唯一の「優子」|#なまえ百景
沢山の利用者がいる「マッチングアプリ」。
その言葉を聞くと、大学時代に知り合ったある女の子との想い出がよみがえる。
大学生当時流行っていたのが「出会い系サイト」。
もう20年以上経っているので利用していたサイト名は覚えていない。
いかにも怪しげで犯罪にまで発展したことがあるものによく手を出したなと、当時の自分が愚かに思える。
そんな怪しいものに手を染めて複数の女の子と出会った中で、一人だけ社会人になってからも繋がりが続いた子がいた。
「優子」
歳はたしか2つか3つ下だったと思うが、相性が良かったのか、出逢った当初から何でも話せて、プリクラを撮って手紙と一緒に送り合ったこともあるし、年賀状のやりとりもしていた。
自分がある恋に破れ、酷く落ち込んでいたとき、たくさん話し相手になってもくれた。いつも自分の味方をしてくれていた。
ある時、何を血迷ったのか、たしかこういった内容のメールをした記憶がある。
「付き合ってほしいと言ったらどう思う?」
優子からはすぐに真っ当な返信が来た。
「遠距離は無理だよ、寂しくなっちゃうから」
苦労の末、公務員試験に合格し、その報告をしたらとても喜んでくれた。
そこで勇気を振り絞ってこんな提案をした。
「今度、会いに行ってもいいかな?」
その年の年末、優子が住んでいる仙台を訪れた。
緊張しながら指定された待ち合わせ場所で待っていると、優子がひょっこりと現れた。
プリクラのイメージからは茶髪でイケイケな感じの子だとばかり思っていたが、目の前に現れたのは素朴であどけない顔の小柄な女の子だった。
「何かプリクラと違うね」
優子からの一言をネガティブに受け止め軽いショックを受けたが、落ち込んだ自分のことなどお構いなしに、着いたその日は牛タンのお店へ食べに行ったり、カフェチェーンで語り合ったりして、翌日は優子が車で観光案内をしてくれた。
東京へ帰る際も湿っぽいところがなく、友人が東京へ戻るようなノリであっさりとした別れだった。
「また仙台に遊びに来てね!」
それから月日が流れ、お互いに結婚したあたりから徐々に疎遠になり、自分に長女が誕生して以降、パッタリと連絡が途絶えた。
数年ぶりに優子のLINEアカウントを確認した。
LINEの交換なんていつしたんだろう。記憶にない。
優子のアカウントの画像は、以前見たときから変わっていなかった。
アカウント自体は生きているようだが、元気にやっているかどうかは、分からない。
昔のようにさっぱりした関係で、楽しいことも辛いこともいろいろと話がしたい。でも、もうそんな昔のような関係は戻ってこない。
歴史に「もし」がないように、優子との関係にも「もし」は存在しないけど、
もし、東京で出逢っていたなら。
もし、今のような便利な世の中で出逢っていたなら。
何気ない日常の中で「優子」という名前に触れるたびに、ふとそんなことを考えてしまう自分が空しくなる。
仙台の「優子」が、自分にとって唯一の「優子」。
薄々感じてはいるが、この「優子」とはもう再会できないだろう。
でも、せめてもう一度だけ。
もう一度だけ逢う機会があれば、こう伝えたい。
「東京にいたら間違いなく優子のこと、好きになっていたよ」
この記事は、大塚ぐみさん企画【#なまえ百景】飛び入り参加です。
素敵な企画をありがとうございます!
企画の詳細は、以下の記事をご覧ください。
今日は台風でジメジメした空気を浴びながらどんよりした気持ちになっていましたが、いつも素敵な記事や作品を書かれている凪砂いるさんの記事を読んでこの企画を知りました。
この企画を知った瞬間、今回のことが頭をよぎり、記憶の彼方にあった彼女のことを断片的ですが思い出しながら書きました。
LINEはまだ繋がっているようですが、今さら連絡しづらいのでどうしているか分かりません。彼女が幸せに暮らしていることを願っています。
ジメジメした湿気のせいか、何だかセンチメンタルな気持ちになり、内容もとても湿ったものになってしまいました(普段はこんな感じではないのです🙄)。
公募作品創作に本腰入れないといけないのですが、企画が気になって今回も寄り道を💦…この記事で一区切りにします!
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
