張替日記|そこにある思い出の椅子 ~丸椅子の張替
連載「椅子と手のひら張替日記」
当店では、最低料金というのを設けている。
どんな依頼でも、最低いくらはもらいますという料金。
いくら以下ではお仕事は承っておりません、という料金。
それは、椅子をお持ち頂いたお客様とその椅子にしっかりと向き合うという私の覚悟の数字だ。
だから、とても小さな椅子をお持ちくださったときはつい伺ってしまう。
「それでも張り替えますか?」
と。
そんな私の問いに今回のお客様は、
「ぜひ、お願いします。これは亡くなった夫がどこからか持ってきたものなんです。だから、捨てられないんです。」
そうおっしゃられたのです。
18年前に亡くなられた旦那さんが、ある日どこからか持ってきた椅子。
旦那さんが亡くなってからは食卓でご飯を食べず、キッチンで食べるようになり、その時に使っている椅子だそうだ。
キッチンで使うし、はじめは同じようにビニールレザーを張ろうと思っていたようでしたが、
色々お話したり、色んな生地をお見せしたら、「やっぱり、この生地にします!」とおっしゃられ、選ばれたのは黄緑色のモケット生地。
パイル織の生地は、やっぱり見た目も触り心地もいい。
引取りに来られた際に、「芝イス」と命名された丸椅子の張り替えについて。
丸椅子の張替

シンプルで、簡単そうに見える椅子。
でもこの椅子は、スチールなのだ。フレームだけでなく、座面も。
木材であれば、普通の食卓椅子と同じ「ボウズ張り」ってやつなのだけれど、金属には針も釘も打てません。



針も釘も打てずに、どうやって張ってあったのか、張るのかというと、

針金を使います。
丸く裁断した生地の端を縫製して、針金を通します。
そして、エイッと針金を交差させて絞めていくのです。
すると写真のようになる。
針金を締める時、意外とコツがあって、ひたすらぐいぐい絞めていると針金が切れてしまって、最初からやり直しになる。
上手い事エイッ、エイッとやるのです(…なんの説明にもなってない(-_-;))
上手い事、ね。
最後、針金の端は短く切って、出来れば脚で隠れるところへ、生地の裏へ回して納めます(出てるとケガするから)。


何気なくそこにある椅子たちも、きっと誰かを支えている。
そう思うと、小さな椅子がとてもたくましく見える。
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古い椅子を張り替えて展示販売する「座と輪のコイス展」の開催に使わせて頂きます。宜しくお願いします!