住宅ローンシリーズ第5回 — 家は買うべきか、借りるべきか。10年払うたワシがもう一回だけ考える
「先輩、最終回で聞きます。家は買った方がいいんですか」
出た。人類が答えを出せんかった問いじゃ。
「ネットで調べたら、賛成と反対が同じ数だけ出てきました」
そりゃそうじゃ。どっちの結論にもできるからな。
「……できるんですか」
できる。前提を変えりゃええだけじゃ。家賃を高めに置けば買う方が得になる。修繕費を高めに置けば借りる方が得になる。計算した人の結論に、計算が合わせられとるんじゃ。
「じゃあ計算する意味がないじゃないですか」
ある。ほんで今日はな、数字で答えが出んことを、数字で示す。
「……なんですかその面倒くさい回」
最終回じゃけぇな。
持ち家は「乗り換えのできん定期券」じゃ
まず、家を買うゆうことが何なんかを言い直す。
家を買うんは、25年分の定期券を、まとめて先払いで買うようなもんじゃ。
「定期券」
そうじゃ。ほんでこの定期券にはな、変わった特徴が3つある。
1ヶ月定期より安い(毎月家賃を払い続けるより、総額では安うなることが多い)
途中で乗り換えられん(引っ越したくなっても、売るか貸すかせんといかん)
買った後も維持費が要る(定期券なのに、毎年メンテ代を取られる)
「……3つ目がおかしくないですか」
おかしいじゃろ。ほんでそれが家じゃ。
賃貸はな、都度払いの切符じゃ。1回ごとに高い。ほんでどこで降りても自由じゃ。
「安いけど動けない定期券と、高いけど動ける切符」
そこが本質じゃ。 得か損かの前に、動くか動かんかの話なんじゃ。
「……先輩、けっこう最初にいいこと言いましたね」
最終回じゃけぇ、いいことは先に出す。あとは請求書の話じゃ。
買う側にだけ来る請求書
家を買うと、家賃以外の請求書が来る。ここを甘く見た人間が痛い目に遭う。ワシのことじゃ。
① 固定資産税
毎年来る。家を持っとるだけで来る。 ワシの家で年10万円ちょっとじゃ。
「え、住んでるだけで10万円ですか」
住んどるだけでじゃ。ほんで払い終わりがない。 ローンを完済しても、死ぬまで来る。
「……ローンが終わっても終わらないんですか」
土地と建物を持っとる限り、終わらん。
② 修繕費
これがいちばん怖い。外壁、屋根、給湯器、水回り。
「いくらくらいですか」
外壁と屋根の塗り替えで100万円以上。給湯器が壊れたら20〜30万円。ワシは去年、風呂の給湯器が死んで、真冬に銭湯に3日通うた。
「真冬に……」
寒かった。 ほんで銭湯代より、真冬の3日間の方が心に来る。
「……家って、壊れるんですね」
家は資産じゃない。設備の集合体じゃ。 ほんで設備は全部、いつか壊れる。
③ 火災保険・地震保険
これは賃貸でも要る。ほんで持ち家の方が桁が上がる。 建物ぶんの保障が要るからな。
④ 金利
このシリーズでずっとやってきたやつじゃ。2,800万円借りて、35年で払う利息は当初の金利なら約240万円。金利が上がりゃあ、もっと増える。
借りる側にだけ来る請求書
「じゃあ賃貸の方が気楽じゃないですか」
賃貸にも賃貸の請求書がある。
① 家賃は、死ぬまで終わらん
これがいちばんでかい。 持ち家のローンは25年で終わる。家賃は終わらん。
月8万円の家賃を60年払うたら、5,760万円じゃ。
「5,760万円!?」
ほんで最後に手元に残るもんは、ゼロじゃ。
「……ゼロ」
持ち家なら、ボロボロでも土地は残る。そこがいちばんでかい違いじゃ。
② 更新料と引っ越し代
2年ごとに家賃1ヶ月分。引っ越すたびに敷金・礼金・仲介手数料。動ける自由には、動くたびに値段が付く。
③ 老後に借りにくい
これは制度の問題じゃのうて、現実の問題じゃ。年金収入だけの高齢者に部屋を貸すのを渋る大家はおる。
「……それは知らなかったです」
若いうちは「いつでも借りられる」と思う。ほんで貸す側にも選ぶ権利があるんじゃ。
数字で決着がつかん理由
「で、結局どっちが得なんですか」
計算してみようか。ワシの家と、同じ広さの賃貸で比べる。
| | 持ち家(ワシ) | 賃貸(仮に月8万円) |
|---|---|---|
| 毎月 | 返済 約72,400円 | 家賃 80,000円 |
| 別に要る金 | 固定資産税・修繕費・保険 | 更新料 |
| 25年後 | ローン完済・家と土地が残る | 何も残らん |
| 25年後の自由度 | 売るか住むか。動きにくい | いつでも動ける |
「……あれ、持ち家が勝ってません?」
そう見えるじゃろ。ほんでこの表には、決定的な数字が入っとらん。
「なんですか」
25年後の家の値段じゃ。
「……あ」
ワシの家が25年後になんぼで売れるか、誰にも分からん。 岡山の、この場所の、この家が、2051年になんぼか。
「分からないですね」
駅から近けりゃ残る。過疎ったら二束三文じゃ。 ほんで、その差が1,000万円単位で出る。
「……1,000万円が『分からない』枠にあるんですか」
そうじゃ。買う・借りるの計算は、いちばんでかい項目が『不明』なんじゃ。
「じゃあ計算した意味は」
意味はある。 「分からんのはここだけじゃ」と分かるからな。
