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Visaとオリコが目指す次世代決済インフラ

「ステーブルコイン連動カード」が変える法人決済の未来

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米ドルなどの法定通貨と価値が連動する暗号資産(仮想通貨)であるステーブルコインは、投資目的の資産から実用的な決済手段へとシフトしつつある。この動きは、法人のクロスボーダー取引や資金管理の構造を変革する可能性がある。既存の決済ネットワークを融合させた「ステーブルコイン連動カード」の登場は次世代決済インフラの社会への第一歩として注目されている。ステーブルコイン連動カードの現在と将来について、Visaとオリエントコーポレーション(オリコ)に話を聞いた。

松田海氏
  • 松田
  • ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社
    法人ソリューションズ 本部長
橋詰直毅氏
  • 橋詰直毅
  • 株式会社オリエントコーポレーション
    執行役員 コンシューマー・ペイメント部門 コンシューマー・ペイメント企画部長

決済インフラとしてのステーブルコイン

―― ステーブルコインが投資目的の資産から決済手段へシフトしている理由をお聞かせください。

松田:法定通貨に連動するステーブルコインは、為替の変動が激しい新興国における貿易の代替決済手段として需要が高まっています。インフレやデフォルト(債務不履行)に直面する国との取引では、たとえば、米ドルに連動するステーブルコインを利用することで、為替リスクを低減できます。また、25年7月に米国でステーブルコインに関する包括的な規制法であるジーニアス法が成立するなど、ステーブルコインの信頼性や利用環境が向上しつつあることも後押ししていると考えます。

橋詰:仮想通貨は価格変動が大きく決済には不向きでしたが、法定通貨に連動するステーブルコインの登場で実用性が高まりました。日本は海外より立ち遅れていますが、既存の課題を解決していくことで、今後普及する可能性があります。

松田:送金の際の時間・コストのメリットもあります。国際送金の共通基盤となっている国際銀行間通信協会(Swift)のネットワークを用いた海外送金は中継銀行を経由する等により、場合によっては着金に1週間程度かかることがあり、送金コストも、送金額によりますが少額であれば7~8%と高価です。特に為替や手数料優遇の薄い中小企業にはコストが高くつくことがあります。ステーブルコインは送金時間の短縮やコスト削減につながる可能性があります。

橋詰:グローバルな仕入れ活動において、従来の送金手数料や着金タイムラグによる為替リスクは大きな課題です。既存の金融システムからブロックチェーンという分散型システムへ移行することで、中継プロセスや営業時間の影響を排除できます。スマートコントラクトで自動化することで、決済が瞬時に処理されるため為替変動を極小化できるためです。

写真:松田 海氏
ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社 法人ソリューションズ 本部長 松田 海氏

2つの課題を解決するステーブルコイン連動カード

―― ステーブルコインによる決済にはどのような課題がありますか。

松田:一つは、ステーブルコインを法定通貨に戻して、自分の銀行口座に移動させるプロセスが煩雑なことです。もう一つは、ステーブルコインを使える場が少ないことです。これを解決するのがステーブルコイン連動カードです。法定通貨に戻して自分の銀行口座に移動させる手間を省略できる点が特徴で、利便性を高め、安全なカード決済フローを実現しています。Visaでの2025年のステーブルコイン連動カード決済額は約52億ドルと、まだ全体の0.04%に過ぎません。しかし、前年比で約4倍の成長を遂げており、潜在力を感じています。

橋詰:オリコ、SLASH VISION(スラッシュビジョン、シンガポール)、アイキタス(東京・新宿)の3社が提供している「Slash Card」は、米ドルに連動するステーブルコインであるUSDCを決済原資として利用できるカードで、国内外のVisa加盟店で決済が可能です。決済のたびにステーブルコインを法定通貨へ交換する必要がなく、ウオレットからUSDCをひも付けるだけで、瞬時にVisaの利用枠が開く仕組みになっています。後日、チャージしたUSDCで約定(清算)される後払いの決済サービスです。

松田:加盟店側も仮想通貨を直接受け入れることなく、通常の通貨として売り上げを受領できるため負担がありません。将来的には決済精算自体をすべてステーブルコインで直接精算できるようにする構想もあります。ステーブルコインとカードとの統合は既存の金融システムとの懸け橋だと言えます。

―― Slash Cardにおけるオリコの立ち位置を教えてください。

橋詰:当社はスタートアップに対して、Visaブランドのクレジットカード発行に関する支援を行っています。前述の「Slash Card」の例では、SLASH VISION、アイキタスと連携することで、ブロックチェーン、スマートコントラクト、ウオレット、決済の分析など、最先端の知見を蓄積しています。こうした知見を今後の法人カード展開にも生かしていきます。

写真:橋詰 直毅氏
株式会社オリエントコーポレーション 執行役員 コンシューマー・ペイメント部門 コンシューマー・ペイメント企画部長 橋詰 直毅氏

企業の資金流動性、資金繰りの効率化に期待

―― ステーブルコインが企業財務に与える影響や金融インフラにおける将来像をどうお考えですか。

松田:企業財務においては、即時決済によって資金流動性の効率化が向上します。送金滞留がなくなることで金利負担も削減できます。30年までに、クロスボーダー決済の5~10%がステーブルコインとなり、利用者は技術を意識せず決済アプリやPOS(販売時点情報管理)端末を通じて活用できるようになるとの予測する調査もあります。

橋詰:中小企業の資金繰り改善に影響を与えるでしょう。キャッシュレス比率が50%を超える中、売り上げの立替金回収までに平均45日程度かかることが資金繰りのボトルネックです。売り上げが即日ステーブルコインで入り、ビジネスカードや請求書カード払いに即時転用できれば、キャッシュフローが改善します。

―― 安全性と利便性の両立に向け、カード会社や仮想通貨事業者はどう連携すべきでしょうか。

松田:マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与対策などへのリスク管理は妥協できません。不正取引に対抗するには、決済ネットワーク、カード発行会社、仮想通貨事業者間でデータを共有することが不可欠です。米国でジーニアス法が成立するなど、主要国での規制の強化が不信感を払拭し、健全な成長を後押ししてくれることを期待します。

橋詰:ブロックチェーンの透明性を生かした決済分析ツールで資産の移転の経緯を完全に可視化することで、不正取引を防ぐ体制を構築できます。金融庁や他事業者と連携し、安全性と利便性を両立した健全な競争環境を整えることが重要です。

―― 本日はありがとうございました。