同人ガチ初心者オタクが、推しのために何とか本を一冊完成させるまでの備忘録
前書き
この記事は、漫画原稿の制作についての記事となっています。
小説の場合はかなり勝手が違うと思いますので、ご了承ください。
なお、使用ソフトはCLIP STUDIO PAINT EXです。
はじめに
皆さん、同人活動エンジョイしてますか?私はガンガンエンジョイしています。描きたい話は山ほどあるのですが、次は11月のイベントに参加したいと考えていて、さっそく新刊の構想を練っています。
いずれは有志で集まって合同誌なんかも作ってみたいですね。
それから、ひとつ長めのストーリーを温めていて、その本は特殊装丁で出したいな~とか考えています。
…なんて考える日がくるなんて、1年前の自分は想像もしていませんでした。
なぜなら、これまで同人誌を出したい!なんて思ったことなかったから。
イラストに限って言えば、ごくたまに好きなゲームの絵を描いたり、セッション用にTRPG用の立ち絵を描いたりするくらいはやっていたんですが、ほとんど漫画を描く機会もなく、ましてやサークル参加して本を出すなど想像したこともありませんでした。
しかし2025年、とあるゲームとの出会いを経て、オタク人生XX年の中で初めて、どうしても本が出したくて出したくてたまらなくなってしまったのです。
そのきっかけとなったゲームがこの、アダルトボーイズラブゲーム「大穢」です。
※現在本編は18禁版しか出てないので注意

188cmと大柄で、熊のような体躯。年齢不詳の挙動不審な雇われ使用人。顔が美しすぎる!
このゲームのキャラクター、船野呉一郎くんに出会ってから、私のオタク人生が大きく動き出しました。
本当に面白いゲームなので、ご興味があればぜひ体験版をプレイしてみてください。
なんと彼、一応攻略対象ではあるのですが、ゲームが始まってすぐに殺されてしまいます。(HPのあらすじにも書かれてあるくらい最序盤に)
もっと、彼が幸せに笑ってるところが…見たい!本を1冊でも、この世に増やしたい…!
じゃあ、もう自分で描くしか…ない!
そう思って、勢いで春コミに応募しました。
しかし、この時点で肝心の同人誌についての知識は皆無、ド素人同然だったのです。
どれくらい無知かというと
まず人生で漫画を描いた記憶がほとんどない
4ページ以上の漫画を描いたのはこの同人誌が初めて
トーンの線数と濃度の違いをよくわかっておらず、というかトーンというものが何なのかもあんまりよく知らない
よく聞くモアレとは何ぞや?何するとモアレになるの?
あの一覧でずらーっと原稿並べるやつってどこから作るんでしょうか
トンボって何
…と、こんなレベルです。このままでは、出来の良し悪し以前に、印刷できるデータが作れるかすら怪しいところ。
ですから、今回の私の目的は「とにかく本を完成させる」こと!
私の妄想を本という形にできて、読んでくださった人にその内容を伝えられることがゴールです。
この記事では、こだわりの装丁とか、遊び紙とか、箔押しとか…そういったものに気を配れる前の前の前くらいの段階のスキルの人間が、右往左往しつつなんとか本を完成させた際の経過や反省点などをまとめました。
同人誌を出したいけど、でも全然知識もないし、ちょっと怖い…と二の足を踏んでいるあなたの背中を押すことができたら幸いです。
申し込み~イベント当日までのスケジュール
まずはイベント参加を決めてから開催までの大まかなスケジュールを。
とはいえ、作業の行程やスピードは本当に人によってまちまちだと思うので、サクッと紹介します。
前提として、夏休みの宿題を最終日に全部やるタイプの人間が書いたということだけ念頭に置いていただければ幸いです。
12月6日 イベント応募
春コミは参加者が多いと聞いたため、早期満了を恐れて勢いで応募。
この時点でどんな話にするかは一切決めていません。
1月8日 印刷所決定&サンプル紙取り寄せ
とりあえず印刷所だけ決めとこうということで、いろんなネットの評判をチェックした結果、ねこのしっぽさんに決定。
(選んだ経緯などは後ほど書きます)
この辺でサンプル紙も取り寄せました。
1月中旬 セリフプロットを立てる
