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理学療法学生におけるグリットと学業・臨床実習成績の関連

論文の紹介

タイトル

Grit, Resilience, Mindset, and Academic Success in Physical Therapist Students: A Cross-Sectional, Multicenter Study
(理学療法学生におけるグリット・レジリエンス・マインドセットと学業成績の関連:横断的多施設研究)

著者・雑誌・発行年

Marlena Calo, Belinda Judd, Lucy Chipchase, Felicity Blackstock, Casey L. Peiris
Physical Therapy (PTJ: Physical Therapy & Rehabilitation Journal), 2022


論文の概要

本研究は、理学療法学生における非認知特性(グリット・レジリエンス・マインドセット)と学業成績・臨床実習成績との関連を検討した多施設横断研究です。

対象はオーストラリアの4大学に在籍する最終学年理学療法学生266名(参加率80%)。

評価項目は以下の通りです。

・グリット(Grit-S)
・レジリエンス
・マインドセット
・全課程加重平均点
・臨床実習成績
・臨床実習不合格の有無

本研究の特徴は、学業成績だけでなく「臨床実習不合格リスク」まで含めて検討している点にあります。

学生の内訳としては、

・低グリット:19.2%
・低レジリエンス:約25%
・固定型マインドセット:約10〜14%

と、一定数の学生が心理的リスクを抱えていることが示されました。


主な結果

学業成績との関連

グリットは学業成績と有意な正の相関を示しました。

・相関係数:r = 0.24
・回帰分析:β = 0.24
・モデル説明率:R² = 0.43

つまり、グリットが高い学生ほど成績が高い傾向が明確に示されました。

一方で、レジリエンスやマインドセットは独立関連因子とはなりませんでした。

また、

・女性
・精神疾患の有無
・大学院生であること

も成績に影響していました。


臨床実習との関連

臨床成績では、

・グリット:β = 0.15
・理論科目成績:β = 0.34

が有意な関連因子でした。

さらに重要なのは、

低グリット学生は臨床実習不合格リスクが2.03倍(95%CI 1.06–3.89)

であった点です。

これは単なる「性格傾向」ではなく、教育成果に直接関連する実践的指標であることを示しています。

加えて、

・LGBTIQ+学生:5.29倍
・男性:3.12倍
・障害あり:2.51倍
・精神疾患あり:2.05倍

と、社会的・心理的背景が臨床実習に強く影響している点も明らかになりました。


全体像として重要なポイント

本研究の本質は以下の点に集約されます。

グリットは学業と臨床の両方との関連因子である
・低グリット学生は不合格リスクが高い
・レジリエンスやマインドセットは単独では関連因子にならない
・非認知特性は相互に関連している

特に興味深いのは、

高グリット学生は高レジリエンスである確率が4倍
成長型マインドセットである確率が1.38倍

という点です。

つまり、グリットは単体の概念というより、複数の心理特性のハブ的存在とも言える可能性があります。

結論

本研究は、

グリットが理学療法学生の学業成功と臨床成功の双方と関連する

ことを示しました。

同時に、

・低グリット学生は一定割合存在する
・社会的マイノリティ学生は臨床実習で不利な状況にある
・非認知特性の育成や支援の必要性

といった教育的課題も浮き彫りにしました。

グリットは「性格」ではなく、教育介入のターゲットになり得る資質である可能性が示唆されます。


面白かった点

個人的に印象に残ったのは、

慣れない環境の中でも継続してやり切る力が、実習成績に明確に関連していた点です。

臨床実習は、知識だけでは乗り越えられない場面の連続です。

新しい環境、人間関係、評価への緊張感の中で、
「まずは続ける」という姿勢が求められます。

本研究では、その“続ける力”に近いグリットが、実際に不合格リスクと関連していました。

また、
レジリエンスよりもグリットの方が強く関連していたという結果も気になりました。

逆境から立ち直る力以上に、粘り強くやり抜く姿勢が重要である可能性が示唆されました。

改めて、まずは続けることの大切さを感じさせられる研究でした。


教育・マネジメントへの示唆

本研究から考えさせられたのは、
グリットを単なる「性格」として捉えてよいのかという点です。

固定的な特性として扱うのではなく、
成長の過程の中で変化し得る力としてどう支えるかが重要なのではないかと感じました。

また、
支援のあり方として大切なのは、「もっと頑張れ」と背中を押すことではなく、
学生が積み重ねてきた努力や成長のプロセスを丁寧にフィードバックしていくことだと思います。

実習の中で小さな成功や試行錯誤を可視化し、
それを言語化して返していくこと。
その積み重ねが、結果として“やり切る力”を育てるのではないでしょうか。

教育やマネジメントの役割は、
評価することだけでなく、成長の軌跡を共に確認することにあると改めて感じました。

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