パートナーマーケティングの時代だからこそ”人”がやるべき2つのこと
こんにちは。パートナープロップの浅井と申します。
パートナープロップでは、経営企画にはじまり、マーケティング部門とCS部門を統括しています。お客様のほか、展示会やイベントなどで出会う方々に加えて、自分自身パートナーセールスとして活動する中で、本当に多くのパートナービジネスの現場を見てきました。
我々はパートナービジネスが可視化され、科学され、成果に繋げることを使命としています。実際、PIVOTでも紹介させていただいたfreeeさまのように、大きな成果に繋がった事例も数多く出てきました。(本当はもっと紹介しなければ…!)
一方で、ベンダーの立場だからこそ見えてきたことがあります。それは、「パートナーマーケティング」に入る前に、そもそもパートナーと合意しておくべきことがあるということです。そしてこれは、PRMを入れたとしても代替できない「人がやるべき仕事」だと確信しています。
パートナーマーケティングのノウハウは様々なセミナーなどで詳細に語っています。だからこそ、このnoteでは”あえて”その「パートナーセールス力」について語ろうと思います。
まず、パートナーマーケティングとは何か
パートナーマーケティングとは、一言で言えばパートナーが売りやすい環境を作る仕組みです。
まず一つは、案件の共同管理や情報共有が可能な場所を作ることです。リード数・商談数を共同CRMでマネジメントしていくことで、パートナー視点では案件の優先権確保や営業支援の獲得、ベンダー視点ではKPIマネジメントに繋がります。
そして、もう一つは共同マーケティングを推進していくこと。これは弊社でも様々な取り組みをしています。
①セレブリックス社とのMDF(Market Development Fund)では、共同でインサイドセールスの支援プログラムを展開してきました。狙いと解説はめちゃめちゃ丁寧に言語化いただいた長崎さんの投稿に譲ります
PartnerProp × セレブリックスの事例。 これ、MDF(Marketing Development Funds)の活用として、あまりに理想的で美しい。
— 長﨑卓史|ハウテレビジョン執行役員(東証7064) (@takafumi_ngsk) January 27, 2026
そもそもMDFとは、メーカーが販売パートナーに対して提供する「販促支援資金」のこと。 通常は、単なる「広告費の補填」で終わることが多い。
だが、今回の設計は次元が違う。… https://t.co/DSecfqLs1y
②ワンマーケティング社との共同展示会では、数多くのベンダーを巻き込んだ共同のリード創出を進めました
③その他、多くのパートナー様と各種セミナーの共同開催や、共同広告出稿を行っています。
これらの施策は大きな成果を作っています。しかし、全てのベンダー様がすぐ実施したとしても成果に繋がらないのもまた事実です。
“点”の施策ではなく、目標達成のための施策へ
ここで多くの企業が陥る罠があります。パートナーマーケティングの施策だけとりあえず進めても、それは”点”となる施策になってしまうのです。
ある企業では、数十社のパートナーと、年間で20回以上の共同セミナーを開催していました。しかし、話を聞くとセミナー経由の案件は数件のみ。パートナー側も「とりあえずセミナーをやっている」という状態で、本気で売上を作ろうという姿勢が見られませんでした。
なぜこうなってしまったのか。
それは、セミナーをやること自体が目的化していたからです。直販においても打ち手発想の施策がアンチパターンであると知っているはずなのに、なぜかパートナーセールスではこの発想に至ってしまう。
パートナーセールスという社外を巻き込む役割では、今すぐやれる施策から取り組みたくなってしまいます。(それは私自身、とても分かります…)ただ、そこを一度こらえて、まずは設計から考えていく必要があります。
重要なのは、「この目標のために」「このリードが必要で」「そのために共同マーケティングしましょう」という整理です。「この四半期で○○万円の売上を作るために、どんなリードが何件必要で、そのためにこのセミナーを実施する」という設計を作る必要があります。
この設計があれば、パートナーから見ても「とりあえずやるだけの施策」ではなく、結果を出すための施策になります。結果を出すための施策だからこそ、一度失敗したとしても、改善をして次の施策に繋げる活動が自然と生まれます。
目標から逆算した施策として始まった共同マーケティングだけが成果に繋がる持続的な仕組みになるのです。
パートナーマーケティングの前段で握るべき「2つのこと」
共同マーケティングには、共通の目標から逆算した施策設計が必要。この事実は当たり前であり、聞けばシンプルに聞こえますが、パートナーセールスが長い方であればその難しさもまた理解いただけるところかと思います。
ここでいう共同目標とは、いわゆる「3年で〇億円を目指す」といった分かりやすい旗と、そこに向けたQごとの達成目標を指します。このような定量的な計画を、パートナーの決裁者がしっかりと追うための体制を作る必要があります。
共通の目標は、ベンダーからの一方的な押しつけでは意味がありません。パートナーが心から納得するためには様々な要素を抑えなくてはいけません。
相手のビジネスモデル・キャッシュポイント
当該部門の売上目標の置き方(どの商材まで対象なのか、手数料/売上規模など)
彼らが求める事業規模(どの程度の売上であればインパクトを感じるのか)
そして、これらを抑えた上で、相手の決裁者も現場の方も全員がワクワクするような目標が求められます。
さらに、共同目標だけではなく、その目標がアサインされた担当者も必要です。担当者なき共同目標は必ず形骸化します。持続的な協業を進めるためには決裁者を通じて、窓口の方にその目標を追ってもらう合意をいただく必要があります。
