見出し画像

飛び込んだ先に、想像を超えたキャリアが待っている。――新しい仕事に向き合う2つの習慣

新しい仕事に向き合うとき、皆さんはどんな判断基準を持っていますか。

「自分の強みが活かせるか」「キャリアプランに合っているか」「リスクは許容範囲か」。多くのビジネスパーソンが、こうした問いを自分に投げ
かけながら慎重に次の一歩を選んでいると思います。

私のアプローチは少し違います。チャンスをもらったら、まず受ける。依頼が来たら、基本引き受ける。
そうやって20年以上のキャリアを歩んできました。

「それは無計画ではないか」と思われるかもしれません。でも振り返ると、自分が想像できる範囲で設計したキャリアでは、絶対にたどり着けなか
った場所に私は立てていると感じています。


飛び込んできた4つの転機

ベンチャーの世界に飛び込む

私の最初のキャリアは、当時まだベンチャー企業だったインテリジェンス(現パーソルキャリア)でした。

だいぶベンチャーブームの空気感があったとはいえ、まだ大企業への就職が良しとされていた時代に、あえてベンチャーの世界に飛び込みました。がむしゃらに働き、短期間で驚くほど多くの経験を積むことができた。大企業で数年かけて学ぶことを、凝縮された密度の中で一気に吸収した感覚でした。

この経験が、「飛び込んでみれば、想像以上のものが得られる」という原体験になりました。

「リスクだ」と言われたAmazonへの転職

インテリジェンスに入社してわずか11ヶ月。私はAmazon Japanへの転職を決めました。

当時はネットバブルが弾けた直後です。周囲の人たちは心配しました。「Amazonに行くのはリスクなのではないか」と。

でも私は、リスクよりも、世界最高峰のスタートアップで吸収できるものの方がはるかに大きいと考えました。

実際、Amazonでの経験は想像を超えるものでした。データに基づくロジカルなアプローチ、年齢や肩書に関係なく意見が尊重されるフラットな組織
文化、そして英語での日常的なコミュニケーション。日本のベンチャーでは出会えなかった成長環境がそこにはありました。

もし「リスクだから」と踏みとどまっていたら、この景色は見えなかった。自分の想像できる範囲に留まっていたら、ロジカルシンキングもグロー
バルな視点も、今の自分にはなかったかもしれません。

イベントとは無縁だった起業

Amazonで6年間様々な経験を積み、その後、起業しました。

起業から2年後にPeatixを創業したのですが、直前には音楽ライブの音源配信などを手がけていたものの、イベント業界の専門家だったわけではありません。それでも、起業した時から掲げていた「クリエイターを支援する」という思いを軸に、イベント主催者やコミュニティ運営者を支えるプラットフォームとしてPeatixを立ち上げました。

イベントの世界に飛び込んでみて気づいたのは、この領域が人との出会いと、かけがえのない体験の宝庫だったということです。

多くの人が、自分の情熱を形にしようとイベントを企画し、コミュニティを運営している。その熱量に触れたとき、「ここに飛び込んでよかった」と心から思いました。専門知識がないことを理由に躊躇していたら、この出会いは一つも生まれていなかったでしょう。

創業6年目の「もう一つの飛び込み」

Peatixを創業して6年が経った頃、新たな転機が訪れました。初めてイベントのファシリテーターに挑戦したことです。

それまでの私は、あくまでプラットフォームを提供する側でした。しかしファシリテーターとして場の前に立ち、参加者同士の対話を引き出す経験
は、イベントというものの本質を、まったく別の角度から見せてくれました。

そこからコミュニティづくりにも深く関わるようになり、最終的には『コミュニティづくりの教科書』を出版するまでに至りました。

プラットフォーマーが、コミュニティ運営の実践者になり、本を出版する。Peatixを創業した時点では、まったく想像していなかった展開です。

「想像の外側」は、飛び込まないと見えない

振り返ると、飛び込む前に思い描いていたものと、実際に得たものはいつも違いました。

Amazonに転職したとき、私が期待していたのは「グローバルな環境での成長」でした。しかし実際に飛び込んで得たのは、それだけではなかったのです。自分の常識が通用しない環境で、ゼロから思考の型を叩き直される経験でした。日本のベンチャーの延長線上には存在しない、まったく別の世界がそこにはありました。

