【世界はひとつの世界】第一章ウタリ編丨第4話丨冒険の予感
夕飯時。町の人気食堂はガヤガヤと賑わっていた。
『おー、きたきた。うんまそ~う』
隣り合わせで座った二人の前に、入り口で注文した同じ料理が運ばれてくる。
一番高い値段の「肉たっぷり野菜もそこそこの煮込み料理」だが、男の方の量は通常の3倍くらいあった。
『いっただっきまーす』
勢いよく肉にがっつく男の横で青年は静かにスープからすすっていく。

『おい、聞いたか?』
『あぁん?』
目の前の二人が話し始める。
『あのケルベロスがついに討伐されたってよ!』
『おーおー、ようやくか。どんだけかかってんだよ、騎士団の連中もしょっぺぇな。国の防衛大丈夫かぁ?』
『いや、それが…討伐したのは流しのハンターらしい。しかも一人でだ』
『あっはっは。そんな話信じてどうすんだ。
あんなバケモン一人でどうにかなる訳ないだろ』
『いや、あのギルマスが言ってたらしいぞ』
『代表して一人で受付しただけだろ。お前本物見たことあるか?凡人じゃ視界に入れただけで気絶するぞ?騎士団クラスの数人がかりでもないと無理だって。城の役人をハンターと見間違えただけだよ』
『いや、でも…』
『でもじゃねぇって!』
目の前で展開される会話に当の本人たちは何も気になるところはない。旨い料理に夢中だ。
『しっかしよぉ。あいつってダンジョンから逃げ出してきたヤツだろ』
男の耳がダンジョンという言葉にピクリと反応する。
『あぁそうだな。城の調査団が入って行った時に、仕留め損ねたやつが外に逃げちまったんだったな』
『ってことは、あそこにゃまだ同じのがうじゃうじゃいるんだろ?おっかねぇよなぁ』
『でも調査団はダンジョン内で何匹も倒してるんだろ?なんで外の1匹にこんな手こずったんかな?』
『ダンジョン内は狭くて戦いやすかったんじゃね?間合い的な話』
『こんなことになるなら二度と調査なんてしていらんよな。しかもベロスって地下2階のやつだろ。もっと奥のやつが逃げ出したらどうすんだよっていう』
『だよなー。城の連中がマッピング(ダンジョン等の構造を感知して地図を作り出すことができる能力)持ってるやつに調べさせたら、10階まであるって話らしいじゃねぇか』
『2階であれだぜ?10階のなんて、1匹でこの世が終わるんじゃねぇの?』
『なーんでそんなもんが町の近くにあんのかねぇ』
『そりゃお宝だろ、お・た・か・ら。お宝目当ての連中が近くに町を作ったんだよ、逆に』
バンッ!
と音がする。
料理でいっぱいになった口をモゴモゴさせている男が、机に両手をついて立ち上がっていた。

『フゴフゴフゴ…んんんっ…ごっくん。そんなダンジョンがあんの!?』
目をキラッキラに輝かせてググイっと顔を近づけると、びっくりした向いの客二人はアワアワしている。
青年は相変わらず我関せずで野菜を頬張っている。
『あっ…あぁ…』
『どこにあるんだ!?』
『まちの…ひがし……うぅ…近い…』
『ひがし!』

既に完食した男は食べてる真っ最中の青年の襟を鷲掴みにすると、右手のスプーンもろとも引っ張って店の外へ飛び出した。
『あ…いや…おい…』
『何なんだあいつ…』
『入り口は騎士団が結界張って検問してるってのに…』
『まぁどの道、1階を2,3歩歩けたらいい方だろ』
『はははっ』
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