【稼ぐ力 第3回】アホとは戦うな——職場の理不尽は天気じゃ。雨と喧嘩する奴がおるか
稼ぐ力シリーズ第3回は人間関係じゃ。ワシは若手時代、嫌いな係長に勝つためだけに働いて、体を壊した。あの戦いに勝者はおらんかった。
おめえ、雨の日に、空に向かって怒鳴ったことあるか。
「……ないですよ。雨に怒鳴ってどうするんですか。」
じゃろ。雨が降ったら、どうする。
「傘を差します。」
濡れたら?
「拭きます。」
台風なら?
「……その日は近づかない、ですかね。予定を変えます。」
完璧じゃ。 おめえは天気への対処を完璧に知っとる。
「そりゃ知ってますよ。誰でも知ってます。」
ほんならなんで、職場の理不尽な人間に対しては、空に向かって怒鳴っとるんじゃ。
「……あ。」
今日はその話じゃ。教科書は『頭に来てもアホとは戦うな!』——田村耕太郎さんの、タイトルが全部言うてしもうとる名著じゃ。
まず言葉の整理をするで——「アホ」とは誰のことじゃ
「先輩、最初に確認ですけど、『アホ』って言葉、結構強くないですか。」
ええ指摘じゃ。この本で言う「アホ」はな、頭の悪い人間のことじゃない。おめえの時間と感情を無駄に奪う人間のことじゃ。
「時間と感情を奪う人。」
マウントを取ってくる先輩。手柄を横取りする同僚。理屈の通じん上司。会議でおめえの提案に、対案もなしに難癖だけつけてくる係長。
「……顔が3人浮かびました。」
浮かべたまま聞けや。ほんで大事なのはここじゃ。この本の主張は「アホを軽蔑せえ」じゃない。「アホと戦うな」——つまり、変えるのはアホじゃのうて、おめえの時間の使い方じゃ、という話なんじゃ。
「戦っちゃダメなんですか。悔しいじゃないですか、理不尽って。」
悔しいのう。ほんならワシの若手時代の話をしたるわ。戦った男の末路じゃ。
ワシが「係長に勝つため」だけに働いた2年間
若手のワシの部署に、そりの合わん係長がおった。ワシの企画は全部つぶす。手柄は上手に持っていく。飲み会では説教じゃ。
「……最悪の3点セット。」
ワシは決めた。こいつに勝つ、と。こいつより成果を出して、こいつより評価されて、見返したる、と。
「おお、少年漫画の主人公じゃないですか。」
ほんで2年間、ワシは何をしたと思う。係長が定時で帰ったら、ワシは残って働いた。係長が資料を10枚作ったら、ワシは20枚作った。係長の発言の矛盾を、会議で突いた。
「……ちゃんと戦っとる。で、勝ったんですか。」
体を壊した。
「……。」
ある朝、起きられんくなっての。医者に「原因はストレスでしょう」と言われて、2週間休んだ。ほんで布団の中で気づいたんじゃ。ワシはこの2年、何のために働いとったんじゃ、と。
「……係長に勝つため、ですよね。」
そうじゃ。ワシの2年の目標は「係長」じゃった。お客のためでも、自分の成長のためでも、家族のためでもない。嫌いな人間が、ワシの人生の目標のど真ん中に座っとったんじゃ。
「……うわ。」
ええか、ここが今日一番大事なとこじゃ。憎しみで戦うとな、戦っとる相手が人生の中心になるんじゃ。アホと戦うことの最大の損失は、負けることじゃない。アホがおめえの頭の中に住み込むことじゃ。家賃も払わずにの。
「……頭の中に、無賃で住まれる。」
ほんでそいつは、おめえが飯を食うとる時も、風呂に入っとる時も、家族と笑うべき時も、頭の中で説教しとる。ワシの2年間はそれじゃった。
職場の理不尽は「天気」として扱え
「先輩、じゃあどうすればよかったんですか。泣き寝入りですか。」
違う。冒頭の話に戻るで。理不尽は天気として扱うんじゃ。
「天気として。」
ええか、雨に怒鳴らんのは、負けたからか? 泣き寝入りか?