共同目標と担当者のアサイン。パートナーマーケティングを始める前には、この二つの合意に向けて「パートナーセールス」がしっかりと交渉することが必須です。
目標と体制を握るためにパートナーセールスがやるべきこと
大前提として、パートナー様の視点に立つと、メーカーの商材を扱う必然性は何らありません。彼らの視点では、ベンダーと共同目標を持つこと自体が「GIVE」です。
初見の相手からこうしたGIVEを引き出すために4つほどやらなくてはいけないことがあります。
まずメーカーからのGIVEづくり
2日前に投稿されていた名倉のnoteにもありました通り、まずはメーカーからGIVEから始める必要があります。相手へ何かをGIVEすることで、共同目標と担当者という果実をTAKEできる。この関係を頭に入れる必要があります。
名倉が紹介していたGIVEは相当ハイレベルかつ経営意思決定が必要なのですぐには出来ないかもしれません。(とはいえ、効果は高いので気になる方は上記のnoteもご覧ください)
まずカジュアルに始められるGIVEとしては下記などがあります。
・共催セミナーを実施し、自社リードから最低○○人を集客します
・制作費を全てメーカー持ちでパートナー様にLPを提供します
・MDFを○○万円予算として持っています。これを一緒にやりましょう
・相互案件紹介を2件ずつからはじめましょう
“予算か、リードか、案件をGIVEするところからスタートする。これがない状態で取り組むのはいばらの道である。”
この認識を持ってパートナービジネスに取り組むことが必要だと感じています。
GIVEを提案する資料は入念に
GIVEを決めるとそれをパートナーさまに提案しにいくことになります。契約したばかりのパートナーとの初回キックオフや、Qに一回のQBR会議、場合によっては、再キックオフに近い場になることもあると思います。なんらかの場でGIVEの提案を行う場をセットいただいたら、気合を入れてしっかりと資料を準備していくことが必要です。
ここで絶対にやってはいけないことがあります。それは、サービス説明をすることです。
ある成功企業の初回商談資料を見せてもらったことがあります。そこには、自社のサービス説明は1ページもありませんでした。代わりに、以下のような内容が記載されていました。
パートナー企業の事業概要と課題
業界トレンドと市場機会
共同で狙うべきターゲット顧客像
なぜそのターゲットが今回の協業で獲得できるのか(共創ベネフィット)
想定される売上規模とロードマップ
必要なリソースと役割分担
共同マーケティング施策リスト
実際、この企業の担当者は、初回商談前に徹底的にパートナー企業のことを調べています。IR資料、プレスリリース、営業資料、競合分析。そして、「このパートナーとどう組めば、両社にとって最大の価値を生めるか」を考え抜いて商談に臨んでいるそうです。
時間がないのであれば、「貴社の事業内容」「ご提案したい協業の座組」この2つだけでも実施はできます。
とにもかくにも、決してサービス資料を説明してはいけません。
この場で達成すべき読後感は、「パートナー企業と組む座組の魅力」「目標数字とそれを目指せるのだという納得感」「目標達成のためにベンダー側がGIVEしてくれているという感覚」の3つです。
あるパートナーセールスの方は、「パートナーに対して新規事業の提案をする担当者だと考えている」と仰っていました。新規事業として取り組むとパートナーが考えてくれるからこそ、「共同の事業目標」を立ててくれるのです。
組織攻略は入念に
目標が定まっただけではまだ足りません。そして、窓口担当者と繋がっただけで満足してもいけません。
図表のイメージの通り、本当にお客様を抱えているのは、パートナー側の現場営業の方々であり、そこまで自身の接点を拡げていく、まさに”組織攻略”が必要になります。

これを行うためには、下図のようなリファレンスマップを作っていくことが有用です。
いわゆる直販においてアカウントマネージャーが行う営業活動を、パートナーに対して行うイメージです。実際にこの表を埋めていく際には、パートナー企業の方へこんな質問をします。
「○○さんって何をすると出世するんですか?」
「○○部署のトップセールスって誰ですか?」
「A部長とB部長ってどういう関係性ですか?」
こういう細かな情報をパートナーごとに溜めていきながら、部署としての資産に落とし込むことが重要です。リファレンスマップを作成し、組織構造を理解することで、誰にどうアプローチすべきかが見えてきます。

さらに、人間関係の把握も重要です。
ある企業では、「A部長とB部長は過去に同じプロジェクトで成功体験があり、互いに信頼している」という情報を得ました。この情報をもとに、両部長が関わる大型案件を作ることに成功しました。組織の中の「見えない関係性」を理解することで、スムーズな意思決定や大型案件の創出が可能になるのです。
パートナーマーケティングの前に”人がやるべきこと”がある
パートナーとの共同目標と彼ら社内でアサインされた担当者。この前提が整った状態で初めて、PRMやパートナーマーケティングは真の効果を発揮します。
今回このnoteリレーにも参加いただいているCloudbaseのudayanさんは、「この共同目標を握るようになったことで、自然にパートナーマーケティングを実施することができるようになった」と仰っていました。同じような声は多くの企業から聞いています。
逆に言えば、その前提が揃っていない状態では、効果が半減してしまいます。
数字と仕組みで語るパートナーマーケター、そこに実際のパートナーと深い関係を築くパートナーセールスが掛け合わさって、ビジネスは回ります。
施策の前に、人と人との関係性を築く。目標を握る。工数を確保する。この地道なプロセスこそが、持続的なパートナービジネスの成功を支える基盤なのです。
