④【小野妹子 × 小野小町】 ー「私たち、入れ替わってる!?その名前、間違われすぎ問題」
――ようこそ、黄泉トークラジオへ。
この番組は、時代も国も超えて、歴史に名を残した人物たちが“あの世”で繰り広げる、まさかのトーク番組です。
あの世に来て、やっと話せることもあるんです。
笑いとツッコミを交えながら、歴史の裏話をこっそりお届け。どうぞお聴きください。
さて、今夜のゲストは——
その名から女性と誤解され続けて1400年、遣隋使・小野妹子!
そして、美しすぎる平安の女流歌人・小野小町!
互いに間違えられがちな2人が、ついに黄泉の茶屋で初対面いたします。
さてさていったい、どんなお話が出てくるのでしょうか?
「名前はかわいくても、仕事は命がけ」
妹子:はじめまして。小野妹子です。飛鳥時代に生まれて、推古天皇や聖徳太子に仕えてました。名前のせいでよく女性と間違えられるんですけど、男です、一応。
小町:こんにちは。私は平安時代で女流歌人をやっていた小野小町です。同じ「小野」つながりということでお会いできて嬉しいです。妹子さんが男性なのは、もちろん知ってましたよ。
妹子:それは嬉しいね。急に距離が縮まった気がするよ。小町ちゃんって呼んでもいい?
小町:どうぞどうぞ。じゃあ私は妹子兄さんって呼ばせてもらいますね。
妹子:妹子なのに“兄さん”って、なかなかパンチきいてるな(笑)。気に入ったよ!
小町:今回の対談、“間違えられやすい二人”ってテーマらしいけど、私ほんとによく間違えられるんですよ。「遣隋使として隋に行った人でしょ?」とか。
妹子:それ、完全に俺とごっちゃになってるバターンだね。遣隋使として中国・隋に行ったのはこの俺。「日出づる処の天子が、日没する処の天子に……」って国書を持って行ったんだ。
小町:それ、隋の皇帝を怒らせたっていう、あの有名な手紙ですよね。
妹子:そうそう。相手は煬帝って皇帝だったんだけど、「俺のこと”日没する処の天子”とは失礼にもほどがある!天子を名乗れるのは、中国の皇帝ただひとり、すなわち俺様だけだ。とっととうせろ、この田舎者がっ!」ってブチギレちゃってね(笑)。もし煬帝が暴君だったら、その場で首が飛んでたよ。

小町:うわぁ……ほんと命がけだったんですね。
妹子:マジ冷や汗もの。でもね、実はこれ、聖徳太子の作戦でもあったのよ。日本も中国と対等な国としてやっていきたい、っていう強いメッセージを込めてたんだよね。とはいえ、俺はそんな意図も知らずに送り出されて、さんざんな目にあわされたわけ。ほんと聖徳太子は一見聖人みたいな顔して、なかなかエグいことするよ、あの人……。
小町:こわ~、聖徳太子って、やっぱりただ者じゃなかったのね。いろんな意味で。
妹子:まあね。で、あんまり言いたくないけど……実は俺、隋からの帰国中にやらかしてしまってね……。煬帝からの返書を、途中で無くしちゃってさ……。
小町:ええっ(驚)、それって……とんでもない大事件じゃないですか!?
妹子:そうなんだよ。「盗まれました」って必死に言い訳したけど、あえなく流罪決定。でも、推古天皇が優しく赦してくれて……と思ったら、すぐに「もう一回隋に行ってきてね」って命じられた。それって結局、流罪と変わらないじゃん!って(笑)
小町:ふふ(笑)。でも、きちんとやりとげたんですよね?
妹子:うん。2回目はトラブルなく任務を終えて帰国できたよ。結果的に日本は中国からたくさんの制度や文化を吸収できたんだよね。自分で言うのもなんだけど、隋との強力なパイプを築いて、未来への架け橋になれたって思ってる。隋滅亡後も、唐とも良好な関係が続いたからね。
小町:妹子兄さんたちの働きが、のちの日本の国づくりにつながったのは確かですね。だって平安京も、唐の都・長安をモデルにして作られたんですもの。
「平安の女流歌人が、令和アニメの源流だった件」
妹子:ところで小町ちゃん、和歌の世界でかなりの実力者だったんだよね。六歌仙にも三十六歌仙にも選ばれてたって聞いたけど?
小町:そうなの。ありがたいことにね。特に六歌仙では、女性で選ばれたのは私ひとりだったのよ。ちょっと誇らしく思ってるわ。
妹子:すごいなあ。
小町:さらにさらに私、百人一首にも歌が選ばれてます。それがこの歌、私の代表歌よ。
花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせし間に
妹子:あっ、この歌、聞いたことあるよ。これはどういう歌なの?
