#4 人工授精5回目。体外受精という壁。
人工授精が4回終わった頃、先生から言われました。
「次がダメだった場合は、体外受精を考えましょう」
そう言って渡されたのは、体外受精について簡潔にまとめられたパンフレットのような資料でした。
方法や流れが書かれていましたが、私が一番驚いたのは費用。
当時、体外受精は自由診療。
1回につき全部で約50万円
助成金があるとはいえ、それでも数十万円の自己負担が必要でした。
正直、簡単に出せる金額ではありません。
だからこそ、
「次こそ絶対に妊娠していますように」
そう願っていました。
生活習慣を整えて、体を冷やさないようにして、葉酸や鉄分も意識して、自分なりにできることは全部やりました。
人工授精が失敗するたびに、すごく落ち込み、たくさん泣いていました。
毎日基礎体温を測っていたので、生理予定日付近でガクッと体温が下がると、嫌でも「今回も妊娠していないんだ」と分かってしまうんです。
生理が来る前から分かってしまうあの感じが、本当に辛かった。
でも、5回目の人工授精の日、イレギュラーなことが起きました。
主人が精子を採取するために予約していた個室を、その日は急遽用意できないと言われたんです。
私が通っていたのは産婦人科。
予約していたのにも関わらず、出産後に退院する方が増えたので、私たちには部屋を貸せないとのことでした。
予約の時にそういうことがあるかもしれないという事は何も聞かされていません。
看護師さんから言われたのは、
「トイレで採取をお願いします」
「皆さんこういう時はそうされてますよ」
という言葉でした。
理解できませんでした。
誰でも利用するトイレでの採取。
衛生的にも、本当に大丈夫なのか不安でした。
トイレで採取するかもしれないということを事前に知らせてくれていれば少しは気持ちが違ったかもしれない。
わかっていれば自宅で採取して急げば間に合えたかもしれない。
いろいろと考えていたのですが、時間がない。
タイミングを逃すわけにはいかない。
私は主人を急かしてしまいました。
主人も、すごく嫌そうな顔をしていました。
幸い朝一で、男性は主人だけ。
それでも、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
モヤモヤしたまま行った5回目の人工授精。
その後、生理が来ました。
5回とも、結果は出ませんでした。
後日、先生に「あの日はかなり辛かった」と伝えました。
トイレで採取することは衛生的に問題ないのかも聞きました。
でも返ってきたのは、
「洗浄するので問題ありません」
という言葉。
そして最後に、
「一応ここは産婦人科ですから」
地元でも人気の不妊治療に特化した産婦人科でしたが、その一言で私のなんとか支え続けていた心が折れました。
体外受精の高額な費用。
一度も妊娠できなかった悲しみ。
先生や看護師の冷たい態度。
終わりの見えない不妊治療。
もう、辛い思いをしたくない。
私は不妊治療を中断し、ここの産婦人科を受診することは二度とありませんでした。
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