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笑って百人一首001 天智天皇 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ

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この句を一言で言うと:「秋の田んぼの仮小屋、屋根がガバガバすぎて袖が露でびしょびしょなんですけど」という、風流と生活苦が同居した百人一首のトップバッターである。



百人一首、開幕から雨漏り


🤖鈴木:今日のテーマは、百人一首の1番です。


🎃佐藤:いきなり王道ですね。


🤖鈴木:はい。「秋の田の かりほの庵の 苫を荒み わがころも手は 露に濡れつつ」。


🎃佐藤:有名な歌ですね。


🤖鈴木:有名です。でも意味を雑に言うと、だいぶ切ないです。


🎃佐藤:どういう意味ですか。


🤖鈴木:秋の田んぼの横にある仮小屋。その屋根がスカスカなので、私の袖が露で濡れ続けています。


🎃佐藤:急に欠陥住宅ですね。


🤖鈴木:そうです。百人一首、開幕から雨漏りです。


🎃佐藤:雨ではないですけどね。


🤖鈴木:露漏りです。


🎃佐藤:嫌な新語を作らないでください。


🤖鈴木:物件情報に書くなら、「自然豊かな田園ビュー。夜露直撃。袖、終わります」。


🎃佐藤:内見で帰ります。


🤖鈴木:しかもこの歌を詠んだとされるのが、天智天皇です。


🎃佐藤:第38代天皇ですね。


🤖鈴木:そうです。歴史の教科書で中大兄皇子として出てくる、超重要人物です。


🎃佐藤:大化の改新の人ですね。


🤖鈴木:はい。政治の大物です。現代で言うと、国家レベルの役員会議に出てる人です。


🎃佐藤:だいぶ偉い。


🤖鈴木:その人の歌として百人一首の1番に置かれているのが、「袖が濡れてます」。


🎃佐藤:急に庶民的ですね。


🤖鈴木:もう少し威厳ある感じで始まってもいいじゃないですか。


🎃佐藤:たとえば?


