見出し画像

単語帳で覚えた表現がネイティブに苦笑いされた理由

高校時代は、どんな教科も予習復習が当たり前。部活もしていたら、毎日の小テストも、分厚い参考書を丸暗記し、ただただこなすので精一杯。

そうやって培った語彙を、ワーホリ生活の中で使ってみるとネイティブに苦笑いされた、文字通り苦い思い出がある。(この記事にもワーホリエピソード載せています)

それはget along withという表現。
当時使っていた参考書には、get along with Aで「Aと仲良くやる」とある。
例文を見ると、It is hard to get along with our boss. (日本語訳はなし)と書いてある。
これを見て、みなさんはどんな「仲良くやる」を想像するだろうか?

言葉の意味とイメージが正確に結びつくか~記号接地~

赤ちゃんが言葉の意味を覚えるのは、パパママなどの家族から、たくさん言葉のシャワーを浴びているから。
赤ちゃんは、言葉を発した人の表情や醸し出す雰囲気から、その言葉の意味を心や身体を通して認識していく。
それを記号接地という。
全部の言葉を記号接地していくのはむずかしい。だから人は成長するにつれて、言葉を言葉で理解するようになっていくが、最初に言葉を習得する時、それは必ず身体的な経験(ママにこにこしているなあという視覚情報とか、抱っこされた肌感覚とか)とそのイメージ(おだやかな気持ちとか、やわらかくてあったかい記憶とか)と一緒に覚えていく。

さあ、上司とともに働いたことのない当時の私は、「仲良くやる」の意味をどう解釈しただろうか。
訳はないので、「上司と仲良くするなんて、ご飯でも一緒に行くことなのかな?」なんて想像したかもしれない(残念ながら当時の記憶はない)。
当時の私にとって、get along with A は、「仲良くやる」という日本語のラベルだけを貼ってしまい、まるで高校生が休みの日にカフェに行ったりプリクラを撮ったりしてお友達と仲良くする、そのイメージとリンクさせていたのだと想像する。

本来のget along withのニュアンス

ここでgemini先生に聞いてみた。

プロンプト:
〈あなたは英語の先生です。高校生に語彙のニュアンスが伝わるような例文を5つ出してください。その際、日本語訳もつけてください。語彙はget along with です。〉

返答:
.〈 友達との関係(基本の形)
"I get along with everyone in my class." (クラスのみんなと仲良くやってるよ。)
解説: 特定の誰かと大親友というわけではなく、クラス全体とギスギスせずに、うまく平和にやっているニュアンスです。〉   ※ほかの例文は割愛

じゃあネイティブはget along withにどんな印象をもつの?と追加質問すると、

〈一番強いニュアンスは「摩擦がない(No conflict)」ということです。 例えば、"I get along with my parents." と言うと、ネイティブは「親とベタベタ仲良し」というよりは、「反抗期みたいなケンカもなく、お互い良い距離感で平和にやってるよ」という印象を受けます。〉

という返答が。

そう。ワーホリで私は、とても仲の良い友達について尋ねられたのに、get along withを使ったから違和感があったんだ。当時の私は、日本語訳を見て、正確なニュアンスをイメージできていなかった(記号接地できていなかった)まま、実践に臨んだのである。みなさんもそういう経験ないだろうか?

会話の文脈から意味を想像する~アブダクション推論~

でもこの苦い経験、決して無駄ではなかった。だって私は、get along withのニュアンスを深く考える機会をもらったから。

ん?さっき文脈で、表現が堅すぎるって言われたってことは、仲の良い友だちに使う表現ではないのか。あ、そういうときは、We are good friends.って言うよって教えてくれてるな。じゃあget along withってもっと、当たり障りなく、うまくやっているよとかそういうニュアンスなのかな?

私はこの一つの会話でget along withのニュアンスを決めてしまったので、本当に理にかなっているか証明するには、根拠が足りない。しかし、人間はこのような推論を用いて言語を習得していく。これをアブダクション推論という。

アブダクション推論とは、観察して見つけた結果を説明するために、仮説をつくること。ほかにも演繹法とか帰納法とか、推論の方法はあるけれど、アブダクション推論は人間にしかできない、身体経験を伴う推論のことなんだそう。
私のワーホリでの経験は、記号接地できていなかった語彙をあえて使ったことが、アブダクション推論を導くきっかけとなり、語彙の正確な習得にたどり着いた、最高の例なのである。

公教育にどう生かすか

私の経験のように、アブダクション推論の整合性を確認するには、その仮説を試す場が必要である。しかし、公教育ではその実践の環境が圧倒的に少ない。そこで優秀なラーニングアシスタントになるのが、AIだと考える。
AIには注意点がある。未成年の使用は保護者の同意が必要だし、13歳未満はそもそも使用できない。だから小学生期は語彙の習得も含め、英語に慣れ親しむ期間として専念し、中高生のアウトプット活動では、AIプロンプトを工夫したり、使用する場面を制限するなどして、自分の語彙の感覚を試すために、学習サポーターとしてAIを使用するのもありだと思う。

今回の記事は、今井むつみ先生の本を読んで、私なりに自分の経験に紐づけてまとめたものです。先生の本を読んで、私の苦い経験はこれだったんだ!と腑に落ちました。英語学習にも参考にしています。


参考図書