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Decktetですら遊ばない【Decktetで遊ばない番外編】(6)〜Unicodeとほにゃららタロット

前回の記事はこちら。

中途半端なところからの引き継ぎです。


N4012

2011年4月1日付けの、ISO/IEC JTC1/SC2/WG2 N4012
トランプ並びに大アルカナをあらわした記号を、どの区画に配置するか、も提案しています(※区画1F0A0〜1F0FFは、現時点のUnicode(17.0)でもPlaying Cards(トランプ)が採用されています。)。


引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4012.pdf

この提案では、1F0E0〜1F0FFの大アルカナ(切り札)はしっかり

これらのデザインです。
なのに、現在のUnicode(17.0)では、


前々回の記事で紹介した、おそらくほとんどの人がピンとこない記号が描かれています。

なぜこうなった?
で、これ何?

なわけです。

N4012には、いくつか写真を資料として添付しています。
こちらになります。


Figure 1. German playing cards showing a number of the Trumps with Roman numerals (photo: Michael Vogel).
【翻訳】図 1.ローマ数字でトランプの番号を⽰したドイツのトランプカード
引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4012.pdf


Figure 2. French playing cards showing a number of the Trumps with European digits (photo: ©éréales Kille®)
【翻訳】図 2.ヨーロッパの数字でトランプの数字を⽰したフランスのトランプ
引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4012.pdf


Figure 3. French playing cards showing the full Major Arcana (1-21) plus the Fool, as well as the four suits with five face cards (Jack, Knight, Queen, and King).
【翻訳】図 3.フランスのトランプカードで、⼤アルカナ全体 (1 〜 21) と愚者、および 5 枚の絵札 (ジャック、ナイト、クイーン、キン グ) が付いた 4 つのスーツが表⽰されています。
引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4012.pdf

図3の左上の大アルカナ(切り札)を拡大してみます。

なんかほのぼのな絵です。
ご存知の「魔術師(1)」とか「女教皇(2)」とかではありません。



ほにゃららタロット

N4012の導入の文章を引用します。

【引用】
The 22 Major Arcana cards were historically used in esoteric Tarot sets, but, like the Minor Arcana, they have also been adopted as trumps in traditional German playing card sets (called Tarock, Cego) and Italian playing card sets (tarocco piemontese). These cards are always numbered from 1 to 21 (often in Roman Numeralas as I to XXI); some have traditional Tarot images on them, but in the German tradition these are often represented by animals and pastoral scenery.
【翻訳】
22枚の⼤アルカナは、歴史的には秘教的なタロットカードセットで使⽤されていましたが、⼩アルカナと同様に、伝統的なドイツのトランプセット(タロック、セゴと呼ばれる)やイタリアのトランプセット(タロッコ・ピエモンテーゼと呼ばれる)でも切り札として採⽤されています。これらのカードには常に1から21までの番号が振られています(多くの場合、ローマ数字のIからXXIまで)。伝統的なタロットの絵柄が描かれているものもありますが、ドイツの伝統では、動物や⽥園⾵景が描かれていることが多いです。

注)太字は珍ぬが追加で太くしました。

引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4012.pdf

どうやら私達が知っているタロットのデザインと異なるものが存在するようです。
で、調べてみるとわかりました。

Bourgeois Tarot(ブルジョア・タロット)でした。

【引用】
The Bourgeois Tarot deck is a mid-19th century pattern of tarot cards of German origin that is used for playing card games in western Europe and Canada. It is not designed for divinatory purposes. This deck is most commonly found in France, Belgian Wallonia, Swiss Romandy and the Canadian province of Québec for playing French Tarot; in southwest Germany for playing Cego and Dreierles; and in Denmark for Danish Tarok.
【翻訳】
ブルジョワ・タロットは、19世紀半ばにドイツで開発されたタロットカードの一種で、西ヨーロッパとカナダでカードゲームに使用されています。占いの目的で使用されるものではありません。このタロットカードは、フランス、ベルギー・ワロン地方、スイス・ロマンディ地方、カナダのケベック州ではフランス・タロット、ドイツ南西部ではセゴやドライエルズ、デンマークではデンマーク・タロックとして最もよく使用されています。

引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Bourgeois_Tarot

「Tarot Nouveau(タロット・ヌーボー)」「Encyclopedic Tarot(百科事典タロット)」などとも呼ばれます。

N4012での写真は、(田園風景とありますが)おそらく上級貴族(ブルジョア)が描かれているブルジョア・タロットと思われます。

一方、動物を描かれたタロットもWikipediaに「Animal Tarot(動物タロット)」の項目があります。


ブルジョア・タロット、動物タロットともに、大アルカナ(切り札)の数字が上下2箇所に書かれています。
また、トランプの絵札と同様に、上下逆にしてもどちらかが正しい向きになる(下の図参照)ように描かれている「Double-figured(ダブル・フィギュア)」の方式を取っているものが多いです。

引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Animal_Tarot#/media/File:Adler-Cego_trumps.jpg


なぜ写真は通常のタロットではなくブルジョア・タロットを添付したのか。
推測ですが、ブルジョア・タロットの小アルカナのスートが現在のトランプと同じだから、と考えます。

