ゲスの極みアラサー
やっぱりみなさんは活字ヤクザなのか?
こちとら、活字カタギだ。
それとも活字ジャンキーか?
それならこちらは活字ヘルシー。
メイちゃん「あなた、活字中毒っていうのね!」
否、活字無毒である。
無読!
私と「読書の秋」とはずいぶんと遠くに位置している。
どの程度遠いかといえば、
地球からエアレンデルほどである。
今現在、エアレンデルは二百八十億光年離れた場所にある。
【エアレンデル】(WHL0137-LS)
くじら座の恒星。
既知の恒星の中では最も遠く、最も初期の恒星。
少なくとも太陽の50倍の質量を持ち、100万倍以上明るい。
2022年にハッブル宇宙望遠鏡により発見される。
共動距離280億光年である。
エアレンデルとは、
「明けの明星」または「昇りくる光」を意味する古英語。
どうだ!
遠いだろう!
だが、聞いて驚け。
俺はついにやったぞ!
文庫本を一冊、端から端まで読んだぞ。
カバーイラストを描いた人の紹介の名前の前にある「・」の数が十二個ってところから、
裏表紙の
「定価:本体740円+税」ってとこまで。
これで「読書の秋」と俺との距離は地球と海王星くらいまでは縮まったんじゃないか?
読んだのは、原田ひ香さん『その復讐、お預かりします』(双葉文庫)である。
散々活字に逃げ回られてきたワシ。
このISBN978-4-575-52816-9ときたらまんまと捕まりおった。
全く逃げる素振りがございませんでした。
そして、我が脳みそ監獄に置いても模範囚です。
ことの発端は、去る十月九日。
「ドン・キホーテ」をバックれたい我が母に呼び出され実家に馳せ参じたところこんなことがあった。
「あんたが何を言っても本を読まない人間だということは重々承知で申し上げるが、原田ひ香さんの『その復讐、お預かりします』はマジで面白いから読んだ方がいい。」
とチケットの引換券と共に本を渡されたのだ。
アラウンドサーティにもなって、母親から
「本読め」の圧をかけられるとは。
いやはやお恥ずかしい限り。
夏休みの読書感想文の時もほぼ同じようなことを言われておりましたよ。
ノスタルジーに浸って……浸れるわけあるかい!
とりあえず、チケットと本を携え
庭に生えていた青紫蘇を十本ほど無断で拝借し帰路へつく。
熟成期間を経て、火曜日の夜中に読んだ。
「寝食」の「寝」を忘れて読んだ。
「食」のほうは覚えていた。
↑
丑三つ時にマスカット食べた。
そうしましたらですね。
おそらく人生初、“ちゃんと本文読んで書く”読書感想文、スタートです。
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原田ひ香『その復讐、お預かりします』(双葉文庫)
全五章
本編P.7〜310(合計303ページ)
解説P.312〜318(合計6ページ)by奥田亜希子氏
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※盛大なネタバレはしないように配慮するが、純粋無垢、明鏡止水に読み始めたい方は本記事はエアレンデルまですっ飛ばしてくれ。
二ページ目で既に、我が脳内では
野呂佳代氏と岡田将生氏が初夏の美しい晴れた日の昼下がりの公園でロケを始めておった。
シャーベットブルーのスーツ姿の野呂さんは大口を開けて巨大コッペパンにかじりつく。
あんことマーガリンか挟まった“ゲスなパン”である。
そこではイキったDKどもが慣れねェ煙草に火をつけてギャーギャーピーピーしている。
やさぐれ主人公、野呂さん演じる神部美菜代はがんとして巨大コッペから手を離さず一一〇に通報するのであった。
傍には夢の詰まったコンビニ袋。
そして取り出す二つ目の夢……否、ゲスなパン二号コロッケが挟まったパン。
そこに現れたるは、ライトグレーのスーツに身を包みし岡田将生氏である。
満を持しての彼の初台詞は
「九百キロカロリー」
である。
コロッケパンのカロリーについての言及が初台詞ってのはインパクトがすごいぞ。
その後も“ゲスなパン”のカロリー当てクイズに勤しむ岡田氏。
否、もう一人の主人公、成海慶介である。
ぴったりと体に合った高級そうなスーツ、柔らかそうな髪、大きな目、輝く白い歯。
それが彼の容姿だそうだ。
そんな彼曰く第三のゲスなパンは、
“たっぷりの砂糖衣がかかっ”ていて五百五十キロカロリー超らしい。
メロンパンだろうか。
そんなカロリー当てクイズプロは「復讐屋」ってのを営んでいて、成海はそこの所長である。
所員は、いない。
成海のみ。
成海、オンリー。
成海オンリーワン。
開幕三ページで、既に胃もたれ必至。
ゲスいよ、ゲス過ぎるよ……!