小町:この歌はね、花のように美しかった私の姿も、雨に打たれて色あせてしまった——そんなふうに、若さの衰えと世の儚さを重ねて詠んだ歌なのよ。
妹子:ほほ~、まさに「小町、絶世の美女」説を裏付ける歌だね。
小町:ご想像にお任せしますわ、ふふ(笑)じゃあ、調子に乗ってもう一首、紹介しようかしら?
妹子:それはいいね、ぜひ、聞かせて!
小町:
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
妹子:すごくロマンチックな雰囲気……どんな意味なの?
小町:恋しい人を想いながら眠ったら夢に出てきた。でも、それが夢とわかっていたら目覚めたくなかった——そんな切なさを詠んだの。なんとこの歌、映画『君の名は。』のモチーフのひとつになったって、新海誠監督が話してたわ。なんだかロマンチックなつながりでしょ?

妹子:すごいな、平安の歌が令和のヒット映画に!?
小町:ふふ(笑)、私、時代、軽く越えちゃってます。
妹子::そういえば小町ちゃんって、当時どういう立場だったの?歌人ってフリーランスみたいな感じ?
小町:私は、宮仕えしてましたのよ。平安の宮廷では、和歌のセンスが知性や教養の証だったんです。恋愛だって、直接会えないから、和歌で気持ちを伝えるしかなかったの。
妹子:へえ……つまり、下手な歌を詠んだら恋も出世もダメってことか。
小町:その通り。恋の駆け引きも、宮廷での評価も、和歌ひとつで変わるのよ。平安のプレイボーイこと在原業平だって、六歌仙に選ばれるほどの和歌の名手だったし。
妹子:歌の腕前がモテ度にも直結してたんだなあ。俺なんて歌ひとつじゃ誰の心も動かせそうにないよ(笑)
小町:表には出ないけど必死に努力しましたよ、私。勉強も実践も重ねて、ようやく認められたという感じです。
妹子: 小町ちゃん、思ってた以上に、情熱持ってやってたんだね。
小町: 努力しないと、ただの勘違い美女で終わっちゃいますから(笑)
妹子:その努力があったからこそ、小町ちゃんの歌は時代を超えて残ってるんだよ。
「ふたりの名前は時代を超える」
妹子:それにしても、小町ちゃんの名前って、今でもあちこちで見かけるよね。新幹線「こまち」、ブランド米の「あきたこまち」、野球場の「こまちスタジアム」まであるんだから、うらやましいなあ。
小町:私、野球なんてしたことないんですけどね(笑)
妹子:それからこれ、前から思ってたんだけど、小町ちゃんって「世界三大美女」のひとりって言われてるじゃない?クレオパトラ、楊貴妃、そして小町ちゃん!世界と肩を並べるなんて、ちょっとすごすぎるよね。っていうか、いつの間に世界デビューしてたの?
小町:ふふふ、それね、実は明治時代に日本人が考えた“自作三大美女”なの(笑)。「日本にも世界に誇れる美女がいるんだぞ!」ってアピールしたかったんでしょうね。だから、この三大美女って、たぶん、日本でしか通用しないと思う(笑)
妹子:なるほど、当時の国家PRってやつか。
小町:でもね、インパクトっていう点では妹子兄さんも負けてませんよね。1400年も経ってるのに、今でもしっかりネタにされ続けてるんだから。
妹子:ほんとだよ。同じ時代にいた蘇我馬子とかは特にネタにされないのに、なんで俺だけ毎回いじられるんだろう……。
小町:そのインパクトがむしろ武器なんですよ。こうして今でも皆に覚えてもらえてるんですから。
妹子:まあ、そう考えるとありがたい話かもしれないね(笑)
小町:たとえ間違えられても、覚えてもらえてるなら、それで十分よ。
妹子:俺は女じゃないし、小町ちゃんは遣隋使でもない——今日の話で、ちゃんと伝わったよね。
小町:これでもう「入れ替わってる!?」って間違われないといいんだけど(笑)
妹子:でも、また学校のテストで間違える子、出てくる気がするなあ(笑)
(ふたり、笑いながらお茶をすする)
――おわり。
今夜の黄泉トークラジオ、いかがでしたか?
妹子兄さん、隋からの帰り道で返書を無くしたなんて……実は、今回初めて知りました。どんな気持ちで日本に帰ってきたのか、想像するだけで私もブルーになっちゃいましたよ。
そして、小町ちゃん。やっぱり歴史に名を刻む歌人は本物だと実感しました。千年の時を超えてもその名と歌が愛されるなんて、すごすぎます。
この対談をたくさんの人に読んでもらって、学校のテストでもう誰も”妹子”と”小町”を間違えなくなってくれたら嬉しいですね。
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それでは、次回の黄泉トークラジオも、どうぞお楽しみに。
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