「……いや、勝ち負けの相手じゃないからですね。天気は。」
そうじゃ!! 雨はおめえを狙って降っとるんじゃない。あの係長の理不尽もな、大体はおめえを狙っとらん。あいつは誰にでもああなんじゃ。あいつの機嫌は、あいつの家庭の事情や、あいつが上から受けとるプレッシャーで降ったり止んだりしとる、ただの気象現象じゃ。
「……係長が気象現象。」
気象現象に人格攻撃されたと思うから腹が立つんじゃ。「今日は係長が土砂降りじゃの」と思えたら、やることは3つしかない。
傘を差す——真に受けん。感情の直撃を防ぐ。「はい、確認します」で受け流す
濡れたら拭く——嫌なことがあった日は、早う帰って、うまいもん食うて、寝る。引きずらん
台風には近づかん——機嫌の悪い日の相談は避ける。物理的に距離を取る。異動や転職も立派な「避難」じゃ
「……天気アプリみたいに、係長の低気圧を予報できたら完璧ですね。」
できるようになるんじゃ、これが。「月曜の午前は荒れる」とか「役員会の後は暴風」とか。観測を続けたら、パターンが見えてくる。
「気象予報士の資格が要る職場、嫌ですけどね!!」
ほんでの、「濡れたら拭く」の実践で、ワシが今もやっとる儀式を教えたるわ。橋のルールじゃ。
「橋?」
ワシの帰り道にの、川にかかる橋が一本ある。ワシはの、その日の職場の嫌なことはの、その橋の上で終わりと決めとる。橋を渡り切ったら、係長の話は思い出さん。考えそうになったら「あれは橋の向こうに置いてきた」と唱える。
「……効くんですか、そんな自己暗示。」
最初は効かん。じゃが3ヶ月続けたらの、脳が覚えるんじゃ。「橋=仕事の感情の回収場所」との。今では橋を渡った瞬間、肩がすっと軽うなる。ええか、家はの、家族と飯と風呂と積立の場所じゃ。係長を家の食卓に同席させるな。あいつは招待しとらんのに、頭の中に乗って夕飯までついてくるけぇの。
「……うちは橋がないんですけど、何で代用すれば。」
駅の改札でも、マンションのエレベーターでも、玄関のドアノブでもええ。「ここから先は自分の人生」いう国境線を、地図の上に一本引くんじゃ。
戦うべき相手は誰じゃ——目標を取り返せ
「先輩、でも全部受け流しとったら、都合のいい人間になりません?」
ならん。ここを間違えたらいけんのじゃが、「戦うな」は「主張するな」じゃない。戦う土俵を選べ、という話じゃ。
「土俵を選ぶ。」
感情の土俵——嫌味の応酬、正論での論破、SNSでの愚痴——ここでは戦わん。勝っても1円にもならんし、負けたら頭に住まれる。じゃが成果の土俵では堂々と主張せえ。おめえの企画、おめえの数字、おめえの顧客からの信頼。ここはおめえの本業じゃ。
ほんでな、行動経済学の回(本棚シリーズ第6回)を思い出せ。売り言葉に買い言葉——カチンと来た瞬間に言い返すのは、原始人がハンドルを握っとる状態じゃ。原始人にとって、目の前の敵に反撃せんのは死じゃったけぇの。じゃが職場の嫌味は、マンモスじゃない。反撃せんでも死なん。
「……あ、ここで原始人が繋がるんですか。」
繋がるんじゃ。カチンと来たら、6秒数えろ。原始人の怒りのピークは短い。6秒やり過ごしたら、参謀がハンドルを取り返す。ほんで参謀にこう聞かせるんじゃ。「この戦い、勝ったら何がもらえるんじゃ?」と。
「……大体、何ももらえないんですよね。スッキリするだけで。」
そのスッキリの値段が、2年と健康じゃった男が、ここにおるわけじゃ。
「……説得力が違いますわ。」
ほんでの、6秒ルールに加えて、ワシが実際にやっとる小技をもう一個教えたるわ。**「腹立ち積立」**じゃ。
「腹立ち積立!?」
職場でカチンと来て、ほんで言い返さんで済ませたらの、その日の夜に100円、積立に足すんじゃ。ワシは証券アプリのスポット買付での、100円ずつ買い増しとる。
「……え、待ってください。それ、腹が立つたびに資産が増えるってことですか。」
そうじゃ。ええか、あの係長時代のワシはの、怒りを「消耗」に変えとった。今のワシは怒りを**「入金」**に変えとる。同じカチンでもの、片方は健康を削り、片方は雪だるまを育てるんじゃ。
「怒りの再生可能エネルギー!! クセがえぐい発電方法ですけど、理屈は通っとる!!」
ほんで面白いことにの、「これで100円入るわ」と思うた瞬間、怒り自体が半分くらいに減るんじゃ。腹の立つ相手がの、ワシの積立の営業マンに見えてくるけぇの。
「……見え方の勝利じゃないですか。係長が、歩く入金ボタンに。」
そうじゃ。憎むより、換金せえ。
アホと戦わんで浮いた力は、どこに使うんじゃ
「先輩、これが『稼ぐ力』とどう繋がるんですか。今日、まだ給料の話が出とらんですけど。」
ほんなら繋げるで。おめえ、あの3人の顔を思い浮かべて消耗しとる時間、週に何時間ある。愚痴も、モヤモヤの反芻も、言い返す台詞を風呂で考えとる時間も全部込みでじゃ。
