あなたは森山◯太朗?
蝉の大合唱が止まらない。
できれば、「蝉(独唱)」にしてほしい。
1.世の中のワード、最後に“(独唱)”をつけるとだいたいいい感じになる。
そう信じてやまない私は日々、
「今日は森山何太朗にしようかな?」
と考えながら生存(独唱)している。
まず朝。
日の出とともに起こる隣の隣の家のおじ爆発で
森山起太朗。
続きまして、階段降太朗。
喉がカラッカラでさくらも咲かないくらいなので
水飲太朗。
からのピラティス(独唱)。
続きまして、飯作太朗。
家族みんなで森山飯太朗になって、
「いただきます(独唱)」。
独唱が集まって、朝食(合唱)。
noteをひらけば皆さまの生み出した記事太朗で
腹筋割太朗。
そして気づけば何書こうか、迷太朗。
焦太朗は寝落ち(独唱)。
思い返せば平成の春、
オレンジ色の電車の中でYが呟いた。
「いいよね、直太朗…」
直太朗…?
普段、the GazzetEやアリス九號を聴いている彼女。
てっきり、また何か良さげなV系バンドに出会ったのかと思った。
ベーシストを推すことが多いから、
直太朗というベーシストが現れたのだと思った。
しばらく思考停止している私。
だんだん訳がわからなくなってきて、
「直角太朗って誰?」
と謎太朗を生み出す私。
Y「直太朗ね!90°じゃなくて!」
私「ごめん、直太朗だ。」
Y「え、知らない?直太朗!」
私「直太朗は初めて聞いた。」
Y「嘘でしょ?小学生の頃から流行ってんのに?」
私「もしかして…」
♪僕らはきっと待ってる 君とまた会える日々を
Y「それそれ!直太朗の“独唱”!」
私「森山直太朗さんの“さくら(独唱)”!」
車内発送「電車内での通話、独唱はおやめください。」
この日、この瞬間から日常生活で“森山◯太朗”になるかを意識するようになった。
ほんの少し、心が楽太朗。
しかしだ。
いつもいつでも上手くいくなんて保証はどこにもないのが世の常。
悪口(独唱)、師長構文(独唱)は独唱にして工事現場級の爆音だ。
↑
師長構文:「言いたいこと between 私は忙しい and 私は忙しい」
そうでなくても音が集まりすぎると雑音に変わる。
結局、独唱が集まり過ぎて不協和音大合唱大会と化しているのが世の中である。
2.世の中の嫌なこと、直前に“ショートコント”と叫ぶといい感じになる。
看護実習の朝はお葬式だ。
こぞって暗い顔をしてうつむいている。
控え室に続々と入ってくる学生は皆各々、
約30分後の自分の未来を偲んでいる。
すすり泣く者、オヤジが敵対する組織に射殺された時の下っぱのような泣き方をする者、色々通り越して菩薩顔負けの微笑みをたたえている者…
そんな中、私は精進落としの鮭おにぎりを飲み込んでから叫んだ。
ショートコント、実習
空気が止まった。
スタープラチナか何かか。
【スタープラチナ】
空条承太郎のスタンド。
近距離パワー型と呼ばれるタイプのスタンドの原型。
「スタープラチナの卓越したスピードが『光を越える』または『時を越える』と世界はその動きを止め、時間が止まる」という。
程なくしてお葬式会場は、ルミネtheよしもとに変わっていた。
ピン芸人がこぞって
「ショートコント、実習!」
と叫んでいる。
そして、旅立ち刻。
表情は明るく、足取りも軽い。
私が向かうは泣く子も黙る脳外。
実習で回る順番が最初だろうが最後だろうが、
“ラスボス”と呼ばれるあの脳外だ。
病院屈指のハードパンチャーナースのみが所属できる最強にして最恐の病棟。
私「お仕事中失礼します!本日より2週間、学生5名、実習に入らせていただきます!ご指導よろしくお願いします!」
看護師一同「…(ガン無視)」
これが、看護実習名物
