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不器用でいい。不器用がいい。《イルボッカローネ修行時代その2》

こんにちは。chef+(シェフプラス)の米澤文雄です。

前の記事から、僕の最初の修業時代の話をスタートさせていますが、今日はホールで「キッチン待ち」をしながら、不器用にがむしゃらに取り組んできたことと、今だからわかる、あの経験の大切さについて、書いてみようと思います。

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全てからがむしゃらに学びを得ていた

前の記事でも詳しく書いた通り、僕が高校を卒業して、頼み込んで働かせもらった最初のお店、恵比寿の老舗イタリアン、イルボッカローネ。

ここでは、仕事に関することだけでなく、社会人の基本とか、大人になること学びの姿勢についてもかなり厳しく叩き込まれました。たとえ業務時間外だったとしても。

中でも記憶に残っているのは、休憩中に賄いの食べ方を怒られたこと。

僕、洋食はお皿を持って食べちゃダメだって知らなかったんです。

僕の祖母や両親は、食べ方の礼儀作用についてはかなり厳しかったので、礼儀正しく食べるつもりで、お皿を持ち上げてパスタを食べてたんです。

それを思いっきり叱られました。
「お前、食べ方もわかんねーのかよ!」と…… 

よく考えてみれば、僕の家では和食が基本。
和食と洋食ではテーブルマナーが違うことを、この時初めて学びました。

今でも覚えているくらいだから、相当キツく怒られたんでしょうね。笑


他にも、出来なかったことには何度でもトライしました。それがたとえ、別に自分がやらなくて良い仕事でも。

中でも一番苦心したのがワインの抜栓。

当時僕はワインの抜栓が下手くそでした。コルクを崩してしまったり、泡が吹き出してしまったり……。

ワインの抜栓はワインの第一印象を左右するんです。途中で手間取ったりするとやはりスマートに見えない。同じワインでも抜栓が下手だと価値を下げてしまう。

当時、僕の技術ではお客様の前では抜栓をさせてもらえませんでした。

先輩方が上手だったし「キッチン待ち」で臨時でホールにいる僕がそこまでできなくても良かったんですが、悔しかった僕は、頼み込んで、グラスワイン用のボトルの抜栓は毎日僕の仕事にしてもらいました。

お陰様で、お客様の前でも抜栓を任せてもらえるように。

その時の名残で、僕は、今でもサービスマンに負けないくらいのワインの抜栓をお見せできます。

そして、今は僕の拠点NoCode含めて、カウンター式のお店で接客しながら料理を出すことが多いので、抜栓のスキルがとても役に立っています。 (ご来店予定の皆さん、頃合いを見て、noteを見たと声を掛けてください。披露しますよ!笑)


仕事に対する感覚

さてここまで読んで「業務時間外でも怒られたり、やらなくていい仕事まで引き受けたりして、大変そう……」なんて思った人もいるかもしれません。

正直、厨房の中で料理だけをやり続けるなら、その感覚でもいいかもしれません。ですが、自分でお店を持ちたいとか、自分の名前で仕事をしていきたいというならやっぱり話は別かなと。

料理に関して言えば、極論「つくりたい」と思えば誰でもできるようになる。そして料理が「できる」のは、料理人として当たり前。

特に今はAIがどんどん存在感を増してきていて、レシピ通りの調理なんかはもうAIと機械の組み合わせの方が得意なんじゃないかな?と思うレベル。

「業務」や「作業」は結局、誰にでもできるし、取って代わられます。

そんな状況の中で「シェフのお店を予約したい」と言ってもらえるようになるには、受け身の仕事の仕方では絶対無理だと、振り返ってみても思います。

仕事を仕事だと思わなかった「不器用さ」

思い返せば、修業時代から僕は「仕事=やらなきゃいけないこと」だと思っていませんでした。オンとかオフとかないんです。

確かに辛いことはあったけど、それはプライベートでも一緒。感覚としては、プライベートを仕事で侵食されているのではなく、仕事を心から楽しんでやっている感じ。

僕はこれを、過去の様々なインタビューで「不器用さ」とも話してきました。もっと器用だったら、上手に切り替えたり、手抜いちゃったりして、こんながむしゃらになれなかった気がします。

でも、たとえ人より器用だったとしても、自分のキャパシティを超えたところで、いかに自分の至らなさと向き合ってきたかが大切だと思っていて、これは僕がスタッフにもいつも伝えていること。

そしてがむしゃらになると、自分一人で気づけることは限られてくる。だからこそ、他人から指摘を受けたら、素直に受け止めること。これがまた器用だったりすると、プライドが邪魔したりして、難しかったりするみたい。

