医療現場でAIが使われ始めている──退院サマリーの話を聞いて思ったこと
先日、以前勤めていた法人を訪問する機会がありました。
退職してからもこうして声をかけていただき、今の現場の様子やこれからの医療についてお話を伺えるのは、本当にありがたいことです。
その場で交わされた会話の中に、少し印象に残ったものがありました。
それは、病院の医師たちが退院サマリーの作成にAIを活用し始めている、
というお話でした。
正直なところ、聞いた瞬間に「もうそこまで来ているんだな」と、 時代の変化を肌で感じました。
と同時に、私が看護管理者として書類の山と戦っていた頃の記憶が、 頭をよぎったのです。
退院サマリーは“AIと相性がいい仕事”だった
退院サマリーというのは、入院中の経過や治療内容、退院後の方針などを まとめる重要な文書です。
医療の質を担保し、次の担当者へ正確にバトンを繋ぐためには欠かせない 書類である一方で、作成にはかなりの労力と時間がかかります。
なぜなら、サマリーを作成する業務には、次のような性質があるからです。
電子カルテの中には、すでにすべての情報(事実)が存在している
でも、それを「一つの文章として整理する作業」が必要になる
毎回、決められた形式に整えなければならない
つまり、「情報自体はあるのに、文章にする手間が残る仕事」なのです。
ここにAIが入ることで、カルテの情報から要点を整理し、退院サマリーの
“下書き”を作るという使い方が始まっていると聞きました。
医師は、立ち上がった下書きを確認し、医療者としての目で修正して完成 させる。
「ゼロから書く」から「整える」へ、仕事の形が変わってきているのだと感じました。
医療における最終判断や意味づけをするのは、もちろん人間です。
そこはこれからも変わりません。
ただ、下準備や整理の部分は、確実に変わり始めています。

看護の現場こそ、AIと相性がいい
そのお話を聞いたとき、私は率直にこう思いました。
「ナースも使わないともったいないな」
看護の仕事もまた、記録や申し送り、説明など、頭の中にある情報を言語化する業務がとても多いからです。
日々の看護記録のまとめ、
カンファレンスの要約、
退院支援におけるご家族への説明文、
そして新人指導や研修の資料作成、
どれも「頭の中の情報を整理して、言葉にする仕事」です。
看護管理者である皆さんは、毎日どれほどの書類仕事と向き合っていらっしゃるでしょうか。
現場のために動きたい、スタッフの話を聞きたいと思っているのに、気がつけばパソコンに向かい、報告書や議事録を作る時間ばかりが過ぎていく。
そんな日も少なくないと思います。
もしここにAIが入るとしたら、それは私たちの「考えること」を奪うものではありません。
日々私たちを追いつめている「整理する負担」を、軽くしてくれる存在になるのではないかと思います。
AIというと、「仕事がなくなるのでは?」という不安の声もあります。
でも、実際の医療現場で起きていることは少し違っていて、
「ゼロから作る仕事」が「確認して整える仕事」に変わってきている、
そんな印象のほうが近いです。
看護の仕事はとても繊細で、人の状態を5感で見て判断し、言葉にして共有する仕事です。
だからこそ、扱う情報量も多く、整理の負担も大きくなります。
もしAIがその一部を担うことができれば、変化が生まれます。
記録に追われる時間が減る
相手に伝えるための言葉が整う
教育や説明の質が、心にゆとりを持って向上する
看護の現場だからこそ、得られる可能性がたくさんあるのではないでしょうか。

完璧を目指さず、まずは「小さな一歩」から
今回の訪問で耳にしたお話は、私にとっては「医療の働き方が変わり始めているサイン」に見えました。そして同時に、看護の現場にもこの流れは必ず来ると感じています。
大切なのは、新しい技術を怖がることではなく、「どう使えば現場が楽になるのか」を知ることなのかもしれません。
とはいえ、「何から始めればいいのか分からない」と思われるのは当然のことです。今まで一歩一歩、自分の手と足で現場を支えてきた私たち世代にとって、新しいものに触れるのは少し勇気がいりますよね。
だからこそ、完璧を目指さず、本当に身近な事務作業から、AIという「相棒」を試してみてほしいのです。
例えば、このような使い方から始めてみるのはいかがでしょうか。
挨拶文や案内文の文面を考えてもらう : 「来月の院内研修の案内文のたたき台を作って」と頼むだけで、丁寧な文章を数秒で用意してくれます。
箇条書きのメモを、文章に整えてもらう: 会議中に急いで書き留めたメモをそのまま渡して、 「分かりやすい議事録の体裁にして」と頼むだけで、綺麗に整理してくれます。
研修のアイデア出しに付き合ってもらう : 「新人看護師向けの研修で、伝わりやすいグループワークのテーマを3つ考えて」と、相談相手になってもらうこともできます。
このように、普段のちょっとした「言葉に詰まる瞬間」や「枠組みを作る作業」を手伝ってもらうことから、始めてみてください。
AIを使いこなすこと自体が目的ではありません。
少しだけ書類仕事が軽くなって、心にゆとりが生まれること。
スタッフの声に耳を傾ける時間が増えること。
患者さんと向き合う時間を取り戻せること。
全部をあなた一人で抱え込まなくて大丈夫です。
あなたが組織のために頑張っているからこそ、その負担を分かち合うために、この新しい相棒が存在しています。
忙しい人、誰かのために身を粉にして頑張っている看護管理者のあなたにこそ、この相棒が必要なのだと思っています。
医療が変わる今だからこそ、新しい存在を味方にして、本来大切にしたかった時間を取り戻してみませんか。

🌸最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AIは仕事を減らすためではなく、人と向き合う時間を増やすための相棒だと、私は考えています。
看護管理者の皆さんが、人と向き合う時間を少しでも取り戻せるよう、これからも、このnoteではAIの活用法や私の想いなどを少しずつ発信していきます。