“挨拶(独唱)”である。
実習が始まれば、こうだ。
指導看護師「それはもう“ごめんなさい”だよね。」
私「ごめんなさい。」
指導看護師「これはもう“やりました”。」
私「やりました。」
指導看護師「ドレナージ」
私「ドレナージ」
これも看護実習名物、
“会話(輪唱)”である。
うまくすれば、「かえるのうた」のようになるかと思って、
少しくい気味に看護師の会話に言葉をかぶせてみたら
当然、向こうは激怒太朗。
私は即座に陳謝太朗。
ナースのうたが きこえてくるよ
ケモ ケモ ケモ ケモ
カカカカカカカカ カンファ
【ケモ】
chemotherapy(化学療法)の慣用略語。
でも、全てはショートコントなのだから。
観客が笑ってくれれば、それでいい。
ショートコントはTPOをわきまえない。
冷蔵庫、野菜室の中にもやってくる。
ショートコント、もやし死亡
野菜室の右奥、様子がおかしい。
私は恐る恐る手を伸ばす。
ドロドロに溶けているもやし。
「午後5時37分、ご臨終です。」
死亡確認をする。
合掌。
もやし「泣くな、俺の屍を超えてゆけ。」
もやし もやし 今、溶け堕ちる
刹那に散りゆく運命と知って
さらばもやし 旅立ちの刻
変わらないその感謝を 今
さよならもやし、また逢う日まで。
クソデカ範囲で言えば、
ショートコント、人生。
つまり、赤ちゃんの第一啼泣にふりがなを振るとすれば…
【第一啼泣】
胎内における臍帯での呼吸から、薄汚れた大人と同じ肺呼吸に変化する悲しみの際の泣きのこと。
一般的に「オギャー」と表記される泣きのこと。
周りの人間を感動の渦に巻き込む力を持つことが多い。
「オギャー!」
である。
3.四面楚歌
【四面楚歌】
敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。
周囲の者が反対者ばかりであること。
蝉の音で看護実習名物“挨拶(独唱)”を思い出す。
そこに音は存在していた。
でも聴こえていないも同然のその音。
聴いているようで聴いていない蝉の音。
あれじゃあもう蝉だって
「ジジッジジジジジジッミィィィィ↑ンミンミンミンミンミ↓ィィィィン↑」
である。
しかし、あれはメスへの愛の唄。
一番聴いてほしい相手には届かなくて、
「お前じゃねえよ」
な相手に届いた挙句、うるさい扱いだ。
「滅びろ」なんて言ってくる輩までいる。
↑
「滅びろ」と言わないだけでなく
“蝉の墓”を作り、葬りたがる蝉専属納棺師・天野の話。
蝉の愛の唄(独唱)。
そう、蝉だって独唱が集まった結果の大音量である。
みんな自分の「ショートコント、人生」の中で
生活(独唱)している。
生活(独唱)がたまたま和音を奏でた時、
友だち(合唱)だの、同志(斉唱)だの、恋人(ユニゾン)だのと呼ぶようになる。
親子(輪唱)はいつの間にか子が先を歌うようになるし、
恋人(ユニゾン)が不協和音を奏でて離れることもある。
尻に敷かれがちな夫×気が強め妻な夫婦を見ると、
夫婦(二部合唱):ソプラノ×バス
尻に敷かれていると見せかけてばっちり底を固めている夫と、
表舞台を華麗に立ち回る妻という構造が美しく、
音でもないのに聴き惚れてしまう。
言っていることが臭太朗である。
今日のあなたは森山◯太朗?
冒頭の“おじ爆発”に引っかかって、
はあ?(独唱)の方へ。
【参考資料】
◽︎NATIONAL GEOGRAPHIC
光をコントロールすれば時間は止まる?
◽︎ナース専科
看護用語集
◽︎夢ナビ
産科医は「命の長距離走」をゴールへと導く伴走者
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