「……正直、5時間はあります。日曜の夜とか、月曜のこと考えて憂鬱になっとるんで。」
週5時間、年間260時間じゃ。前回の会議240時間と合わせたら、年間500時間——3ヶ月分の労働時間が、鍋とアホに食われとる。
「……ご、500時間!!」
ほんでな、もっとでかいのは感情のほうじゃ。3つの幸福(本棚シリーズ第2回)で言うたバッテリーの話——アホとの戦いは、バッテリーを削る。バッテリーが削れた人間は、新しい挑戦をせん。勉強せん。副業を始めん。伝え方の練習もせん。アホと戦うことの本当のコストは、時間じゃのうて、挑戦する元気なんじゃ。
「……稼ぐ力を伸ばす燃料が、係長への怒りで燃え尽きとる。」
そうじゃ。逆に言えばの、アホを天気にできた人間は、年間500時間と満タンのバッテリーを手に入れる。それを第1回の伝え方、第2回で取り返した時間、ほんで次回やる「教える力」に注ぎ込むんじゃ。出世していく人間はの、性格がええから出世しとるんじゃない。戦わん技術で燃料を節約して、成果の土俵に全部注いどるだけなんじゃ。
「……あの人たち、我慢しとったんじゃなくて、省エネしとったんですか。」
省エネじゃ。ほんで浮いた電力で、でかい仕事をしとる。
結局、何が大事なんじゃ
「先輩、まとめをお願いします。」
第3回の core はこれじゃ。
アホ=おめえの時間と感情を奪う人間。 変えるのは相手じゃのうて、自分の時間の使い方じゃ
憎しみで戦うと、相手が人生の中心に住み込む。 家賃も払わずにの
理不尽は天気じゃ。 傘を差す・濡れたら拭く・台風には近づかん。予報もそのうちできる
カチンと来たら6秒。 原始人からハンドルを取り返して「勝ったら何がもらえる?」と聞け
戦う土俵は選べ。 感情の土俵は捨てえ。成果の土俵では堂々と主張せえ
戦わん技術は省エネ技術じゃ。 浮いた500時間とバッテリーが、稼ぐ力の燃料になる
「……日曜の夜に、係長の顔を思い浮かべるのをやめます。あれ、ワタシの人生の時間でしたわ。」
そうじゃ。日曜の夜はの、係長のもんじゃない。おめえの家族と、おめえの積立設定と、おめえの来週の楽しみのための時間じゃ。
「……先輩、ちなみにその係長とは、その後どうなったんですか。」
3年後に別の部署に移っての。送別会で隣になって、初めてゆっくり話した。……子供の受験で、あの頃ずっと家がぐちゃぐちゃじゃったらしいわ。
「……土砂降りには、土砂降りの事情があったんですね。」
そうじゃ。天気に事情があるように、人にも事情がある。分かっとっても腹は立つがの、腹を立てる時間を短うする技術は、今日から持てる。以上じゃ。
「……最後、ちょっとしんみりさせるの、ずるいですよ。」
しんみりついでに、腹立ち積立の残高でも見て寝るわ。あの係長の在任2年分での、ええ額になっとるんじゃ。
「……怒りが、ちゃんと資産になっとる!! ある意味、係長との共同作業!!」
一番言われとうない言い方をするのう。次回は「教える力」——おめえが後輩を持つ日の話じゃ。
「ワタシに後輩!? その回、絶対読みます!!」
今日の一冊
📚 「頭に来てもアホとは戦うな!」 田村耕太郎 著
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今日の話の原典じゃ。人間関係で消耗しとる全社会人の常備薬での、「戦わない」を「賢い戦略」として堂々と選べるようになる。日曜の夜が憂鬱な人間は今夜読め。
あわせて読むなら(稼ぐ力→増やす力)
📚 「行動経済学が最強の学問である」 相良奈美香 著
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カチンと来た瞬間の脳内で何が起きとるか——原始人の正体はこっちじゃ。本棚シリーズ第6回で解説しとる。
📚 「精神科医が見つけた3つの幸福」 樺沢紫苑 著
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削られたバッテリーの回復方法はこの本じゃ。本棚シリーズ第2回で解説しとる。
📚 「本当の自由を手に入れる お金の大学」 リベ大・両学長 著
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「嫌な職場から離れる自由」は金が作る。その全体地図じゃ。
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📚 本は「読む前に買う」もんじゃ
紹介した本が全部要るわけじゃない。1冊だけ選んで、今日カートに入れえ。
「明日でええか」と思うた本を、人は一生買わん。ワシがそうじゃった。
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