(創作大賞2024)大正浪漫チックな花嫁は恋する夫とお勉強がしたい【第二話】
大正八年の七月吉日。
私、櫻子と藤孝様は、多くの皆様からの祝福を受けて、結婚。
結婚式をしたのは、藤孝様が一高(※旧制第一高等学校の略。お金持ちのエリートが通った)を、ご卒業なさった数日後。
折しも、帝大に入学する前の、ゆとりある夏休み中だった。
(※大正九年までは東京帝国大学は九月入学。大正十年から四月入学に変更される)
藤孝様が休みの間は、とっても楽しかった。
百貨店でお買い物したり、おいしい洋食のポークカツレツ(※とんかつ)を食べに、連れて行ってくださったり。
素敵な背広(※スーツ)姿の、かっこいい藤孝様に合わせて、洋装のワンピースでおしゃれして、昼間の太陽と共にキラキラと輝いているようだった、十五歳の私の夏。
(※大正八年当時の結婚年齢は男性は十七歳以上、女性は十五歳以上だった)
夜の憂鬱を隠すように、私と藤孝様は、毎日のように一井家所有の豪華な自動車に乗って、行ったことのない所へ、たくさんお出かけした。
だけど、九月から学校が始まると、藤孝様は一気に忙しくなる。
帝大に通われているだけでも、すごいことなのに、まじめな藤孝様は勉学の手を抜かない。
一井家の次期当主たる者、なんでも一番でないと、ダメなのですって。
頭が痛くなってしまいそうなほど、小さな文字で書かれた分厚い本や、英語やドイツ語などで書かれた文章なんかも、スラスラと読まれているのは、本当にすごいなぁと感心する。
いつもガリガリと音がしそうなくらい、自室の大きな勉強机に向かわれいて、その背中は広くてスラリとしていて、素敵なんだけど……ちょっと淋しい。
新婚なのに……。
いつまでたっても、藤孝様の姿が見えない窓辺から、部屋の中に視線を移すと、壁際に置いた和タンスの上に飾っている、結婚式の写真が目に入った。
幸せそうな私の笑顔を見ると、切ない気持ちでいっぱいになる。
そもそも、藤孝様が私との『お勉強』を、してくれなくなったのは、私に原因があった。
できることなら、結婚式が終わった翌日の、あの時まで戻りたい。
結婚の夜は、私の義父となられた、一井財閥の総帥である一井 藤宗男爵の計らいで、帝国ホテルの豪華な一等客室へ、藤孝様と一緒に泊まった。
嬉し恥ずかし、初めての夜。
私は、これまで誰も触れたことのない肌を藤孝様にさらし、とっても官能的な、ひとときだった。
いま思い出しても、ドキドキしてしまうくらい。
だけど、せっかくお義父様が私たちの『初夜のため』と気を利かせて下さったのに、その日は疲れてしまって最後までできなかったと、翌日藤孝様に言われた。
藤孝様の長い指で、自分でも触ることのないところを、まるで生物の観察のように丁寧に弄られた。
最後までというのは、藤孝様のモノが、私のナカに入る……?
指だけではダメらしい。
具体的に、どうするものなのかよく分からないけど、きっと艶っぽくて、痺れるような気持ちよさがあるに違いないわ。
藤孝様が、そのきれいで長い指を私に滑らせている時の、ゾクゾクと湧きあがるようなあの感覚。
思わず声が出てしまうほど、感じてしまったもの。
帝国ホテルでの夜中、ひと眠りした後に、藤孝様の寝相の悪さで目が覚めてしまった私。
藤孝様が眠っている間に、今まで見たことのなかったおしべを観察した。
それは、私にはない不思議な形をしていて、ちょっと触ると少し大きさが変わったりと面白かった。
これが男性というものなのね……。
だけど、私のめしべって、どうなっているのかしら。
私はこれまで、自分のモノをしっかりと見たことがなかった。
だって、ふつう、自分の股の間なんて、見ないでしょう?
お互いに初心者同士。
藤孝様に見られる前に、きちんと自分の身体くらいよく知っておくべきだったと後悔する。
「藤孝様が弄っていたところ、どうなっているのかしら?」
一井家の風呂場で、こっそり手鏡に写して、私の秘めたる部分を見た。
「……ウソっ」
私が思っていたよりも、あまりに奇怪なその形に、絶句する。
こんなの、イヤ。
藤孝様にこんなに異様な部分を見せたなんて、恥ずかしいっ。
思わず、藤孝様の部屋に駆け込んで言ってしまった。
「藤孝様っ、アレを見ましたのっ?
ワタクシの……部分は、もう一生見せたくありませんっ」
