AI時代、エンジニアの仕事の変化と新たな可能性〜AI駆動開発、内製化、フィジカル〜
エンジニアの業務を変え始めた生成AIの波
昨年から生成AIが本格的にエンジニアの業務を変え始めました。 実際に社内を見ても、プルリク(プルリクエスト)の70〜80%はAIの支援を受けて作られていますし、インフラ部門の権限管理などにもAIが使われるようになりました。
今日は、大きな変化を求められているエンジニアリング、そしてプロダクト開発の仕事が今後どうなっていくのかを書いていきたいと思います。
エンジニアの仕事の変化と「AI Powered Engineer」のニーズ拡大
元々コードを書くことに多くの時間を使っていたエンジニアがAIを活用するようになったことで、設計や、コードを生成するためのプロンプト作成に、より多くの時間を充てるようになりました。また、AIが生成したアウトプットのレビューや、シニア層がジュニア層の作成した「AI活用プルリク」をレビューする時間に追われているケースも増えたのではないでしょうか。
また、コードを書く物理的な時間が減ったことで、エンジニアがユーザーや顧客のニーズを直接ヒアリングする機会を増やしたり、新規事業においてデザインからアルゴリズムの実装、マーケティングまで一気通貫で行うケースも出てきています。役割がますますマルチ化していますが、あまりに多才すぎて脳が疲弊してしまわないかは心配なところです。 (経営者の皆さまは、優秀なエンジニアがYouTubeやXを見ていても、サボっているのではなく「脳を休める時間が必要なのだ」と理解してあげてください。笑)
上記のように、AIをフル活用して開発速度を圧倒的に高めたり、エンジニアリングの周辺領域まで職域を拡大しているエンジニアのニーズは極めて高くなっています。まさに、どの企業も「採用したくてしょうがない」存在と言えます。実際に、AIを使いこなせる層の給与水準は徐々に上がってきています。
AI基盤づくりを中心に大企業の内製化が加速
並行して大企業の内製化が加速しており、エンジニアを採用する会社が増えています。これは単にすべてのシステムを自社で作るということではありません。AI基盤、およびそれを構築するためのデータ基盤作りに関しては、特に「自社でコントロールしたい(手の内に持ちたい)」という意向が、時価総額の大きな企業を中心に強まっています。
単なる効率化であれば、既存のSaaSやカスタマイズ可能なパッケージ、あるいは業務システムの一部をAIで作り直すことで対応可能です。しかし、金融機関や小売りのような、すでに巨大な業務フローが構築されている業界を除けば、それだけでの改善幅は限定的です。
一方で「AI基盤」は、社内のナレッジを従来よりも高度に活用できるため、売上や収益を劇的に改善する可能性を秘めています。例えば、発電プラントを建設している会社が、過去の膨大な契約書を内部でデータベース化し、工事の進捗や損益データと紐付けておけば、次に似たプロジェクトを担当する人にとって極めて有益な資産になります。
つまり「見つかるかどうかわからない社内の人脈」を頼る時代から、確実に見つけ出し、かつ改善策まで提示してくれるAIへと変わっていくわけです。
データ基盤を構築するための仕事も増えている
前述の通り、AI活用の促進とAI基盤への投資が拡大する中で、データを扱うツールのニーズが急上昇しています。
SaaS企業の株価下落がネットや新聞で騒がれていますが、これはある意味でPER20倍近辺という株式市場の適正値への回帰、つまり正常化の過程だと私も考えられます。一方で、データ基盤系やDevOps系のSaaSは、この1年間で大きく時価総額を伸長させました。

データを適切に活用するためのツールであるCloudflareやMongoDBといったサービスの事業成長と株価の伸びは顕著です。当然、これらのデータ基盤系ツールを使いこなせるエンジニアの需要も比例して増えています。
これらを踏まえても、エンジニアの求人倍率は(dodaさんの発表にある通り)昨年の生成AIブームの折に一時的に12倍から10倍程度へと軟化しましたが、現在では下降前を上回る倍率に戻ってきています。