オエオエしながら読み進めていくと、
神部美菜代と言う人物が
「ただの失業し、恋人にも裏切られたアラサー女」
であることが判明した。
一方で彼女の声は、
アメリカ大手保険会社のCEOから「百万ドルの価値がある」と称され、
与党の大物政治家には「声を聞くだけで寿命が伸びる」と言わしめるほどに美しいということもわかった。
すげェな、佳代……じゃなかった美菜代。
そんな美菜代、全財産八十万円の女は晴れてこの復讐屋の秘書となる。
勝手に。
なし崩し的に。
でもな、前職も秘書なんだぜ、やり手だぞ!
即戦力だよ。
ビズリーチに登録したらひくて数多だよ!
もう、全てを失ったアラサー女の勢いってのは止まらんのだ。
二十七歳、美菜代!
突っ走れ!
もう胃もズシンと沈み込んだ頃、第二章に突入すると開幕早々また口に突っ込まれるのだ。
ギトギトに油の浮いた飛び切りのゲスなパンが。
コーンとマヨネーズのパン。
しかし、人生というのは思い通りにいかぬもので、封を切った途端に依頼人が扉を開けるもんだから机の引き出しに突っ込む。
「匂い、ばれてないかな」のスリルがたまらんのだ。
(どこに興奮してんだよ俺)
このパン、推定ローソンの「コーンマヨネーズパン」だと踏んだ。
【コーンマヨネーズパン】
ローソン標準価格:192円(税込)
ふんわりとした生地に、コーンの甘味が楽しめるコーンマヨネーズパン!
熱量:338kcal
たんぱく質:6.5g
脂質:16.3g
炭水化物:43.0g
──糖質:39.4g
──食物繊維:3.6g
食塩相当量:1.4g
ここで、物語のキーワード
「復讐するは我にあり」
が登場。
岡田氏がドヤ顔で……否、成海がドヤ顔で言うには
「(中略)神である自分が復讐するんだからお前たち人間は復讐しなくていいんだよ、っていう意味」(P.50L5)ということである。
【復讐するは我にあり】
愛する人たち。
自分で復讐してはいけません。
神の怒りに任せなさい。
それは、こう書いてあるからです。
「復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする。」
ゲスなパンに油断していると、聖書出てくるからな。
ローマ人でなくても身につまされる思いだ。
これを大義名分にあんまり仕事しない(ように見える)成海にゴウゴウと怒りの炎を燃やす美菜代……
その炎で俺まで焼かれちまった!
まさに、成海と俺のミックスグリルである。
なんだかこう、煮え切らんっちゅうのに
成海の“一番嫌いなこと”が三つもあって、美菜代が
「一番嫌いなことが、ずいぶんたくさんあるんですね」と悪態をつく。
ちなみに美菜代は二つ目の時点で悪態をついた。
【成海が一番嫌いなことリスト】
1.老いぼれたサルに冷たい人間
2.みすぼらしい服の女と歩くこと
3.若い美人を権力で釣るじじい
とにもかくにも登場人物がイキイキと動きに動いている。
ここまででもセレブの結婚騒動とかオーケストラの内乱とか、平々凡々な我が身には到底関係のない世界が描かれとりましたが……
いやあ、すっかりセレブになっちまったし、今ならコントラバスをボンボン鳴らせそうです。
ゲスなパン食ってももたれそうにないので、今からコンビニとスーパーハシゴするでござる!
え……?
もしやこれ読書感想文ではない……??