こうやって振り返ってみると、不器用さが今の僕をつくってるんだなあ、って思います。

今の働き方のベースにも繋がっている

そんな僕は今、厨房に立つだけじゃなく、地域づくりや社会課題への取り組み、チームビルディングの研修、マネジメント講座、さらには障がいのある子どもたちへの支援活動まで、かなり幅広く仕事させてもらっています。

どれも、目の前の仕事に不器用にがむしゃらに、そして真摯に取り組んでいたら、お声がけいただいていただいたご縁です。

正直「料理人」とか「シェフ」と呼ばれるのにちょっと違和感を覚えることも増えてきて、最近は食を通して、新しい価値創造をしていきたいという想いから“chef+(シェフプラス)”という肩書きで自己紹介しています。(chef+については、またどこかで詳しく書いてみようと思います)

お陰様で国内外問わず移動がとても多い!例えばこの5月のある週なんかは、メキシコに滞在したのち一度日本に帰国してお店の営業、すぐに上海に飛んで帰国して営業、その後長野県の山奥の白馬村へ……。写真はメキシコ帰り兼上海帰りで白馬の山奥にいる僕。笑

軽井沢のMANO (@mano_karuizawa)の西本くんに白馬の山を案内してもらった!その土地に実際足を運ぶのって本当に大切だと思う!

各地での出来事をこまめにinstagramで発信もしているので、お客様から「いつ休んでいるんですか?」と言われるのですが、先述の通り、オンもオフも、すべて仕事ですべて遊び。これが僕の人生そのもの。

もちろん、誰でもこの感覚でいれるとは思っていません。でも、自分の仕事にモヤモヤを感じている人がいたら、とにかく目の前の出来そうなことに、不器用にがむしゃらになれるまで、すなわち一生懸命になれるまで、真剣に挑戦してみることをおすすめします。

この年になって、改めて思うこと

ワインはデキャンタすると味が変わることを教えてくれた古屋剛さん。怒られもしたし、怒られてばかりの僕の愚痴もたくさん聞いてくれた。

そんな僕のところには、やはり将来自分でお店を持ちたいと思っているスタッフもたくさん来ますので、賄いの時間でも必要あればしっかり叱りますし、不器用であることの大切さを伝えています。

加えて、人を指導する立場になった今思うことは、僕も先輩達にそうしてもらったように、いいことはちゃんと褒めてあげること。

イルボッカローネは肩肘張らないド直球なトラットリアでしたが、あのお店が今も潰れることなく、何年も存続し続けている理由は、店にこんな教育スタイルが浸透しているのも大きいんじゃないかなー、と思います。 だから味もサービスも時代に合わせて維持できるし、お客様にも選ばれ続ける。

僕も、しっかり引き継いでいきたい考え方です。

その熱量あればもっとできるでしょ!と熱くなる夜も

ちなみに、最近は訪れたお店でも、気になることがあればつい一言添えるようになっちゃいました(笑)

今まではあまり言わないようにもしてたんですが、この前は注がれたワインの量が、同席していた人とあまりに違って。

気づいてないのかなー、って思ってたら「僕、米澤シェフのインスタめっちゃ見てます!」って言われて「その熱量でこれかい!」って思っちゃって。笑

でも、本人が今の仕事を続けていきたいと思ってるなら、その場では恨まれても、ゆくゆく、僕の賄いの話みたいに「だからあの時あんな風に言われたのか」と思ってくれる日が来るはずです。(いいサービスマンになって欲しいなー!)


次回は、話を一旦今現在に戻して、僕が創業したお店NoCodeが2025年6月からメキシカンフレンチに業態変更し、スーシェフだったアキノリが料理長に就任します。その経緯や目的について書いてみようと思っています!



▶︎6/18、19に、青山グランドホテル’Rossi’にて、皆様もご存知、石川県小松市「オーベルジュ オーフ」の糸井シェフと、メキシカンインスパイアのコース料理を、破格の11,000円(※ドリンク代別)で楽しめるイベントをご用意しました。

糸井シェフは、史上最年少で国内最大級の料理人コンペティション「RED U-35」を制し、現在は石川県小松市「オーベルジュ オーフ」のシェフとして、国内外のお客様を相手に腕を振るう若手料理人。

今回は僕も糸井シェフも大好きなメキシカンで。僕はつい先日までメキシコに行っていたので、熱量もアイデア満載!新たに生まれ変わるNoCodeのシェフに就任する米澤の一番弟子、アキノリ(久松)も参戦します。

▶︎その他、最新の情報はinstagramで発信していますので、ぜひフォローしてください。

https://www.instagram.com/yone_asakusa/


(arranged by 菅原きこ


#創作大賞2026 #エッセイ部門

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