MY Sweet Olive Family~第1章④
【第1章】 女勇者Atashi召喚
(第4話)「祈りに囚われた汚部屋」
物に埋め尽くされた母の部屋は、
ギュウギュウなのに、必要なものは何ひとつ入ってない。
──これって、何かに似てない?
「ああ」とため息交じりに
「母の脳内と同じだ」とつぶやいた。
心配事や
部屋の中心には、ローテーブルと寝床化したソファー。
その周りを、タンス、タンス、タンスの圧迫感。
仏壇も、祖母の嫁入り道具だった和箪笥も、しれっとそこにいた。
ローテーブルの上には、無料でもらった(持ってきた?)大量の割りばしやお手拭き達が、お菓子の空箱にきっちりと並べられている。
母の仕業だ。
──無駄に発揮されたA型要素。
使うためじゃない。(もはや)ストックマニア。
それにしても、このお菓子の空箱。
捨てられない母の習性が垣間見える。
ゴミ屋敷なみの汚部屋を作り上げた張本人が、こんなところだけ几帳面なのが不思議で仕方ない。
本末転倒にもほどがある。
断捨離を勧めるアタシに母は言う。
「物に囲まれてると安心する」と。
母よ、安心なのかもしれないけど安全性には欠けているよ。
仏壇から目を移し汚部屋を見回すと違和感が。
母は風呂キャンセル界隈で長い間掃除も換気もしていないのに臭くない。
嗅いでみるとアタシの鼻に入ってきたのは、
「お寺の本堂ばりに染み付いた線香の香り」だった。
換気がされていなかったせいで、
埃と漂う線香の煙が視界をぼんやり曇らせている。
部屋全体が重苦しい膜に包まれている感じだ。
仏壇の前に進む。
ロウソクにマッチで火を灯し、線香を数本手に取り火をつけた。
ゆっくり先端が赤くなり、やがて煙が細く立ち上る。
その煙が、部屋に溶け込んでいくのを眺めていると、首の後ろ第一頸椎のあたりから耳の後ろに寒気が走った。
脳裏に浮かんだのは久しぶりに見た母の目。
光を失い澱んでいた。
顧みることも現実を見ることも拒んでいたその母の目。
汚部屋と同じく、閉ざされたものだった。
部屋中に広がる線香の細い煙は、まるで蜘蛛の巣のようで。
蜘蛛の糸に囚われたカゲロウが、1匹。
カゲロウは、何度も何度も火をつけては、手を合わせ続ける。
線香の煙が糸のように漂いながら、儚い背中を絡め取っていた。
母も──、母も祈っていた。ずっと祈っていた。
線香の煙がアタシにもまとわりつき、息苦しさを覚える。
ここは祈りでできた部屋だ。
祈ることしかできなかった母の、静かな牢。
🎮この物語は全5章予定の家族クエストです💫
汚部屋、段ボール、そして母の影
──女勇者Atashiの冒険はまだまだ続く。(たぶん)
また覗きに来てくださると嬉しいです🌕
🔖【次回予告】母の部屋は、祈りの迷宮だった。
次回、第5話「女勇者Atashiの覚悟」
ストック癖、仏壇、線香の匂い。
汚部屋の奥でAtashiは、
“母が閉じ込められた理由”のかけらを拾いはじめる──。
#創作大賞2025 #エッセイ部門 #オールカテゴリ部門 #家族 #過去の思い出 #片付けられない #召喚された女勇者
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただけること本当に励みになります。あなたのチップで、アタシの「やる木」が元気に育ちます🌳✨