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リミッター・ブレイク/吉穂みらい【創作大賞感想文】

文学フリマには、4回行ったことがある。

直近は先月東京で開催されたもので、欲しかった本の購入、友人たちとの交流、刊行した書籍のサイン会と、信じられないくらい賑やかに過ごして来た。緊張しながらやっとの思いで訪れたブースはふたつだけ & 購入したら力尽きたから早々に帰宅した、という初回の自分が知ったら卒倒するだろうと思う。

文学フリマはわたしにとって「書く」という営みの先の風景を見せてくれるイベントだ。書いたあとのtodoを見せてくれるというよりかは、そんなtodoなんて必要ないのだということを見せてくれる、という方が近いかもしれない。

創作はなんだかんだで喜びである。そして創作は最初から最後まで自由のもとにある。目的もテンションも媒体もさまざまに、ものすごい数の人々が参加する文学フリマに行くたびに、わたしはそんな風景を見せてもらっている。

< 創作大賞2025 お仕事小説部門 >

『リミッター・ブレイク』は、「書くこと」をめぐる女性たちの群像劇だ。

登場するのは、
●小説家志望の50代女性
●その女性の原稿を読み続けてきた若き編集者
●その上司である編集長
●そのママ友であるBL作家
●そのBL作家と同じママ友グループに所属する、SNS「memo」にハマる主婦
の5名。

物語は小説家志望の江崎実咲えざきみさきが、「あなたの原稿はもう読まない」と編集長より最後通牒つうちょうを食らうところから幕を開けるのですが。小説を書いた経験のある方は、どうか気をつけて読み進めていただきたい。彼女と属性(性別・年齢)が一致せずとも、どこか身に覚えのある「創作の手癖」に対する痛烈な表現の数々に、

容赦なくタコ殴りにされて息の根止まりかけるから。

「よく書けてる、と思います。ですが全体的に癖を感じる、というのが率直な感想です。文体や出てくる事象、表現などに、言い方は悪いですが年齢が出てしまっている、と言いますか。個性になりきれていないな、と」
(略)
「自分の好き嫌いではなく、時代に即したもの、読者の求めるものを書かないと」
(略)
小説の体は成している。プロットもしっかりしている。文章もそれなりに整っているし、角が取れた平易な言い回しで読みやすく、彼女らしい文体の個性も見え隠れする。ただ、テーマとキャラクターがステロタイプだった。
(略)
正直、読んでいてどこに感情移入したらいいかわからない。

すみません、いったん救心飲んできていいですか(動悸)

創作の限界、仕事の限界、人間関係の限界、承認欲求の限界、介護の限界。

リレー形式で視点人物が入れ替わる本作では、さまざまな限界と向き合う女性たちの日常や内省が、さりげなさを装いながら「登場人物たちの目・・・・・・・・」を通して冷静に的確に書き出されていく。レイヤーを重ねて1枚の絵を描くように、断片的に語られる「限界」が少しずつ熱や質量を帯びていき、生々しさを伴いながら読み手の心に迫ってくる感じが堪らない。

「仕事がなかったら私、輝けないの?」
「実は、私、さ……ライターなの」
「うん。そうだね。嫌だね」

作中に登場するこれらの台詞には、彼女たちの体を内側からパンパンにしている、抑圧と葛藤と焦燥がこれでもかと詰め込まれている。しかし、この台詞を放つ彼女たちの口調は例外なく、穏やかで淡々としている。微笑んでいる人すらいそうな勢いだ。

注意:本作はホラーではなくお仕事部門でエントリーされている小説です

限界とはなんだろうか。
それ以上は進めない壁や淵に行き着いたり、何かの天井あるいは底に体やら心やらを押しつけられて息もできなくなることだろうか。
だから身を守るために、来た道を引き返したり、押し付けてくるものを排他したりしたくなるんだろうか。

本作では、「限界とは自分の中で作り上げたリミッター」であり「解除可能なもの」として語られる。

力技だけが限界を超える方法ではないと教えてくれる物語のラスト、それぞれの理由で訪れた文学フリマで、それぞれの制限から解放された5人の登場人物たちの表情は、きっと明るかったのではないかと想像する。

できる人は特別な人なんだって、思い込んでいました。それも自分で作った限界、でしたね。

こんな大人になりたい

「新しい世界だ」というのは、作中の中山志満なかやましまの台詞だ。

初めて文学フリマを訪れたときに、わたしも同じことを思った。自分はずっとこんな世界に来てみたかったんだと思ったし、こんな世界があるならもう大丈夫だと思えた。その日の夜、寝る前に文学フリマで買った本を開いたら、それだけで文字が読めないくらい涙が出てきた。

あれもきっと、リミッター・ブレイクのひとつだった。本作を読み終わった今はそんなふうに思う。



【6.15追記】
こちらのnoteのご紹介記事を、みらいさんが書いてくださいました✨本記事を上回るボリュームで。笑 本当にありがとうございます…!

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