生成AIだけでは上がらなかった開発組織の生産性
生成AIは、エンジニアにとって「あって当たり前」のツールになっていきます。エンジニアに限らず、マーケター、ライター、デザイナーなど、スキルで勝負する職種ほどその必要性は増すでしょう。
一方で、以下のnoteでも触れましたが、残念ながら「導入すれば即座に全エンジニアの生産性が上がる」わけではないことも判明してきました。詳細は記事に記載してありますが、AI活用によってハイスキル層の生産性が50%近く向上している反面、ジュニア層に関しては逆に低下しているケースも見られ、結果として組織全体の生産性が思うように伸び悩む状況が生まれています。
これまでは「実務を通じてプログラミングを学んでいく」のが一般的でしたが、これほど顕著な差が出てしまうと、企業側も育成に余力があるところは踏ん張るものの、それ以外ではどうしても採用基準を厳しくせざるを得ません。
したがって、エンジニア個人としても「AI駆動開発」を含めた自己研鑽を、より一層強化しなければならない時代が到来しています。
フィールドエンジニアの需要が急増する
最近では、データセンターを設置・構築するエンジニアが不足しているという話をよく耳にします。工場のネットワーク構築なども深刻な人手不足だそうです。IoTやドローンの活用が広がる中で、現場(フィールド)でITや機械の知識を駆使できる人材のニーズが高まっています。
フィールドエンジニアとは、販売されたITシステム、産業機器、医療機器などの設置・メンテナンス・トラブルシューティングを顧客の現場で行う技術職を指しますが、これこそが「フィジカルAI時代」における必須職種になっていくと考えています。
以前、アメリカの「ブルーカラー・ビリオネア」に関する記事を読みましたが、その中には会計士から電気工事士に転身して大活躍している方の話がありました。余談ですが、私の父も電力会社出身で、まさに電気工事のエンジニアとしてフィールドエンジニアの役割を担っていました。
私自身もビジネスサイドの出身ですが、三菱重工時代には作業着に安全靴という格好で工場の投資案件を見て回っていたので、ある意味で近い職種かもしれません。ちなみに、現場って本当に楽しいんですよね。
ハードとソフトが融合する新時代へ
かつて「Software is eating the world」という言葉が流行した通り、この40年弱はソフトウェアの独壇場でした。しかし、その時代がいったんの区切りを迎え、これからは「ハードとソフトが高度に融合する時代」になると確信しています。
ソフトウェアが容易に社会実装できるようになったことは、人類全体にとってプラスに作用させるべき変化です。人口減少下でのロボティクス活用や新しい発電の仕組みなど、物理(フィジカル)な世界の革新を次々と起こしていく必要があります。
実際に、中国を訪れた方からは「ロボティクスの進化に伴い組み込みエンジニアの需要が急増している」という話を聞きましたし、私がよく訪れる韓国の展示会でも「ソフトとハードの両方がわかる人材が決定的に不足している」という経営者の話も聞きました。エンジニアにとっても、非常に面白い新しい分野を開拓する時代になりそうです。
以上、いかがでしたでしょうか。
SNSでは「AIでエンジニアの仕事がなくなる」といった悲観的な意見も目にしますが、私は決してそうは思いません。実社会を見渡せば、世の中はプログラミングだけで完結しているわけではありません。むしろ、AIという武器を得てスピードを上げ、より複雑な課題を解けるチャンスが増えたのだと考えれば、最高に楽しい時代の到来と言えるのではないでしょうか。
私自身も精進します。皆さんも一緒にAI時代を生き抜いていきましょう! (いやー、昨日MCPの設定をしましたが、本当に難しかったです😢)
最後に宣伝ですが、なかなかAI駆動開発に仕事で挑戦する機会がない、新しいデータ基盤ツールを使ってみたいという人向けに副業・顧問サービスも開始しました。
