「芳華、国へ帰る」ひとみ編第1話

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第1話

『Trứng khôn hơn vịt(卵はカモより賢い)

〜市川ひとみの日記〜

日本へ帰って2週間後、わたしは優子と芳華の家へ行った。



芳華の家のキッチンにて

優子「おぉ~この匂いだよ!この匂い!ヌックマムとスパイスの匂い!ベトナムに帰ったような気分!」

芳華「まるで私の家がベトナムくさいみたいに言うね!」

優子「くさいんじゃなくて、褒めてるんだよ!あーベトナムレストランに住んでるみたいで羨ましい!何泊かしてっていい?」

芳華「そしたら外で寝てもらうからね!」


芳華と優子が楽しそうに話している。
わたしにとってこの空間は心がくすぐったくなる…


優子「で、今日は何を作るんだっけ?」

芳華「ブンボーだよ!私の大嫌いの!」

優子「えー!まえ、私たちが食べて当たったやつ?」

芳華「で、も、ね!お母さんのブンボーはそれなりに美味しいよ?だから、リベンジしてほしいと思って!」


芳華が、大げさなリアクションで話している。ベトナムに行く前には見せなかった本来の芳華の姿かもしれない…

芳華のお母さんがブンボーを作って出してくれた。
優子に一生懸命教えてくれてたが、カタコトの日本語と部分的にベトナム語で言ったので多分わかってなかったと思う。


優子「わー美味しそう!」

芳華「日本の肉や野菜とか使ってるし、少なくとも前みたいに、当たらないと思うよ?」

優子「ひとみも食べよ!」

ひとみ「うん…」


心のなかで何か身体の中で燃えるような気がした。そんな気持ちだったのか、ブンボーのスープが熱く辛く感じた。
思わず、わたしはむせてしまった。


芳華「大丈夫?辛すぎた?それとも味が苦手だった?」


芳華が心配する。
わたしが苦手なのはベトナム料理じゃない……
ただ……


ひとみ「ごめん、そろそろ帰るね…」

芳華「なんか、不快な思いさせちゃったらごめんね」

ひとみ「ううん、芳華たちが悪いんじゃないの…わたしが悪いだけだから…」

優子「なんかあったの?」

ひとみ「うち、お母さんさんひとりだから、あんまり遅いと心配かけて悪いかなって思って…また時間があるとき芳華の家行ってもいい?」

芳華「それは大丈夫だけど…」


わたしはぎこちなく笑って芳華のうちを出た。


正直言うとこのまま芳華家にいたかったのかもしれない。
でも…


ひとみ「ただいま…」


わたしの家でただいまと言っても何も返ってこない


別に誰もいないわけではない。

アパートの奥の部屋から男女の戯れる声が聞こえる。

わたしは大げさにリュックを置いた。
音が聞こえるように。


ひとみの母「帰ってたんだ。」

ひとみ「…」

ひとみの母「彼氏ともうちょっといたいから、これで時間潰しててよ。」


全裸のお母さんが襖を開けて奥の部屋から出てくる。
机に1000円を置くと、奥の部屋の闇に消えていった。


わたしは何も言わず外に出ていった。

こういうときにわたしはスーパーへ行く。
買うわけもなくお惣菜を眺めながら時間を潰す。
夏だと公園という選択肢もあるが、時々変な
人に声をかけられるからスーパーのほうが安全だ。


ピローン


携帯が鳴る
きっとお母さんからメッセージだ。


『夕飯できたから戻っておいで』


わたしは小走りで家へ帰る。



ひとみ「お母さんただいま」

ひとみの母「おかえりなさい。今日はとんかつだよ。」

ひとみ「今日は彼氏いないの?」

ひとみの母「明日バイト早いんだって」

ひとみ「……」


誰にも気づかれず安堵した。
今日はお母さんと二人きりなんだ。


夕飯のとんかつがとってもとっても美味しく感じた。
同じお母さんが作ったとんかつなのにどうして彼氏がいないと美味しく感じるんだろう……


きっと今日のブンボーも……


わたしは時々思う。
わたしも女だ、いつかお母さんみたいになっちゃうんだろうと…
いくら気をつけても、孤独を誰かで埋めようとしてしまうのだろうと…

それでも、お母さんと一緒食べるとんかつは泣きたくなるほどおいしかった……



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