ただ、これだけではタロットの大アルカナ(切り札)が差し替わった理由や経緯が不明です。

N4012の2ヶ月後、新たな提案が出されます


N4089

Michael Everson(マイケル・エバーソン)さん、Karl Pentzlin(カール・ペンツリン)さんコンビは、2011年5月31日付けでISO/IEC JTC1/SC2/WG2 N4089、タイトル「Proposal to encode disunify playing card and tarot card characters in the UCS(日本語訳:UCSでトランプとタロットカードの⽂字を分離してエンコードする提案)」を提案します。

そもそものきっかけは、2011年4月6日にMark Davis(マーク・デイビス)さんがN4012の提案へのコメントです。

【引用】
In UTC document L2/11-102, Mark Davis responded to N4012 by suggesting that the unification of what we shall call “mundane” cards and “esoteric” cards was a mistake:

From: Mark Davis
Date: 04/06/2011 01:41 PM
Subject: Disunify Tarot cards

Any unification of playing cards with tarot cards is simply a mistake. While they are historically related, they don't pass the legibility test, any more than Greek and Latin scripts as a whole do, or Latin and Russian do.
That is, someone who meant to send a message with a PLAYING CARD JACK OF SPADES would and should expect that the receiver would see just that, and not a Page of Swords. The same for someone sending a Page of Swords; they would and should expect that a receiver would see that, and not a Jack of Spades.
It was clearly a mistake have these characters represent both playing cards and Minor Arcana. Users can’t expect reliable interchange of Minor Arcana using these characters. We should at least state the facts in the standard.

【翻訳】
UTC⽂書L2/11-102において、マーク•デイビスはN4012への返答として、いわゆる「平凡な」カードと「難解な」カードを統合したのは間違いだったと⽰唆した。

主題: タロットカードの分離
出典:マーク•デイビス
⽇付: 2011年4⽉6⽇ 午後1時41分

トランプとタロットカードを統合するのは単なる間違いです。歴史的には関連性はあるものの、ギリシャ語とラテン語、あるいはラテン語とロシア語の⽂字体系全体と同様に、判読性という点で問題があります。
つまり、トランプのスペードのジャックを使ってメッセージを送信しようとした⼈は、受信者がスペードのジャックではなく、ただそれを⾒るだろうと予想し、またそうすべきです。同様に、ソードのペイジを送信した⼈も、受信者がスペードのジャックではなく、それを⾒るだろうと予想し、またそうすべきです。
これらの⽂字がトランプと⼩アルカナの両⽅を表すのは明らかに間違いでした。ユーザーはこれらの⽂字を使って⼩アルカナの確実な交換を期待できません。少なくとも、標準規格には事実を明記すべきです。

引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4089.pdf

まあ要するに、N4012の提案は、通常のタロットとブルジョア・タロットを混合しているのはキモい、ということです。


で、結局EversonさんPentzlinさんは、このコメントを受けてN4089ではどのように提案し直したか。

提案している区画1F0A0〜1F0FFのうち、大アルカナを配置した区画1F0E0〜1F0FFを、ブルジョア・タロットの大アルカナ(切り札)に差し替えます。

差し替え部分は黄色に塗られております。
引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4089.pdf

で、改めてブルジョア・タロットの切り札の紹介です。
2から順に、いくつかの枚数をグループにして名称が付けられています。

世代:
2:Childhood(幼年期)、 3:Youth(青年期)、4:Maturity(成年期)、 5:Old Age(老年期)
(一日の)時間:
6:Morning(朝)、7:Afternoon(昼)、8:Evening(夕)、9: Night(夜)
(四大)元素:
10:Earth & Air(土と空気)、11:Water & Fire(水と火)
行楽:
12:Dance(舞踊)、13:Shopping(買物)、14:The Outdoors(屋外)、 15:Visual Arts(美術)
季節:
16:Spring(春)、17:Summer(夏)、18:Autumn(秋)、19:Winter(冬)
遊戯::
20:The Game(遊戯)
愚行:
21:The Collective(集団)、0:The Fool(愚者)、1:The Individual(個人)
※最後のグループは、ちょっと順番を入れ替えております。


そして、新たに区画1F7A0〜1F7FFを設けて、タロットカードを配置します。

引用:https://www.unicode.org/wg2/docs/n4089.pdf

大アルカナだけではなくて、小アルカナ(スートは剣、盃、銭、棒)もあらたに追加しています。

ただ、追加したスート単体は追加提案していません。
なんとなく、大慌てだったかも知れません。

さて、現時点(Unicode17.0)での、区画1F7A0〜1F7FFはどのようになっているかというと、


引用:https://www.unicode.org/charts/PDF/U1F780.pdf


まったくもって、違う記号があてがわれております。


締め

ということで、Unicodeでのタロットの扱いについていろいろ書いてみました。
採用されいない情報も残っていて、大変興味深いことが知れました。
今回の記事は前後半の2回にわけてもよかったのですが、一気に出してしまえ、と。
匙加減が大雑把ですね。

Unicodeとボードゲームをからめたトピックは、まだまだあります。
機会をみておいおい記事にしようかと思います。

では。

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