猛暑で忙しい今だからこそ考えたい AIに看護はできない。「看護する時間を守る」ためにある
猛暑で忙しい今だからこそ考えたい
「危険な暑さです。不要不急の外出は控えてください。」
今年も毎日のように、この言葉を耳にします。
熱中症による救急搬送が増え、病院や高齢者施設、訪問看護の現場は、
いつも以上に緊張感のある毎日が続いています。
看護師として働く皆さんも、「今日も何事もなく一日が終わりますように」と願いながら勤務に入っているのではないでしょうか。

そんな中、先日、私自身が改めて「この暑さは本当に危険だ」と感じる出来事がありました。
娘が管理する高齢者施設でお手伝いをしていた時のことです。
ある入居者さんのお部屋へ入った瞬間、思わず足が止まりました。
まるで温泉に入ったような熱気だったのです。
エアコンは""暖房""になっていて、加湿器も最大で動いていました。
部屋の中が少し曇るほどの蒸気が充満し、蒸せるような暑さです。
慌てて窓を開け、暖房を止め、冷房へ切り替えました。
その時、その入居者さんは穏やかな表情でこうおっしゃいました。
「へぇ……暖房になっていましたか?」
「暑いですか?」
私は、その言葉に背筋が寒くなりました。
汗もかいていません。
苦しそうな様子もありません。
でも、それこそが高齢者の熱中症の怖さなのです。
高齢になると、暑さを感じる力が弱くなります。
喉の渇きにも気付きにくくなります。
本人は「大丈夫」と思っていても、身体の中では熱中症が進んでいることがあります。
看護師として知識では知っていました。
でも、実際に目の前でその場面に出会うと、その怖さを改めて実感しました。
もし一人暮らしだったら。
誰も部屋に入る人がいなかったら。
そう考えると、本当に怖くなりました。
だからこの夏は、ご家族やご近所に高齢の方がいらっしゃるなら、ぜひ少しだけ気にかけていただきたいと思います。
「エアコンつけてる?」
そんな電話一本でもいい。
できれば、お部屋の中まで見に行ってみる。
その小さな行動が、大切な命を守ることにつながるかもしれません。

私は看護部長として働いていた頃、夏になると現場全体がいつも以上に張り詰めるのを感じていました。
患者さんの体調だけではありません。
暑さの中で働くスタッフの疲労も気になります。
「今日は少し顔色が悪いな。」
「ちゃんと水分を取れているかな。」
本当は病棟や施設を歩き、一人ひとりの様子を見ながら声を掛けたい。
看護管理者にとって、その時間はとても大切です。
でも現実には、会議や委員会、書類作成、勤務調整、ベッドコントロール、電話対応などに追われ、一日があっという間に終わってしまいます。
気が付けば、パソコンの前に座っている時間の方が長かった。
そんな日も少なくありませんでした。
私は、そこにずっともどかしさを感じていました。
看護管理者の仕事は、書類を作ることではありません。
スタッフが安心して働ける環境を整えること。
患者さんへより良い看護が届くよう支えること。
そのためには、人と向き合う時間がとても大切です。

最近は、医療現場でもAIを活用した記録作成や文書作成支援などの話題を 目にする機会が増えました。
私は、看護や介護の仕事そのものがAIに代わるとは思っていません。
患者さんの小さな表情の変化に気付くこと。
スタッフの「大丈夫です」という言葉の奥にある疲れを感じ取ること。
ご家族の不安に寄り添うこと。
それは、人だからこそできる仕事です。
だから私は、AIに看護師の代わりができるとは思いません。
その代わり、AIにお願いしたいことがあります。
書類のたたき台を作ること。
長い資料を要約すること。
会議資料を整理すること。
そんな、多くの時間を取られる事務的な仕事を少し手伝ってもらえたら、 その分だけ現場へ足を運ぶ時間が増えます。
スタッフと話す時間が増えます。
患者さんのそばへ行く時間が増えます。
私はAIを使いこなせる看護師を増やしたいのではありません。
AIに詳しい看護管理者を育てたいわけでもありません。
私が本当に願っているのは、人にしかできない仕事に、もっと時間を使える看護管理者が増えることです。
猛暑が続く今だからこそ、改めてそう思います。
AIは看護を代行するためにあるのではありません。
— 看護する人の時間を守るためにある。—
私は、これからもその想いを大切に伝えていきたいと思います。