ファシリテーションも同じです。初めて場の前に立ったとき、プラットフォームを提供する側からは見えなかった景色が一気に広がりました。参加者の表情、対話が生まれる瞬間の空気。同じ「イベント」でも、立つ位置が変わるだけで、見える世界はまったく違う。 この気づきがなければ、コミュニティづくりの実践者になることも、本を書くことも、なかったでしょう。

マイナビの「転職動向調査2026年版」によると、2025年の正社員転職率は7.6%と過去最高を更新し、「転職でキャリア形成すべき」と考える人は56.
2%に達したそうです。キャリアを主体的に選択する時代になりつつあることは間違いありません。

一方で、NIKKEIリスキリングでは「越境格差」の拡大が指摘されています。自分の専門領域や組織の外に出て学ぶ「越境学習」に踏み出す人とそう
でない人との間で、キャリアの広がりに大きな差が生まれているというのです。

スタンフォード大学のクランボルツ教授は、「キャリアの8割は偶然によってできている」と説いています。いわゆる「計画的偶発性理論」です。
綿密にキャリアを設計することよりも、偶然の機会に対してオープンであること。好奇心を持ち、柔軟に、楽観的に行動すること。それが結果とし
て、豊かなキャリアを形成するという考え方です。

私自身の経験は、まさにこの理論を体現していると感じます。

もう一つの原則――「進みたい方向」を発信する

「まず飛び込む」と同じくらい大切にしてきたことがあります。自分が何をしたいのか、周囲に発信し続けることです。

私は大学生の頃から「いつか起業したい」と公言していました。Amazonでは、上司に「早くマネージャーになりたい」とはっきり伝えていました。

なぜ発信が大事なのか。それは、チャンスは多くの場合、人が運んでくるものだからです。

自分が進みたい方向を周囲に伝えておくと、社内外で機会が生まれたとき、「藤田が手を挙げそうだな。声をかけてみようか」と思い出してもらえ
る。実際、Amazonへの転職は、私が起業志向を発信していたことを知っていた先輩が「こういう会社があるんだけど、来ないか」と声をかけてくれ
たことがきっかけでした。Amazonでも、意思を伝え続けたことで、若くしてマネージャーになるチャンスを掴むことができました。

飛び込む勇気と、発信する習慣。 この2つが揃うと、キャリアの可能性は大きく広がります。飛び込む先は自分で見つけるだけでなく、発信によっ
て向こうからやってくることもあるのです。

「まず受ける」が連れてきた、予想外のキャリア

ベンチャー、外資系スタートアップ、起業、ファシリテーション、コミュニティ、出版。

振り返ると、私のキャリアは一見すると一貫性がないように見えるかもしれません。でも、すべてに共通しているのは「飛び込んだからこそ見え
た景色」だということです。

正直なところ、私は「キャリアを作ろう」と意識してきたわけではありません。目の前に面白そうなことがあれば飛び込み、好奇心の赴くままに進んできた。その結果として、一般に「キャリア」と呼ばれるものが後からついてきた、という感覚です。

自分が想像できる未来は、今の自分の経験値の範囲内でしかありません。どれだけ情報を集めても、どれだけ慎重に分析しても、やってみなければわからないことがある。そして多くの場合、やってみた先にある世界は、想像していたものより遥かに面白いのです

「まず受ける」という原則は、受け身の姿勢ではありません。自分の想像力の限界を認めた上で、その外側に出ていくための能動的な選択だと考えています。

そしてもう一つ。この原則を持っていると、「選ばなかった道」への後悔が生まれない。 来たチャンスにすべて飛び込んできたから、「あのとき別の道を選んでいれば」という問いが生まれる余地がないのです。

新しい仕事に向き合うとき

今、新しい仕事や挑戦を前にして迷っている方がいたら、こう伝えたいと思います。

自分にできるかどうかで判断しなくていい。
なぜなら、飛び込む前の自分には、飛び込んだ後の自分がどれだけ成長するかは想像できないからです。

必要なのは、綿密なキャリアプランではなく、「面白そうだ」と感じる直感と、飛び込む勇気。そして多様な経験を重ねた先に、自分だけのキャリ
アの物語が見えてくるはずです。

皆さんの目の前にあるチャンス。まず、飛び込んでみませんか?

本記事は、日経電子版とnoteのお題企画「#新しい仕事に向き合うとき」に参加して書きました。

関連記事:過去にも「キャリア」や「挑戦」をテーマに書いてきました。合わせて読んでいただけると嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集