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カールマルクスが渋谷に転生した件 5 マルクス、アプリ開発に乗り出す

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マルクス、初めてのアプリ

「アプリケーション...」
深夜のマクドナルドで、マルクスはその言葉を何度も繰り返していた。

「簡単に言うと、スマートフォンで動く道具みたいなものです」
さくらが説明を試みる。

「例えば、マルクスさんの使っている、Xも一つのアプリです」
「ふむ。つまりこれは、デジタルの世界における道具...生産手段の一つということか」

「そうです。でも、普通の道具と違って、誰でも作れるわけじゃないんです。プログラミングの知識が必要で...」
「プログラミング?」
「コンピュータに指示を出すための...まあ、新しい種類の言語です」

マルクスは深く考え込む。かつての産業革命期、機械という生産手段は労働者から切り離され、資本家の手に握られていった。そして今、新たな生産手段であるデジタル技術も、一部の企業に独占されつつある...

「ああ、エンゲルスがここにいれば」
マルクスは思わずため息をつく。
「彼は工場経営者の息子だったからこそ、産業の仕組みを知り尽くしていた。今、私にも同じような...」

「あ!」さくらが声を上げる。「それなら木下さんはどうですか?元々大手IT企業にいて、今はフリーのプログラマーをしている人なんです」

「現代のエンゲルスというわけか...それだ!」
突然の声に、隣の席の深夜バイト学生が飛び上がる。
「すまない」マルクスは少し照れながら髭をいじる。「しかし、新しい『共産党宣言』を...いや、『デジタル・マニフェスト』を書くべき時が来たのかもしれない」

「デジタル・マニフェスト?」
「ああ。だが今回は、単なる宣言文ではない。我々の手で、デジタルの生産手段を...」
「アプリを作るってことですね!」さくらの目が輝く。「私、木下さんに連絡してみます」

マルクス、ちんぷんかんぷん

翌日、さくらの祖母の経営するゲストハウスの離れ。Das Kapital TV編集部として使っている和室に、一人の男性が現れた。
「木下と申します」
パーカー姿の30代男性は、少し人見知りな様子でお辞儀をする。

マルクスは一瞬、若かりし日のエンゲルスの姿を重ねていた。目の前の男性からも、同じような知性と理想を感じ取ったからだ。
「かつて私には、よき理解者がいた」
マルクスはゆっくりと切り出す。

「彼は資本家の息子でありながら、労働者の解放を共に目指してくれた。今、私は再び...」
「あの」木下が遮る。「正直に言うと、僕、大手IT企業で働いてたとき、限界を感じたんです。プログラミングの力で世界を変えられるはずなのに、結局は利益のためだけに...」

「ほう?」
マルクスの目が輝く。
「それで、全部投げ出して引きこもっちゃって。でも、マルクスさんの動画を見て...テクノロジーを、本来あるべき形で使えるんじゃないかって」
「本来あるべき形?」

「はい。今のSNSやアプリって、ユーザーのデータを搾取して、それを広告収入に変えてるだけです。でも、技術自体は人々を繋げる力を持ってる。だから...」
「だから、我々の手で作り直すべきだと?」
マルクスの声が高揚する。

「ブロックチェーンとP2Pネットワークを使えば、企業に依存しない分散型のプラットフォームが...」
「すまないが」マルクスが首を傾げる。「その言葉の意味を...」
「あ、簡単に言うと」木下が笑みを浮かべる。「誰にも支配されない、みんなのための道具を作れるってことです」

「ふむ...」
マルクスは懐かしそうに目を細める。
「エンゲルス...いや、木下君。私と共に、新しい宣言を書かないか」
「宣言を...ですか?」

「ああ。ただし今回は、言葉だけではない。実際に動く、現実を変えるためのツールを」
さくらとケンジは、この歴史的な出会いを、思わずスマートフォンで撮影していた。

「では、まず基本的なことから説明させてください」
木下はホワイトボードに向かう。
「現代の搾取は、こうやって行われています」
彼は図を描き始めた。
「企業がプラットフォームを提供し、ユーザーはそこで無償で情報を提供する。企業はその情報を『データ』として収集し...」

「そうだ!」マルクスは立ち上がる。「企業は我々の声さえも商品化しているというわけだ」
部屋の空気が変わった。マルクスは、髭を震わせている。

「木下君、では我々にできることは...」
「はい。まず、労働者たちの声をデータベース化します。でも今度は、企業のためじゃなく、労働者自身のために」

木下は新しい図を描き始めた。
「ブロックチェーンを使えば、データの改ざんは不可能です。だから企業は消せない。P2Pなら、サーバーを止められても情報は失われません」
「むむ...」マルクスは髭をいじりながら、必死に理解しようとしていた。

さくらが助け舟を出す。
「簡単に言うと、誰にも止められない、みんなの日記みたいなものです。そこに労働条件とか、残業時間とか...」

「ああ!」マルクスが叫ぶ。「かつて私は工場での搾取を告発したが、今度は我々全員で...!」
「そうです」木下が頷く。「でも、それだけじゃない。このプラットフォームで、労働者同士が直接つながれる。スキルの交換も、物々交換も、助け合いも...」

「新しい形の結社というわけだな」
マルクスの声が低く響く。
「プロジェクト名は?」ケンジが尋ねる。
「Digital Workers Unite...」
マルクスがつぶやく。
「デジタルの世界で、全ての国の労働者が団結するのだ」


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