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クラフトプレスのある暮らしに憧れて。

――noteを始めて3ヶ月。
ひょんなことから、この本とめぐり逢う。

ここだけの話。
「書きたい気持ちはあるけど、noteに何書こうか?」沼にハマり、9月から低空飛行を続けていた。
機体はグラグラのまま、10月初旬を迎えた。

「私も3ヶ月もしないで消えゆく1人か…」

そんなある日、焦りと自分への萎えの中、
目についたのが「#読書の秋2025」。

note#読者の秋2025企画説明記事より引用

どの本を選ぶか悩み、いつもなら調べすぎて迷う。
だから今回は、「考えるより、始める」を優先してみた。
そして、直感で選んだ一冊がこちら。

「本が生まれるいちばん側で(ライツ社)」

選らんだ理由は安直すぎて言いづらいので、こそっと教えるが、昔の相棒だったサッカースパイクの色合いに似てたから。
瞬時に愛着が湧いた。そんな怒られそうなチョイスだったことは受け流してほしい。

その後、2025年10月16日に本が届き、私の#読書の秋2025がスタートした。

私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからである。

アナトール・フランス(フランスの詩人、小説家/1844-1924)



読書好きもそうでない人も、きっと新たな発見がある本。


▢ 本づくりへの情熱を綴った一冊


この本は、藤原印刷の三代目、藤原兄弟のお二人による、本づくりへの熱い想いが綴られた一冊。
藤原印刷が、個人の「自分で本をつくりたい」という想いに応え、伴走し続けてきた15年の軌跡が記されている。

見出しから、すでに静かなる熱量を感じとれる。
熱いのは藤原兄弟のお二人だけではない。この本に関わる方々、全員熱い想いを持っていらっしゃるに違いない。

その裏付けがこれ。まずは見てもらいたいものがあって。

「みなさん、今まで読んだ本で、このように長い奥付を見たことありますか。」

※奥付とは…書物の終わりにある、著者名・発行者(所)名・発行年月日・定価などを印刷した箇所。

私はこんなに長いのは初めて見た。
繋がっている会社や人を大切にしているのがよーくわかる。請負のみの関係ではなく、思いやりを感じる。
この奥付を見て、素人の私から心の声が漏れる。

(心の声)
普通、こんなに書かれてる? たいていは著者と発行者、発行所くらい。奥付なんて今まで意識して見たことなかった。でもこの本は、仕入れ先や取引先までずらり。名を刻んでもらえるのって嬉しいだろうなぁ。まるで映画や結婚式のエンドロール。

奥付にも記載の方々の中でも、この方々を紹介せずにはいられない。

▼この本の発行所| ライツ社さん

2016年創業。海とタコと本のまち「兵庫県明石市」の出版社です。

▼ この本の著者| 藤原印刷さん

1955年創業。豊かさと幸せに挑み続ける 三ガク都 「長野県松本市」の老舗印刷会社です。


▼ この本の聞き手・文| 田中裕子さん

鹿児島県生まれ。現在はライターズカンパニーbatons所属。書籍の執筆やウェブや雑誌のインタビュー記事などを担当している方です。


▢ この本がつくられるきっかけを知る。

まずは本を前に一礼して、本の匂いをかぐ。紙の触り心地を確認。外観を見渡す。五感で本を感じる。
表紙を見るなり、頭の中がごちゃごちゃうるさい。

(心の声)
表紙の蛍光色は目立たせるため? いや、触るとグリップが効いてる。――たぶんこれが「UV薄盛加工」の技術?
ページによって使っている紙の種類が違う。
裏地は手書きの台割表。生まれゆく本たちを描いている。ゴールドのインクあるんだ。背表紙には完成された本。
聞き手は田中裕子さん、「本なのに聞き手」という構成にも唸る。
帯の最後には藤原印刷の兄弟のお二人とbatons所属の田中さんの紹介。戦後、女性タイピストが始めた印刷会社なんだ…。

――こだわりがすごい。ページをめくる前から、ここまで情熱を感じる本。令和も生きててよかった。この熱量、しびれる。

ちょっと待てよ。
ページをめくる前に立ち止まる。
藤原印刷さんのこと、無知な自分。
ゼロベースで、読み進めて良いのか? 素朴な疑問が浮上した。
また、頭の中がごちゃごちゃうるさい。

「よし、この本の生まれたルーツを知ろう。」

…ということで、この本を読む前に、私が読んだ一部の記事をご紹介します。

まずはなんといっても、聞き手の田中さんのこの記事。
「コッテコテ商業出版人」の田中さんだからこその2つの理由で、本書の制作を打診されたときに「やりたい!」と思ったという。

そんな2つのちいさなモヤモヤを抱えていたわたしが引き寄せられるように向かったのが、兄・隆充さんが登壇していた「クラフトプレス(藤原印刷さんが提案する個人の本づくり)」のイベント。そこで偶然はちあわせたのが、ライツ社の編集者・大塚さんだったというわけだ。
「田中さん、藤原印刷さんの本、興味ありませんか?」

