「跨ぐ段差」は徹底して消せ! ~高リスク段差と、その手当て
介護保険で手すりをつけられる、というのはご存知の方も多いと思います。でも、段差をどうにかする工事がどこまでできるか、というのはあまり知られていないのでは?というのが、この仕事を20年以上やってきた自分の感触。
いや、斜めの板(擦り付け板やら敷居スロープなどと呼ばれます)を比較的小さな段差につける工事については、ずいぶん知られているな、とも思うのですよ。自分もこういう記事やら、
最近はこういうのも書いてました。
でも、家の中には結構な段差、それも両側の床はほぼ同じ高さなのに、その部分だけ出っ張った、大きな敷居が出現するところがあります。
ありがちなのは、トイレ。特に扉が内開きのところです。スリッパなどの履物をトイレ側に置いていても、こうすれば扉を開けたときに扉がそれを引きずらなくて済むわけですね。心遣いのデザイン、と言えなくはないのですが、高齢になると、これが辛くなってくるはず。

これ、スロープで処理するには厳しいのです。斜面が長くなると廊下側に飛び出て、通行を支障するし、踏まざるを得なくなるスロープ面も、滑り転倒を誘発しかねないので。
さらに、このタイプの敷居の問題は、段差の高さだけではありません。敷居を踏むにも幅が10㎝程度しかない、つまりちゃんと踏めない。なので、大きく足を延ばして隣の部屋まで跨がなければなりません。言い換えれば、片足になっている時間が長い。
そして手ぶらで跨いだその瞬間、身体の体重を支えるための面【支持基底面】は残った足の裏、一か所のみ。なので、必ず前方に身体は倒れようとする。そんなとき、動きがゆっくりになっているご高齢の方など、戸枠などをもってその倒れこむ力と反対向きの力を無意識に与えている、はずなのです。
でもね、そもそもなんで跨がなきゃならないのかね、と言えば、その敷居があるからで。
本来は、摺り足の方が安全なのです。だって摺り足=常に二本足歩行なのだから。足先が引っかかる環境の方が悪い。
それなら。
敷居、取っちゃえ!
取ればいいんですよ。こんなん。スリッパ?横においておけば何とかなるし、外開きの扉なら問題ないわけですし。
というわけで、先日そういう仕事があったので、ちょっと画像を纏めてみました。DIYでやってやろうというチャレンジャーの方も、住環境整備に関わっているけども、この作業って敷居が高そう、と思っている方も、ご参考にしていただければ。
まず、どうやって敷居を外す?
そりゃまずは切るしかありません。

両側床を養生して、まずは鋸を入れます、あんまり横の竪枠側を切るとあとで痛い目に遭うので、この辺にするのがコツ。片側だけでも作業はやれるはずですが、慎重派の方は両側を。でも、下の方まで鋸の刃は届かないので、あとはこいつを使ったり。

マルチツール。刃を高速振動させて切ったり、場合によっては磨いたりに使います。そのための先端パーツが多種多様。一般にはあまり知られていない感のある道具ですが、改修工事には欠かせません。丸ノコなどではできない細かい作業はこちらが大活躍します。
これで、鋸で入れた溝を深くしたら、バールのようなもの(バールですが)の出番です。よいしょっと。

ありゃ、ちゃんと下まで切れてませんでしたね。でもとりあえずこれで良し。魚を捌くかのように、粛々と解体していきます。

敷居の下には合板の床がありましたね。これ、枠組壁(2×4)工法なら必ず床合板が出てきますが、在来木造だと床の組み方がてんでバラバラだったりする。つまり、開けたら空洞になっていることもあります。その時は何とか下地を組んで、あたらしい平坦な敷居を据えたりするのですね。
なのでこの仕事、この場面でどうにでも対応できるように、材料を多めに持っていくことになるのでした。
さて仕事に戻りましょう。面倒なところを片付けます。

そう。戸枠の敷居、だいたいが縦枠勝ちに組んでます。なので、敷居を取ると、裏から打ち込んであった釘がコンニチワするのです。先ほどの鋸を入れる場所の選定、この釘の長さを考えてやらないと、ガリガリと鉄を削ってしまい、鋸をさっそくご臨終にしてしまう羽目になるのでした。
これを先ほどのマルチツールで切ります。あの刃、金属対応のものもあるのです。超便利。

こうやって釘を取ったところで、床の工事に入ります。
敷居のあったところに、床をつくる
今回の現場は、トイレ側が古いクッションフロア、廊下側がじゅうたん。取った敷居の部分には、トイレと同じ高さにクッションフロアを貼る予定。
トイレ側は、このタイミングで床のCFを張り替えてもいいですね。そうすると敷居のあったところと連続した、お掃除もしやすい、すっきりした見た目にの床になります。
敷居の下に下地があるので、その高さ調整からですね。各種の厚さを持ってきてあった、ベニヤ板を貼っていきます。

カクシ釘も、一般にはあまり知られていないかもしれませんね。これ、最後に釘頭を飛ばすときの快楽が、密かな仕事の楽しみです。お試しあれ。
そしてCFボンドを塗って、クッションフロアを貼って。めくれそうなところは仮クギで固定。しっかり打つと跡が残るので要注意です。

仕上げ工事、もろもろ
でも、これらの両サイドの床仕上げ、端を切りっぱなしにすると捲れあがって、摺り足のつま先に引っかかります。なので押さえなきゃいけません。
じゅうたん側は通称への字金物、トイレのCF側は今回はアルミのフラットバーを。
その前に、側方の枠もサンドペーパーを掛けて、大きさを調整した木を足して戸当たりを延長して、既存の枠とざっくり色合わせをしたペイントを塗っておきます。

あ、扉も延長しなくては、なのです。扉の下の隙間も、実は事故の元。
そんなこんなで、できあがり。

これで摺り足、どんとこいです。
なお、敷居跡に一発で蓋ができる、便利な金物もあるのですが、今回はじゅうたん側の納まりが読めなかったので、こういう仕上げにしております。
敷居、太くすればいいじゃない?!
ちょっとイレギュラーなケースもご紹介。物干しのある、2階のバルコニーへの出入りの際、その敷居跨ぎが難しくなった利用者さん。手すりをつけてみたはいいのですが、何か足りない。

あ、敷居がちゃんと踏めればいいのか。
というわけで、幅の狭い踏み台をつくって、固定してみます。敷居(下枠)とあわせて、足が載るくらいの幅にしてみたわけです。跨がない段差にする、というアプローチ。

手すりを持って、いったん踏み台+敷居(下枠)に乗って、出たり入ったり。
これなら、脚が上がっている時間を短く出来ますね。段差の大きさにもよりますが、変化球な改修例でした。ちゃんと介護保険課も説得して、保険適用にしましたよ。

介護保険を使うためには、踏み台は固定必須。でも、保険を使わない場合でも、端を踏んだら足を掬われがちなのが踏み台の残念なところ。なので怪しい、と思ったら積極的に固定していきたいところなのでした。お掃除のときはちょっと困りますけどね。
以上、敷居段差に小手先のスロープを使うのでなく、徹底的に踏めるようにしようぜ、の工事でした。こちら段差解消における、ジャイアント馬場的な王道だと思っています。
介護保険で出来る住宅改修の対象でもあります、ご参考まで。
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