頭の中にぼんやりと浮かんでいたアイデアを台本形式で出力し、本のテーマおよび起承転結を決めます。
※あくまで構想段階なので、実際にはここから結構セリフは変わってます。
1月下旬 ネームを切る
プロットをもとに、セリフを配置して大まかなコマ割りを決定します。
この時点でページ数を決定しました。
2月3日くらい 線画着手
このあたりで線画に入り始めました。
ページ数も少ないし案外期間に余裕があったのでは?という感じですが、いかんせん遅筆でラフと清書を複数回繰り返すタイプなものでして、思い返せばこの開始時点ですでに黄信号が出ていたような気がします。
(ちなみに、このあと2月5日にニンダイでパラノマサイトの新作が発表されまして…トホホ…)
2月21日くらい 線画が終わらない
この辺くらいから、「やばいw新刊落とすかもしらんw」から「大変申し訳ございませんが、新刊が出ない可能性がございます。」くらいのテンションになってきました。想定していた以上に線画の進みが悪いのです。
その上タイミング悪く、仕事がこれまでにない炎上状態となっており…帰ってタブレットに触る時間すらない状態となっていました。
3月10日~3月12日くらい 表紙を描く
本文に必死で表紙を描いていなかったことに気づき、死に物狂いで表紙イラストを描きました。
この辺から一日の睡眠時間が2時間程度になっています。
3月14日付近 線画完成。原稿にトーンを貼り始める
イベントまで残り6日。あとはもう時間との戦いです。
既に特急料金を払う心積もりでいました。
3月16日 当初の締め切り日
妥協すればこの日に入稿もできたのですが、1日延ばしてできるだけ推したちをかわいく描きたいという欲が出てきたため、延長。
モンスターエナジーとカフェイン入りのタフグミと栄養ドリンクを机上に大量に用意し、眠れぬ夜を過ごしました。
3月17日 特急割増入稿
13時の締め切りに対し、10時にギリギリ入稿。
3月20日 春コミ当日
会場に到着し、新刊が完成していることを確認…!
無事に頒布することができました。
当日のイベントの様子などはこちらのレポにちょこっと記載しております。
原稿作業にあたって参考にしたおすすめの本
私が付け焼き刃の知識で解説しても心もとないかと思うので、同人誌執筆にあたって大変お世話になった本を紹介します。
絵の技法書というよりは、同人誌を作るためのクリスタの技法書という趣が強いです。
原稿データの設定方法から、トーンの貼り方、データの書き出しまで、初歩の初歩から教えてもらえる大変親切な本でした。
ページ数の指定がどうとか…解像度がどうとか…トンボがどうとか…断ち切り線がどうとか…あの辺の“単語は聞いたことがあるけど、実際なんなのかさっぱりわからん!”なところについての情報は大体網羅してあります。
私のように本当にゼロ知識から原稿を始める場合、まずはこれ1冊買って軽く目を通し、それでもわからない部分や、自分のやり方を模索したい部分はネットでさらに調べる…という形でもいいんじゃないかなと思います。
印刷所関係について
先に述べた通り、印刷はねこのしっぽさんにお願いしました。
印刷所を選んだ決め手
選んだ理由としては、何と言ってもとにかく親切という評判があったからです。
今回の目的はとにかく不備なく無事に本を仕上げることだったので、サポートが手厚いと噂のねこのしっぽさんを迷わず選択しました。
結果として…ねこのしっぽさんにお願いして大正解でした。トーンの欠けや、吹き出しの部分との重なりなど、こんなとこまで…!?ってとこまで見てくださり。
ギリギリもギリギリだったため、もうへとへとで泣きそうになりながら入稿したあと、優しいスタッフさんから連絡が来て、細かく修正確認をしてくださったときの安堵の気持ちといったらありませんでした。
ちゃんと印刷できなかったらどうしよう…というかそもそもデータ不備で受け付けてもらえなかったらどうしよう…と不安でいっぱいでしたが、こんなに丁寧にチェックの上印刷してくれるのであればきっと大丈夫だろうという安心感がありましたね。ねこのしっぽLOVE。
とはいえ、原稿チェックは正式にサービスに入っているわけではありません。あとから修正をもらう前提で原稿は作らないようにしましょう!