「え、あります」

2023年3月10日、金曜夜のあの即答が、この本の芽が出た瞬間だったと思う。印刷会社から見た本づくりは本好きな方々にとっても「へえ!」なはずだし……この本づくりをとおして自分の仕事の見方も変わるかも、そんな個人的な期待とともに。

田中さんのnoteより引用

2023年3月10日、金曜夜に
「ライツ社の大塚さんが田中さんに声をかけていなかったら…」
「田中さんが、引き受けてなかったら…」
「そもそも、藤原印刷さんがクラフトプレスの活動をしていなかったら…」
たらればではありますが、もしもを思うと、この本が生まれるストーリーにロマンを感じます。

そして、2年半の歳月をかけて一冊の本が出来上がる。その間にも、紆余曲折があったんだろうなと思うと感慨深い。


▢ ライツ社の大塚さんと髙野さんを知る。

前章のとおり、この本のきっかけはライツ社の大塚さんの一声で始まった。

(心の声)
「大塚さんという方はフランクな方なのかな~?」

そこで、ライツ社の大塚さんの人柄を知りたくなった。

前提として、「ニッチをメジャーに」というのが大切だと思っていると、大塚さんはいう。
どことなく、内田篤人似の風貌で笑顔の似合うフランクなイメージの中に、信念のある方だなぁと勝手に認知した。

「write」「right」「light」。

書く力で、まっすぐに、照らす。
本とは、凍りついたこころを解(と)かす光です。
それは、人が悩みもがくときに導いてくれる明かりかもしれないし、新しいアイデアが浮かぶ瞬間のひらめきかもしれない。その胸の中に生まれる小さな火かもしれないし、温かい木漏れ日や友達の笑い声のようなものなのかもしれない。
そう考えています。

ライツ社HPより引用

ライツ社を語るには大塚さんと髙野さんという最強のツートップがいることがわかった。お互いに依存ではなく、認め合い、補完し合い、本をつくるのに必要なことをそれぞれの持ち場立場で追求しているのがわかる。
東京発信が当たり前の業界で、地方から全国へ挑む。売れ筋を追うのではなく、自分たちにしかつくれない“本”だけを選ぶ。
ライツ社の本が心に残る理由は、この二人の熱が、ページのすみずみまで沁みこんでいるからなんだと腑に落ちた。


▢ 藤原印刷の藤原兄弟を知る。

そして、藤原印刷も兄弟というツートップの布陣を組んでいる。この本の著者である藤原印刷のお二人。

一代で起業した女性(祖母)の志を受け継ぎ、その思いを日々の仕事に重ねている藤原兄弟。
“出版不況”と言われる中、印刷業をクリエイティブ領域と掛け合わせて、「印刷=心刷」と再定義している。
そして、兄弟という関係性を単なる家族経営ではなく「互いの強みを活かすパートナーシップ」のような関係性を構築している。
「つくる人を応援する」「表現を支える」という視点が、ビジネスというより、人としての温度を感じさせる。


記事を少し見ただけでも、ライツ社も藤原印刷も親和性が高い。
それは「本で誰かを救いたい」「好きなものを好きな人たちとつくりたい」というパーソナルな想い。
根っこに“誰かのために”という動機があるから、熱が伝わる。人のぬくもりがそこにはある。


 あらためて、再評価と共創の時代なんだなとしみじみ思う。


▢ 「ZINE」と「クラフトプレス」とは?

最近、少部数の自主制作冊子である「ZINE(ジン)」がじわじわと注目を集めている。例えば、経済産業省の報じるところでは、書店においてZINEの存在感が高まっているという。

▼経済産業省の記事

▼ZINEフェスの記事

ZINEとは、雑誌(magazine)から派生した言葉で、個人や仲間たちが自ら編集・発行する手作りの小冊子を指すらしい。いわば「好きなことを、好きなカタチで残す」媒体。

その魅力は、

○ 出版社を介さず、自分の世界を紙の上で表現できる自由さ。
◯ 編集や印刷・製本の環境が手軽になり、少部数でも制作できるようになったこと。

そして、こうしたZINEの潮流の中で、中心にいるのが、藤原印刷さん。「ZINEの聖地」と呼ばれている。

「ZINE」のイメージをなんとなくつかんできたところで、この小冊子がつくられるきっかけである「クラフトプレス」とはなんぞやという疑問が湧いてくる。


クラフトプレスとは、個人やスモールチームが「つくるよろこび」を感じられる、個性と情熱の本づくり。

具体的に、印刷会社 藤原印刷 がこの動きを牽引しており、個人出版の市場が10年前比で300倍以上に成長したらしいです。

ZINEという「自分発·少部数」出版の流れが拡大するなかで、クラフトプレスはその本をつくるプロセスも大事にしている。
つくり方も、届け方にも縛りがない本作り。
セオリーがないから自由に、世界で一つだけの本が創れる。

