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楮、平地だからできたこと。


1. 知りたい!和紙の産地事情。

長尾さんの楮(こうぞ)畑だけでも十分な学びだったのですが、和紙ヲタクの私としては、どうしても他の産地の事情も気になります。

「もっといろんな産地のリアルを知りたい!」

そう思った私は、日本全国の様々な楮畑を調べ、時には現地へ視察に赴きました。その中で、SNSを通じて楮栽培の勉強会があったことを知りました。それは、私たち山中和紙と同じように「雪晒し(ゆきざらし)」の文化を持つ、新潟県長岡市にある『小国和紙生産組合』で実施されていました。


2.新潟の豪雪地帯、小国和紙への視察。

ちょうど別の用事で新潟県を訪れていたので、まずはどんなところかと思い、産地を見に行きました。そこで小国和紙職人の方と出会いと話し込んでいるうちに、なんと楮畑を案内していただけることになったのです。(お忙しい中、ご案内してくださり、本当にありがとうございます。)

楮畑は、工房から少し離れた山の中にありました。 そこで私の目に飛び込んできたのは、驚くほど綺麗に、整然と整理され、かつ大きく立派に育った楮の姿だったのです。

立派に育った楮(9月中旬)



3. 平地の強み、圧倒的な効率。

畝の間を広く確保して草刈りを効率よく。

小国和紙の畑を見て、私は「平地で楮を育てることの本当の強み」を改めて知ることができました。

もし、昔ながらの険しい「傾斜地」で楮を育てると、重い大型の草刈機を地面に這わせて動かすことはできません。大型草刈機でなくても、斜面での草刈りは足場の条件が悪く、危険を伴い身体の負担も大きくなります。

しかし、「平地」であれば、草刈機を地面に這わせたまま動かすことができます。 さらに、畑の通路を広く取り、まっすぐ「畝上げ(うねあげ)」をして整理して植えることで、草刈機をただ直線に動かすだけで、あっという間に効率よく草刈りを終わらせることができるのです。

譲り受けたらしい旧式の草刈機で畝間を走らせるだけ。
平地でも操作は力仕事。傾斜地でなんてとても操作できません。。



4. わかりやすく、やさしいこと。

楮(こうぞ)の株をわかりやすく。

楮の株がバラバラに生えていると、雑草にまぎれて、まだ芽が出始めて間もない楮の若い芽まで一緒に刈り取ってしまいます。

産地によっては、カマキリの卵のような「コブ(拳)」を株元に作ることで位置を分かりやすくする育て方もありますが、それでも草刈機の刃が当たれば、株自体を傷つけてしまいます。

だからこそ、「畝(うね)」を作って植える場所を一本の「線」として明確にし、樹と樹の間を綺麗に整理しておきます。そうすることで、株元の場所がひと目でわかり、安全に、迷いなく作業ができるようになります。

平地だからこそ、畑の構造を「わかりやすく」することができ、それが楮にとっても、働く人間にとっても、優しい環境をつくることに繋がります。


5. 人と楮のいい環境づくり。

隣の耕作放棄地。水路が詰まり流入、獣に荒らされた起伏に水が溜まる。

耕作放棄地化してしまった平地は「放っておくと水が溜まりやすい」という弱点もあります。

そこで、植樹をする前のまだ雪が降る前に、少しでも水はけを良くするための「溝(明渠/めいきょ)」を畑の周囲にぐるりと掘り巡らせました。こうすることで雨や雪解け水が周囲に逃げるようになり、水捌けの良い畑の環境を作ることができます。(長尾さんに教わりました。)

水が外に流れるように溝を掘る明渠(めいきょ)
排水先も一応整備。昔は田んぼだった名残。

「餅は餅屋」という言葉があるように、農業のことは農家さんに聞く。

和紙を「育てること」から始めるのであれば、職人さんという枠を超えて、プロの農家さんに聞くことも本当に大切だと実感しました。

初年度は何もかもが初めての実験。頼り方も分からず、スコップで手掘りしました。

そうして、楮にとっても、人間にとっても心地いい「いい環境関係」をつくることから、一歩を踏み出すことができたのです。

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