私も次回は気を付けます。
本の仕様について
いざ本の印刷依頼をかける際、注文メニューに見たことない言葉が並びすぎて「な、なにを選んだらいいの…!?」とあたふたしてしまったので、参考までに私の本の仕様と選んだ理由を書いておきます。
サイズ:B5
A5と迷いましたが、デカい方が同人誌っぽいかなーと思ったからB5にしました。
B5はデカくて読みやすいですね。
ですが、実際イベントに行ってみたら結構A5の本の方が多かったです!A5も持ち運びしやすいサイズで、単行本みたいでかわいいので、次はA5で出そうかなと思ってます。
(原稿サイズが小さいとそれだけ描きやすいというところも大きいですね)
製本方法:無線綴じ
ページの背中を糊で止める方法です。
背表紙がある方が好みだなと思ったので無線綴じにしました。
ページ数:24ページ(表紙含む)
本文は20ページです。もう少し長くしたかったのですが、今回はコンパクトにまとめました。
ちなみに、ページ構成の都合上、奥付を最後に持っていくことができませんでした。
表紙を開いて1ページ目が注意書き、さらにめくってすぐ右側に奥付があります。
私が私のために作った同人誌なので、奥付が奥に付いてなくてもOKなのです。
印刷方式:表紙・本文ともにオンデマンド
予算の都合上、今回はオンデマンドを選択しました。
表紙用紙:ホワイトポスト マットPP加工
つるつるより少しサラついた手触りにしたかったので、マットPP加工をお願いしました。
これだけで高級感が出た感じがあります。
デメリットとしては爪で傷がつきやすいところでしょうか。
本文用紙:ソフトバルキー [白]
ほのぼの系の本だったので、真っ白な紙では青みが強すぎると感じ、暖色系のこちらの紙を選択。
遊び紙:なし
今回は装丁重視ではなかったので無しとしました。
反省点・やっておけばよかったこと
こうして無事に本を完成させることはできたものの、振り返ってみれば、あのときああしていれば…と思う点がたくさんあります。
どうか私の失敗を糧にしていただければ幸いです。
毎日原稿に触ることを習慣づける
サボり癖のない人、コツコツやれる人は意識する必要はありませんが、私のようなすぐにだらけてしまう人はこれを肝に銘じた方が良いです。
今日は休みでいいや、今日はゲームをやろう、なんて考えているうちにあっという間にイベント1週間前です。
実際に原稿に着手して、自分のスピードを自覚しないと、進捗状況の深刻さを把握できないんですよね。
「本気出せばすぐ終わるし」と思って甘く見ていた作業ほど、本気出しても全然終わりませんでした。しんどかった…。
とにかく素材を活用して時短する
新しいことを覚えるのが苦手な性分なもので、3D素材というものに苦手意識があったのですが(忌避しているという意味ではなく、ズボラすぎて使い方を覚えるのが面倒だったのです…)
あまりの進みの悪さを打開すべく、後半とうとう3D素材を導入しました。
素材があるのとないのとでは作業スピードが段違いです。使えるもんは使うべきです。
3Dの良さはなんといってもあらゆる角度に対応できることですね。
アオリフカンのコマを描くときの強い味方になってくれました。
ちゃんと寝る
睡眠時間を切り崩す生活を続けた結果、口内炎、口角炎にはじまり、全身のありとあらゆる場所が炎症を起こしていきました。
その上、あまりに夜ふかししすぎて身体が短時間睡眠に慣れてしまったようで、脱稿から数週間程度はどれだけ眠くても数時間ごとに目が覚めてしまい、連続した睡眠がとれない状況になってしまいました。
趣味で本を出すために無理をして、身体を壊して趣味ができなくなってしまっては元も子もありません。
やってよかったこと
逆に、振り返ってみてあれをやってよかったな…と思うこともいくつかあったので、備忘録として残しておきます。
使う予定の印刷所のサンプル取り寄せ
同人誌を出したことがある方からすると当たり前すぎることかもしれませんが、経験者のフォロワーさんに聞くまで、印刷所から紙のサンプルがもらえることを知りませんでした。
てっきりみんな何となく勘で紙を選んでるものかと…。
初心者なので、特に紙にはこだわらず、本の形になればいいかな~くらいに思っていましたが、実物を見てみたら「この紙は合わないかも…」「この紙だとかわいく印刷できるかも!」という欲が出てきました。
ネームの前にまずストーリーを文字に起こす
喫茶店のテーブル席にて、AとB向かい合う。
A「にしても驚いたよ。まさかお前だったとは」
A「最後に会ったのは、卒業式のときだっけ。…10年ぶりくらい?」
