層の混同と、統治という「ニュートン的支払い」. 15
第8章 手品師の手と職人の手——デモの魔術と運用の工芸. 16
補論 七つの図法とその責任領域. 18
終章 虹をめぐる論争——分割統治としての図法. 19
はじめに——この文章を読むための五つの前提
この文章を貫く見立ては単純である。AIエージェントをめぐるいまの混乱は、知能そのものの優劣をめぐる論争ではなく、知能をどう図示し、どう見せ、どう操作可能にするかをめぐる「図像の論争」だ、というものである。本論に入る前に、読み進めるための五つの前提を置いておく。
前提1|一枚岩ではない
「AIエージェント」は単一の対象ではない。会話・自動化・操作・開発・秘書・組織員・監査対象など、複数の異質な像の総称である。
前提2|同じ語で違う図を売る
各社・各陣営は、同じ「エージェント」という語を用いながら、自らの製品や立場に都合のよい別々の図を流通させている。
前提3|図は行為する
図は現実を説明するだけの中立な絵ではない。どの図を描くかによって、予算・権限・監査・責任という組織の行動が起動される。
前提4|体験と統治は別物
人はエージェントを経験的・現象的に評価する(ゲーテ的)。しかし統治は分解・記録・帰属を要求する(ニュートン的)。この二つは同じではない。
前提5|責任は図法ごとに分ける
混乱を解く鍵は正しい定義探しではなく、図法ごとに責任領域・統制・記録を切り分ける「分割統治」である。
本稿には二つの入口がある。実務でチェックリストが必要な読者は、次頁の「早見表——七つの図法」から入り、必要な図法だけを拾えばよい。理論から入りたい読者は、その後の対応表と序章へ進み、なぜその七つに分かれるのかを追ってほしい。どちらから読んでも、行き着く先は同じ——行為するイメージを、責任ごとに切り分けて統治するための図法である。