▢ クラフトプレスに憧れる。

「自分の本を作り、大切な人へ想いを届けたい。今、やりたいことはこれかも。」

“自分にも出来るかもしれない”って思えると、人はワクワクする。そんな、ちょっとした勇気をくれる一冊と出逢えた。

郷に入っては郷に従えという言葉があるように、それぞれの業界には、古くからの慣習や縛りも根強く残っているはず。出版業界も少なからずある中で、何か新しいことをする、変化をおこすというのは、けっこうなエネルギーもカロリーもいる。
そのような中、本をつくるというハードルのしきい値をすんごく下げてくれている藤原印刷さんの懐深さに、男として「かっけぇ。」を贈りたい。

自分でも、本が作れるのかな。
なんて弱気になるけど、とある記事を思い出す。

人は最近のことを振り返るときは
「行ったこと」をより強く後悔しがち。

ただ、人生を長い目で振り返るとき
「行わなかったこと」をより強く後悔する。

と何かの記事で読んだことがある。

そして行わなかった後悔は、
自分が死ぬ間際では解消できないものばかりだと。

「やり残し」の後悔は、人生において大きい。
なんせ会いたい人に会っておくには、
自分が移動できるだけ健康であること、
なおかつ相手が生きていることが大前提になってしまうから。

そして、記憶というのも日に日にあいまいになっていく。

そのため、“今”そして“今の気持ち”を本にしてみるという選択肢があるなら、やらないともったいない気がしてきた。

キャンプも、農業体験も、陶芸づくりも、なんでも自分でつくっていくことに面白さがある。いつか、趣味はクラフトプレスですという人が当たり前になっていく、そんな近い未来を楽しみにしている。


▢ 何歳になっても、真実を追い求めてしまう。

いつの時代も変わらない普遍的なものを知りたい。
それを知れるヒントが詰まっているのは本だと思う。

持論になるけども、人の悩みの総量はいつの時代も変わっていないように思える。
悩みの種が変わっているだけで、これだけ考えられる脳と、言葉というコミュニケーションがあるかぎり、これからも悩みは尽きないんだろうなと。
アナログ人間もデジタル人間も共存していくためには悩みは必要で。どちらが正しいとかでなく、どちらも正しい中に共存していくことが大切だから。

何かあって、悩んだら本を読み、誰が何を考え、何を思っていたのか知りたいから本を読む。

そして、自分を知りたいから本を書く、伝えたいから本を書く。書くことで気づくこともあるかもしれない。
その本で、身近な人のタメになるんだったら、この上ない喜びにも変わる。

そのお手伝いを藤原印刷さんがやってくれる。
なんて、心強いんだと思った。

良書を初めて読むときは、新しい友を得たようである。
前に精読した書物を読みなおす時は、旧友に会うのと似ている。

オリヴァー・ゴールドスミス(イギリスの詩人、小説家/1728-1774)

▢ やってしまいました…。

あ、やっちゃってました。
気づいたら5,000文字超えている。
まだ本の中身にも入ってませんが、そろそろ筆を置こうって満足気になっている。
──もはやこれは、読者感想文ではなく「本の裏側に迷い込んだ人の日記」で恐縮です。

でもね、どうしても伝えたかったんです。
この本の裏側。

そして、この本は、「本が好きな人」や「つくってみたい人」だけじゃなくて、
人生にちょっとつまずいた人、
一度立ち止まって、心にしおりを挟みたい人、
そして、誰かに何かを伝えたいと思っている人──
そんな人たちにこそ、ぜひ読んでほしい。

▼ 読んだ方々の感想が全てを物語っていますよ。 


結局、言いたいことはこれだけなんです。

「読んでみて。」

それで、もう十分なような気がします。

……とはいえ、誰だよお前って話ですよね。
わかります。私も人生再起の途中の人です。

でも、今、あなたの中にほんの少しでも“読んでみたいかも”が残っていたなら、
そのときだけは、私のこの長文を許してやってください。


▼ この本の「はじめに」が全文読めますよ。
 ぜひ、試し読みを。


#読書の秋2025 に寄せて

この本に出逢ってから、気づいたことがある。
それは、“noteを書く”ということもまた、小さな出版行為なんだということ。
誰かに読まれるためじゃなく、自分の生きた証を残す選択として書くのもあり。
そう考えると、筆が自然と軽くなる。

ブランクを経て、もう一度書けたのは、
この本が「書くことの意味」を教えてくれたから。
だから私は、これからもゆるく書き続けようと思う。
“クラフトプレスのある暮らし”に、少しずつ近づくように。


▢ おわりに

本が生まれるいちばん側には、
数えきれないほどの“想いとストーリー”が重なっている。
本ができるまでを知ってからというもの、
どんな本にも「ありがとう」と言いたくなった。

――そして、書き手としての私の中にも、
たしかに一本の「クラフトプレス」への想いが通いはじめた気がする。



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よろずさん。|繊細無職の生存戦略 「チップは洋の文化、心付けは和の文化。どちらも深々と感謝します。特に心付けの場合は、感謝の傘を差し上げます。」