B「……。覚えてない」
Bがコーヒーカップに口付ける。(このとき、Bの表情を画面に映さない)
私の場合、こんな感じで書いてました。
(本の内容とは一切関係ない、適当に考えたシナリオです)
基本的にセリフメインで、ところどころよさげな構図とか演出を思いついたらメモ書きだけしていきます。
先に内容を文字に起こすメリットは、ネームに起こしてから大幅な修正が入ることを防げることです。
話を練り始めた当初は2つのぼんやりした構想があったんですが、そのうち一方は文字にした段階でシーンとシーンの画のつなぎ目がガタガタなことがわかり却下となりました。
脳内ではよさげなアイデアも、実際に書き起こすことで見えなかった粗が見えてくるんですね。
脳内妄想の段階では、シナリオに欠陥があっても脳内でうまいこと補完してしまっているようです。
ネームに時間をかけてしまうタイプなので、すぐに書いたり消したりできる文字の段階で体裁を整えられてよかったなと思います。
作業デスクに鏡を設置する
これは本当に効果絶大でした。
常に自分の顔が視界に入るのは、ちょっとヤなのですが…。
人間を描く際のもっとも身近にある資料は自分なんだなと痛感した次第です。
そして鏡を置く一番のメリットは、利き手じゃない方の空いてる手を鏡に映すことで、利き手側の資料としても活用できること。
その他にも服のシワの入り方や肩~手までの接続など、バストアップの欲しい角度の資料はだいたい鏡でチェックできるので大変おすすめです。
グレースケールではなくトーンを貼って描く
これは完全に好みの問題なので、どちらが良いとかいう問題ではないのですが…
普段はイラストを描くことの方が多いので、当初はイラストと同じ要領で色を塗れるグレスケ原稿で行こうと考えていました。
しかし、私はそんなに細かく書き込みをしないタイプのため、画面の情報量が少なく、グレースケールだとのっぺり感が出てしまうのです。
そこで、思い切って途中からトーンに転向!
ただのべた塗りの部分でも、画面の情報量が増えて少しリッチな印象になりました。

サッと作った雑な比較画像ですみません。
…本当に好みとか画風の問題ですね。私は個人的にトーン化したほうが好みです。
線画を細かく描く場合は、むしろトーン化すると線が埋没してしまう…ような気がします。
私のやり方としては、
線画:モノクロレイヤー
トーン:グレースケールで塗ってフォルダごとトーン化
でやってます。
個人的にはこれがしっくり来ています。
色を塗る要領でトーン貼りができるのがいいですね。
一回原稿を原寸大でプリントしてみる
とりあえず1ページ、線画からトーン、仕上げまでを完成させてしまって、印刷してみるのがおすすめ。
実際に本になった時の線の太さやトーンの濃さを仮チェックするのに大変有用です。
原稿って大抵拡大しながら描くので、気が付くと線を細くしようとしてしまうんですが、思ったより線画は太めで良いんですよね!
限界まで細さを求めた結果、線が飛んで読みづらくなってしまったら意味がありませんし。
あと、実際に紙に印刷されたものを見るとモチベーションが上がりますね。
原稿中にこれほんとに終わるのかな…と元気がなくなったときは、お菓子を買いがてらコンビニまで行って何ページか印刷してニヤニヤしてモチベを回復していました。
※最重要※ 経験者に聞く
ここまでつらつらと付け焼き刃ハウツーを書いてきましたが、結局は経験者に聞くのが一番早いです。
私も作業期間有識フォロワーに色々なことを教えてもらいました。
身近に頼れる有識者がいる場合、頭を下げて教えてもらうのが一番確実と思います。(もちろん、まずは自分で調べてから!)
最後に
自力で1冊作ってみたことで、同人誌作成に必要な最低限の印刷データ作成の知識や、自分の作業のペースがわかり、そして何より「一度はちゃんと本を作れたんだ!」という自信が得られました。
イベント参加前の私と同じように、「同人誌を作ってみたいけど、上手くやれるかどうか…」「装丁とか凝ったデザインとか、正直よくわからないし、どうにもハードルが高そうで…」とお考えの皆さん。勢いで作ってみましょう!
最初から完璧を目指そうとせず、まずは1冊完成させてしまえばいいのです。
それが満足のいく出来であっても、反省の多いものであっても、苦労の末にやっとできあがった自分の本を手に取ったとき、もっといろんな本を作ってみたい!という欲望が沸き上がってくると思います。
イベントから帰ってきて早速、箔押しのサンプルを発注した私のように…。
おしまい
