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✨ムダづかい母ちゃんとケチンボ父ちゃん

ぼくの父ちゃんはケチンボだ。

お菓子を買ってと言うとこわい顔になるし
電気のつけっぱなしやお水の出しっぱなしも
ものすごい怒る。

父ちゃんはいつもおんなじ服を着ていて部屋でのパンツはよれよれだし、
クーポン券とかポイントとかがたまるお店しか行かない。

回るお寿司のお店にいくときは、
いつも行く前に家でなにか食べてから来て
ぼくたちが食べるのを見ているくらいだ。

それに比べて母ちゃんは
お金をポンポン使う。

仕事のあとはうまいとか言って
お酒をたくさん買って飲んでるし

母ちゃんはお菓子も大好きで
ぼくと妹にも
かごにたくさん買ってくれる。

レストランに行くと食べたいのを頼みなと言うし
妹が試着した服はかわいいかわいいとみんな買ってしまう。

母ちゃんは自分の服はあまり変わらないけど
なぜか家のカーペットとカーテンを変えることが好きだ。

こないだ変えたと思ったら
学校から帰ってきてまた変わっているから
ぼくはさすがにびっくりしたんだ。


そんなある日
母ちゃんの胸におできが見つかって母ちゃんは入院することになった。

妹は泣いていて
ぼくはその病気の名前を知っているから、とてもこわくて不安になったんだ。

夜におなかが痛くて起きたとき
母ちゃんと父ちゃんが下で話をしていた。
むずかしくてよくわからなかったけど

父ちゃんは
部屋はここだとか
いくらかかったっていいとか
なんか母ちゃんを説得しているようだった。

お金がすごくかかるのかな

また父ちゃんはケチンボなことを
言ってるのかなあとぼくは思ったんだ。


母ちゃんが入院して
父ちゃんとぼくと妹との生活になった。

父ちゃんは会社から帰ると
右手と左手とに白い袋をぶらさげていた。

右をぼくに左を妹に差し出して
袋の中には
ぼくらの大好きなお菓子がたくさん入っていた。

ふだん買ってくれないような
ポテトチップやジュースまで

母ちゃんがいない間
少しずついっぱい食べようと言った。

母ちゃんがいなくて
母ちゃんの布団で妹が泣いていた夜には

父ちゃんはあんなにおっかなかったのに
部屋中の電気をつけっ放しにして
絵本を読んだり歌を歌ったりしていたんだ。

読むのもつっかえつっかえだったし
きいたことがない歌も大きすぎてうるさかったけど

おかげでぼくも妹も
なんかいつもとはちがって
思ったより元気に過ごせたんだ。


母ちゃんの手術が終わって
ぼくらは母ちゃんのお見舞いに行くことになった。

久しぶりに母ちゃんに会えるから
わくわくきょろきょろして病院を歩いた。

入院するところは部屋がたくさんあって
その部屋の中にはカーテンやベッドが並んでる。

「ここだよ」

父ちゃんがドアを開くと
母ちゃんがニコニコ待っていた。

母ちゃんの部屋は
ベッドがひとつしかなくて
トイレもお風呂もついてる部屋だった。

窓もとっても大きくて
青い空とうすい雲が絵みたいだ。

「父ちゃんがどうしても個室にっていうから。
お金がもったいないよねえ」

母ちゃんが困ったように言った。

「金の問題じゃない、このほうがいいんだ」

きいたことないセリフを父ちゃんが言っている。

母ちゃんのベッドには
ふかふかのグレーのクッションがあって

ベッドの下には
グレーの小さなカーペットの上に
みたことないピンクのサンダルがちょこんと置いてあった。

グレーは母ちゃんの大好きな色だ。
家のお鍋もお皿もグレーだから。

父ちゃんが紙袋からだしてきたときは
びっくりしたのよ

母ちゃんはまた困ったように笑っている。

父ちゃんのケチンボっぷりを知っているぼくも
本当にびっくりした。

母ちゃんが元気になるなら
なんだってするよと

ケチンボ父ちゃんは言ったんだ。


母ちゃんが退院してから
ぼくたち家族はまたいつもに戻った。

父ちゃんは相変わらずケチンボで
欲しいおもちゃもうーーんと言って買ってくれないし

スーパーではレジでクーポンをずっと探している。

でもぼくは
父ちゃんのケチンボは
きっとぼくらを守るためなんだって
少し思うようになった。

ぼくになにかあったとき
妹に何かあったとき
母ちゃんに何かあったとき

父ちゃんはきっと
ケチンボにならない。

あるものぜんぶ使って
ぼくたちを守ってくれる

ぼくは自信をもって
そう思えるようになったんだ。

父ちゃんのケチンボと 
母ちゃんのムダ使い

きっとぼくたちはちょうどいい家族なんだ。



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