SoFi:ステーブルコインで狙う経済圏 - Amazon・ウォルマートの思惑と規制の壁
先日、Amazonやウォルマートが独自のステーブルコインの発行を検討中という報道があり、VisaやMastercardの株価が下落した。Amazonやウォルマートはなぜ独自のステーブルコインの発行を目指すのか、今回はその解説である。
・参考資料
SoFiがVisa・Masterを揺さぶる日 ―ステーブルコインがもたらす決済の進化【前編】
【補論】SoFiが切り拓く「ポストVisa・Master」の世界に迫る ― ステーブルコイン決済
<独自のステーブルコインを発行するメリット>
1.決済手数料の削減
クレジットカードでは、取引ごとに数%の手数料が発生する。米国内だけで、数十兆円規模の取引量を抱えるAmazonやウォルマートにとって、独自ステーブルコインの発行により、年間数千億円単位のコスト削減効果が見込める。
2. 即時入金・キャッシュフローの改善
クレジットカード決済では、入金は通常数日後。独自ステーブルコインの利用により、即時決済・即時着金が可能。
3. 顧客データの完全な把握
クレジットカード決済では、取引データの一部はクレジットカード会社経由での入手となる。独自ステーブルコインの利用により、誰が・いつ・何を買ったかという情報を完全に自社内で把握できる。このデータを用いて、個人に最適化された広告や在庫の適正化などが可能となる。
4. 自社経済圏の強化
独自ステーブルコインにポイント還元プログラムを実施。会員の囲い込みを通じた経済圏の強化が可能。(例:Amazonコインで払えば3%還元)
こうした独自ステーブルコインの導入は、既存クレジットカードの決済ネットワークを不要とするため、VisaやMastercardの株価が下落したと見られる。
<独自ステーブルコインの発行に対する根強い警戒感>
では、Amazonやウォルマートが独自ステーブルコインを発行可能かと言うと、容易に政府当局が承認するとは思えない。
「GENIUS Act」において、Payment Stablecoinの発行主体は「連邦政府公認の銀行」または「登録済みの非銀エンティティ(銀行ではないものの米国の規制当局に登録された企業や組織)」に限定された。
よって、登録済みの非銀エンティティとしての条件を満たせば、理論上は、Amazonやウォルマートもステーブルコインの発行が可能になる。しかし、現実的には高いハードルが存在するだろう。
古くは、2019年のFacebook(現Meta)によるステーブルコイン構想「Libra」が思い出される。これは、「民間の巨大企業が通貨のようなものを発行する」ことへの強い懸念から、規制当局の反発を受け、最終的に頓挫した。その警戒感は根強く、ビジネスの過度な集中による反トラスト(独占禁止法)への違反の疑いも生じることから、容易に承認が通らないはずだ。
Amazonを含む巨大IT企業(いわゆるBig Tech)は、ただでさえ、各国の規制当局から反トラスト法(独占禁止法)に関する係争や調査を継続的に受けている。よって、独自ステーブルコインの発行という新たな刺激は、最終的には自重するのではないだろうか。
そこで取り得る手段が、SoFiなどの既存の金融機関との提携だ。具体的には、既存ステーブルコイン発行業者と提携し、「Amazonコイン」といったブランドで提供するという方法が考えられる。
こうすることで、Amazonやウォルマートは、表面上はステーブルコインを提供し、ステーブルコイン発行の多くのメリットを享受しつつ、自らはリスクを取らないという形が取れる。
SoFiのBaaS(Banking-as-a-Service)が、Amazonやウォルマートといった巨大小売業者のステーブルコイン構想に乗ったビジネス展開ができるかは、現時点では不明である。しかし、新たなビジネスチャンスが、次から次へと出てくることは期待できる。そして、その延長線上に、SoFiにとっての新たな収益源の創出という可能性も見えてくる。
【免責事項】 本ブログは情報提供を目的とし、特定の金融商品や投資手法を推奨するものではありません。内容は執筆時点の情報に基づき、将来的に変更される可能性があります。投資判断は自己責任で行い、十分な調査のうえ決定してください。本ブログの内容を基にした投資損失について、当方は一切の責任を負いません。また、外部リンクや第三者情報の正確性も保証するものではなく、各自の判断でご利用ください。