やはり、小学生の頃想定と背表紙を褒めることしかしてこなかったから……ゲフンゲフンッ
でもまあせっかくだから、聞いてくれ。
この後、
グッドスティックなる、なめらかなミルククリームをはさんだ夢のようなパンが出てくる。
これ、きっとヤマザキの“ナイススティック”がモデルなんだろうが……
なんと、二〇二五年七月にヤマザキがやりおった。
\グッドなパンが新登場‼️ /
— 山崎製パン@商品情報発信中 (@yamazakipan_cp) January 9, 2025
ちぎって食べられる、しっとりもっちりとしたロールパン #グッドスティック👍
スティック状の長〜い形が特徴です😀
グッドスティックでGoodな1日をお過ごしくださいね❤️ pic.twitter.com/dAbya5f5yw
こりゃあ、逆輸入的現象ですな!
胸が熱い。
……胸焼けか?
カロリーによる胸焼けか?
そして、正体不明の三つのゲスなパン(購入後、五時半までの間に食い尽くされたとしか書かれていない)と、
“ハンバーグが挟まった惣菜パン、決してハンバーガーではない”が登場。
……これのせいで後に登場するハンガーにコートをかけるシーンが
「ハンバーガーにコートをかけるシーン」として脳内で再生される俺。
フッホ!!!と変な声出た。
すみません。
また何か、食べていることに気づかれてはいけぬ何かの予感かと思っちまいました。
失礼。
ゲスなパンのラストを華々しく飾ったのは、
コンビニで買ったソーセージパンである。
それも、
「マヨネーズをたっぷり絞ってオーブンで焼き直した」やつ。
岡田将生氏の呆れ顔がはっきりと浮かんだぞ!
「ゲスい。いつにも増してゲスい。」
本当にそうさな。
そんなこんなで、あっという間に読んじまった。
で、あまりにも気に入ったから
「借りパクしたろ」とゲスな考えが浮かんだのだが、そんなことをして母が復讐屋に依頼なんかかけたが最後。
ただでさえ詰んでいる我が人生が完全に終わっちまうからな、返してきた。
(で、行きつけの本屋に発注した)
そんで、帰り道にスーパーがあるからゲスなパンコーナー見てきた。
ゲス過ぎて、「ゲスの極みアラサー」、声も出ませんでした。
半額シールへのトキメキと、浮き上がる油のキラメキとで心は踊……らねェわ!
怖ェ!
ただでさえここのところ勇猛果敢に「食」に挑み過ぎておかしくなってる胃がこれ以上のゲスを受け入れるキャパなど持ち合わせているわけがなかろう!
“胃もたれ小説”、と称したい。
というのも、「内容で胃もたれ」ではなく登場するパンでの胃もたれである。
そうだな、これは……
深夜にこっそり読むか、昼休みにゲスなパンをもっさもっさと食べながら読むにふさわしい本だ。
いずれにせよ、『その復讐、お預かりします』を読んだことにより
俺は、“無読”の称号を失った。
うむ。
活字カタギでもなくなった。
今日からは、活字半グレを名乗ろうと思う。
よろしくな!
活字ヤクザの皆さまは、これ以上俺が悪事……ではなく活字沼に踏み入れないように見張っておいてくれ。
頼んだぞ。
その後、駅付近に用があり出来心でゲスなパンをレジに運んでいた。
しかも、白昼堂々、有人レジでコーンマヨネーズパンを買った。
聞かれてもないのに
「ふっ袋は入りませぬ……!」
とコミュ障の侍みたいになりつつ、買った。
買って食った。
公園に、煙草吸ってイキってるDKがいれば完璧だったが実際にいたのは柴犬と、天を仰ぐ翁のみでした。
胃がどうなったか……?
それは、『その復讐、お預かりします』本編をご参照ください。
※そこには載ってねェ!!
↑
「食」vs俺の戦闘記録と、小泉八雲を冒涜する話。
【参考資料】
◽︎CNN
史上最も遠い恒星を観測、今は地球から280億光年の距離
◽︎AstroArts
観測史上最遠、129億光年離れた単独の星からの光を検出
◽︎LAWSON
コーンマヨネーズパン
◽︎お茶の水クリスチャンセンター
ローマ人への手紙12章19節
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お・ぬ・し