ほかの項目は全部計算できる。分からんのは1つだけと分かっとる状態と、全部ぼんやりしとる状態は、まるで違う。
「……確かに」
賭けは避けられん。ほんで、何に賭けとるかを知っとくことはできる。 円安シリーズの結論と同じじゃ。
ほんで、10年住んだワシの正直な話
最後に、ワシの本音を言う。
「後悔してますか」
しとらん。ほんで、褒められたことでもない。
「どっちですか」
両方じゃ。買うたこと自体は後悔しとらん。買い方は最悪じゃった。
「……買い方」
第1回で言うたじゃろ。「そうですか」でハンコを押した。
金利のタイプを比べとらん
総額を計算しとらん
修繕費の積立を考えとらん
出口(売る・貸す)を1ミリも考えとらん
「……全部ですね」
全部じゃ。ほんで、それでも後悔しとらん理由が2つある。
① 家族が、ここで大きゅうなった
子供の背丈の傷が柱に付いとる。あれは賃貸じゃ付けられん。
「……使う力シリーズの『思い出の複利』ですね」
そうじゃ。家は資産としては微妙じゃが、思い出の置き場としては最強じゃ。
② 強制的に貯まった
ローンを払うんは、実質強制積立じゃ。ワシみたいな意志の弱い人間には、逃げられん仕組みが効いた。
「意志が弱いって自覚あったんですね」
高額スクールに120万円払うた男じゃぞ。
「……ありましたね、そんな話」
ほんでな、いちばん言いたいんはこれじゃ。
買うか借りるかで人生は決まらん。決まるんは、決めたあとに何をするかじゃ。
「……というと」
買うた人は、金利と修繕費と出口をちゃんと管理する。借りた人は、浮いた分をちゃんと積み立てる。
どっちを選んでも、放っとったら同じところに着く。
「同じところ?」
金が残らんところじゃ。
結局、何が大事なんじゃ
持ち家は乗り換えのできん定期券、賃貸は都度払いの切符。得か損かの前に、動くか動かんかの話じゃ
買う側だけに来る請求書:固定資産税(完済後も一生)/修繕費(外壁・屋根で100万円以上)/火災保険/金利
借りる側だけに来る請求書:家賃は終わらん(月8万円×60年=5,760万円で残るものはゼロ)/更新料・引っ越し代/老後に借りにくい現実
買う・借りるの計算は、**いちばんでかい項目(25年後の家の値段)が「不明」**じゃ。じゃけぇ数字で決着はつかん
ほんでも計算する意味はある。「分からんのはここだけ」と分かるからじゃ
ワシは買うたことを後悔しとらん。ほんで買い方は最悪じゃった。比べず・計算せず・出口を考えず「そうですか」でハンコを押した
買うか借りるかで人生は決まらん。決めたあとに何をするかで決まる。 買うた人は金利と修繕と出口を管理せえ。借りた人は浮いた分を積み立てえ
次回はシリーズのまとめ版じゃ。全5回を1本にして、今日から見る3枚の紙まで持っていく。
今日の参考書籍
まず、この3冊は全シリーズ共通の土台じゃ
📚 「本当の自由を手に入れる お金の大学」 リベ大・両学長 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
家は買うべきか借りるべきか。この本の答えは冷静で、感情に流されん。買う前に読め。買った後でも読め。
📚 「ジェイソン流お金の増やし方」 厚切りジェイソン 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
「でかい買い物ほど慎重に、小さい支出ほど大胆に」。順番を間違えとる人が多い。
📚 「20代から始める新NISA 高配当株投資術」 プラズマコイ 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
家を持っても持たんでも、金融資産は別に要る。その第一歩が漫画で分かる。
ほんで今回のテーマなら、この2冊じゃ
📚 「精神科医が見つけた3つの幸福」 樺沢紫苑 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
家は幸福を買う道具か。柱の傷に意味があるんは、この本の言う「つながりの幸福」じゃ。
📚 「お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか」 黒田尚子 著
→ Amazonで見る / 楽天で見る
買った家をどう使うかの話。買うことより、住み方で金は変わる。
関連記事
使う力シリーズ第2回 — 思い出の複利
円安シリーズまとめ版 — 予想じゃのうて分散じゃ
出典・注記
記事中の返済額・利息総額は借入2,800万円・35年・当初金利0.475%・元利均等返済を前提とした概算。金利が変動すれば総額も変わる
固定資産税・修繕費・家賃の金額は筆者の実例および一般的な目安であり、地域・物件・築年数によって大きく異なる
高齢者の賃貸契約に関する記述は一般的な傾向についてのもので、すべての物件に当てはまるものではない
⚠️ 本記事は情報提供を目的としており、投資助言・不動産購入の推奨ではありません。住宅の購入・賃貸の判断は自己責任で、必ずご自身の状況に合わせて行ってください。
本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。