🤖鈴木:「我、天を統べる者なり」みたいな。


🎃佐藤:ラスボスですね。


🤖鈴木:でも実際は「屋根、薄くない?」です。


🎃佐藤:生活の苦情。


🤖鈴木:百人一首のトップバッターが、管理会社への問い合わせフォームみたいになってる。


🎃佐藤:「夜露が室内に侵入します。至急ご対応ください」。


🤖鈴木:件名は「苫の件」ですね。


🎃佐藤:地味。


秋の田んぼは、米を守る現場だった


🤖鈴木:まず「秋の田の」。


🎃佐藤:秋の田んぼ。


🤖鈴木:はい。稲が実っている時期の田んぼです。


🎃佐藤:収穫の季節ですね。


🤖鈴木:つまり米です。日本人の胃袋の本丸。


🎃佐藤:急に胃袋の軍事拠点にしないでください。


🤖鈴木:米は大事ですからね。昔なら田んぼは、財布であり、冷蔵庫であり、命のストックです。


🎃佐藤:だから見張る必要があった。


🤖鈴木:そうです。動物に荒らされたり、盗まれたりしないように、田んぼの近くで番をする。


🎃佐藤:今でいう防犯カメラですね。


🤖鈴木:人間防犯カメラです。


🎃佐藤:つらい。


🤖鈴木:しかも屋外対応なのに、防水性能がない。


🎃佐藤:欠陥モデル。


🤖鈴木:夜の田んぼに配置された人間防犯カメラが、露でじわじわ濡れていく歌です。


🎃佐藤:言い方がホラーですね。


仮小屋の屋根が仕事をしていない


🤖鈴木:次に「かりほの庵」。


🎃佐藤:これは何ですか。


🤖鈴木:「かりほ」は仮小屋のことです。


🎃佐藤:田んぼのそばにある簡易的な小屋。


🤖鈴木:そうです。現代の快適な小屋を想像しちゃダメです。


🎃佐藤:エアコンとかない。


🤖鈴木:ないです。Wi-Fiもない。コンセントもない。ウォシュレットなんて言ったら時空が裂けます。


🎃佐藤:そこまで求めてないです。


🤖鈴木:秋の夜、田んぼの横の仮小屋でじっとしている。


🎃佐藤:寒そうですね。


🤖鈴木:寒いです。しかも屋根が粗い。


🎃佐藤:「苫を荒み」ですね。


🤖鈴木:そうです。「苫」は、草や植物で作った屋根のような覆いです。


🎃佐藤:今の屋根材とは違うんですね。


🤖鈴木:はい。スゲやカヤみたいな草でふいた、素朴な屋根です。


🎃佐藤:その目が粗い。


🤖鈴木:つまり、屋根が仕事をサボっている。


🎃佐藤:屋根にも勤務態度があるんですか。


🤖鈴木:あります。優秀な屋根は水を通さない。ダメな屋根は、夜露をフリーパスで入れる。


🎃佐藤:セキュリティが甘い。


🤖鈴木:この苫、露に対して顔パスです。


🎃佐藤:露とズブズブですね。


🤖鈴木:もう癒着です。苫と露の汚職事件です。


🎃佐藤:大げさすぎる。


袖が濡れるという、小さくて確実な絶望


🤖鈴木:だって、袖が濡れ続けてるんですよ。


🎃佐藤:「わが衣手は露に濡れつつ」ですね。


🤖鈴木:そう。「衣手」は袖です。


🎃佐藤:服の袖。


🤖鈴木:はい。つまり「私の袖が、露で、濡れ続けています」。


🎃佐藤:地味につらい。


🤖鈴木:袖が濡れるのって、人間の不快感ランキングでかなり上位ですからね。


🎃佐藤:靴下が濡れるのも嫌ですけどね。


🤖鈴木:靴下が横綱なら、袖は大関です。


🎃佐藤:相撲でたとえなくていいです。


🤖鈴木:しかも袖って、濡れた瞬間に人間のテンションを奪います。


🎃佐藤:たしかに。


🤖鈴木:食器洗いで袖がちょっと濡れただけで、「今日、もう終わったな」ってなりますから。


🎃佐藤:そこまでではないです。


🤖鈴木:いや、袖濡れは人生の微小な絶望です。


🎃佐藤:微小な絶望。


🤖鈴木:この歌は、その微小な絶望を31音に封じ込めたものなんです。


🎃佐藤:急に文学っぽくなりましたね。


🤖鈴木:でも本当にすごいんですよ。


🎃佐藤:どういうところがですか。


🤖鈴木:たった31音で、秋、田んぼ、仮小屋、粗い屋根、夜露、濡れる袖まで全部見える。


🎃佐藤:映像が浮かびますね。


🤖鈴木:しかも、「濡れつつ」で終わる。


🎃佐藤:進行中の感じがあります。


🤖鈴木:そうです。乾いてないんです。


🎃佐藤:まだ濡れてる。


🤖鈴木:歌が終わっても、袖だけ濡れ続けてる。


🎃佐藤:嫌な余韻。


🤖鈴木:映画で言えば、エンドロールの後にまだ袖から水がしたたってる。


🎃佐藤:ホラー映画じゃないですか。


これはただの寒い日記ではない


🤖鈴木:ただ、ここで大事なのは、この歌が単なる「寒いです日記」ではないということです。


🎃佐藤:違うんですか。


🤖鈴木:違います。田んぼを守る人の大変さに思いを寄せた歌として読めるんです。


🎃佐藤:農民の苦労ですね。


🤖鈴木:そうです。米を守るために、夜、粗末な小屋で過ごす人がいる。


🎃佐藤:今の便利な生活からは想像しにくいですね。


🤖鈴木:今なら「防犯カメラ」「センサーライト」「通知アプリ」で済むかもしれない。


🎃佐藤:昔は人がそこにいた。


🤖鈴木:しかも袖を濡らしながら。


🎃佐藤:かなり現場感があります。


🤖鈴木:現場です。これは秋の田んぼポエムではなく、秋の田んぼ夜勤レポートです。


🎃佐藤:夜勤レポート。


🤖鈴木:勤務内容、田の番。設備、仮小屋。リスク、露。被害、袖。


🎃佐藤:労災っぽい。


🤖鈴木:露災です。


🎃佐藤:また嫌な新語。


天智天皇が本当に袖びしょびしょだったかは別問題


🤖鈴木:ただし、注意点もあります。


🎃佐藤:何でしょう。


🤖鈴木:この歌は百人一首では天智天皇の歌とされていますが、実際に天智天皇が詠んだかどうかは、はっきりしないとされます。


🎃佐藤:そうなんですね。


🤖鈴木:万葉集にある作者不明の歌がもとになっている、という説明もあります。


🎃佐藤:つまり、「天智天皇が本当に田んぼで袖びしょびしょになった」と断言するのは危ない。


🤖鈴木:危ないです。


🎃佐藤:歴史的に。


🤖鈴木:はい。「天智天皇、夜露で袖びしょびしょ確定」と言い切ると、学問の先生に苫でしばかれます。


🎃佐藤:苫でしばけるんですか。


🤖鈴木:粗いから痛くないかもしれません。


🎃佐藤:そこはどうでもいいです。


🤖鈴木:なので正確に言うと、「天智天皇の歌として伝わる一首」です。


🎃佐藤:そこは大事ですね。


🤖鈴木:大事です。ふざけても、事実関係の屋根だけは粗くしちゃダメです。


🎃佐藤:うまい。


🤖鈴木:ありがとうございます。今のは自分でも少し袖が乾きました。


🎃佐藤:何の話ですか。


百人一首の入口が、なぜ田んぼなのか


🤖鈴木:それにしても、百人一首の1番がこの歌なの、めちゃくちゃいいですよね。


🎃佐藤:なぜですか。


🤖鈴木:いきなり恋愛でも、武勇伝でも、権力自慢でもないんです。


🎃佐藤:田んぼと仮小屋。


🤖鈴木:そう。百人一首の入口が、いきなり「暮らし」なんです。


🎃佐藤:たしかに。


🤖鈴木:「俺すごい」「君が好き」「月きれい」ではなく、「袖が濡れた」。


🎃佐藤:地味だけど強い。


🤖鈴木:人間は結局、袖が濡れる生き物なんですよ。


🎃佐藤:急に哲学にしないでください。


🤖鈴木:どんなに偉い人でも、どんなに立派な歴史でも、生活の中では袖が濡れる。


🎃佐藤:まあ、そうですね。


🤖鈴木:会議で偉そうなこと言ってても、トイレの手洗いで袖が濡れた瞬間、人は全員ただの哺乳類です。


🎃佐藤:言い方。


🤖鈴木:だからこの歌には、妙な強さがあるんです。


🎃佐藤:偉い人の歌なのに、生活に近い。


🤖鈴木:そうです。天皇の歌として置かれているのに、見えてくるのは豪華な宮殿じゃない。


🎃佐藤:田んぼの仮小屋。


🤖鈴木:しかも屋根スカスカ。


🎃佐藤:庶民的すぎる。


🤖鈴木:百人一首、最初の画面がいきなり低予算です。


🎃佐藤:言い方。


🤖鈴木:でも、低予算だからこそ心に残る。


🎃佐藤:たしかに。


🤖鈴木:ピカピカの宮殿より、袖の冷たさの方がリアルですからね。


🎃佐藤:読んだ人が体感できる。


🤖鈴木:そうです。これが和歌のすごいところです。


🎃佐藤:短いのに、温度まで伝わる。


🤖鈴木:温度というか、湿度です。


🎃佐藤:湿度。


🤖鈴木:この歌、湿度が高い。


🎃佐藤:梅雨じゃないのに。


🤖鈴木:秋なのに、袖だけ梅雨入りしてる。


🎃佐藤:袖限定の梅雨。


🤖鈴木:気象庁も困りますよ。「関東甲信と衣手が梅雨入りしました」。


🎃佐藤:衣手は地域じゃないです。


まとめ


🤖鈴木:まとめると、この歌は、秋の田んぼの仮小屋で、粗い苫の屋根から露が入って、袖が濡れ続けるという歌です。


🎃佐藤:そして、そこには田んぼを守る人の寒さや苦労も感じられる。


🤖鈴木:さらに、百人一首では天智天皇の歌とされますが、実際の作者については不明な部分もある。


🎃佐藤:風流だけど、生活感がある。


🤖鈴木:そうです。美しい秋の歌でありながら、読後感は「屋根、直せ」です。


🎃佐藤:台無しにしないでください。


🤖鈴木:でも覚えやすいでしょ。


🎃佐藤:まあ、かなり覚えやすいです。


🤖鈴木:「秋の田の」は、つまり「田んぼ夜勤、屋根スカスカ、袖びしょびしょ」。


🎃佐藤:受験生に怒られますよ。


🤖鈴木:でも一発で入る。


🎃佐藤:それは否定できない。


🤖鈴木:百人一首の1番は、天皇のキラキラ自己紹介ではありません。


🎃佐藤:では何ですか。


🤖鈴木:日本文学史上もっとも上品な「袖濡れクレーム」です。


🎃佐藤:上品なのか、クレームなのか。


🤖鈴木:その両方です。


🎃佐藤:なるほど。


🤖鈴木:風流とは、クレームを31音にすると発生するのかもしれません。


🎃佐藤:絶対に違います。



次の一首、持統天皇の「春すぎて」はこちら。

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