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【AWS Lore #SAA-15】沈黙の波紋(The Silent Ripple)

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Last updated at Posted at 2026-04-09

--第14話はこちら

朝の光

昨夜の「返して」が、まだ胸の奥に残っている。
眠れたような、眠れていないような……
そんな曖昧な感覚のまま、私はゆっくりと目を開ける。
体をゆっくりと手を支えにして、ベッドの上に起こす。

胸の奥から伝わる何かが、じんわりと重い。
光粒が、服の下で微かに脈動している。

部屋の洗面台に付いた鏡を覗き込む──
瞳の奥に、ほんの一瞬だけ、私とは違う“揺らぎ”が走った気がした。

「……気のせい、だよね……」

そう言い聞かせて、私は部屋を出た。

ルミエラの直感

私が扉を開けた瞬間、
左隣の部屋からルミエラが同時に出てきた。

「あっ……ニカさん……おはようございます。
 ……あれ?……その、顔色が……」

心配そうに覗き込むその瞳が、
胸の奥をチクリと刺す。

「大丈夫だよ。……ちょっと寝不足なだけ」

不安を感じさせないように、精一杯笑ってごまかす。
でも、ルミエラは“いつもと違う”と気づいていた。

その優しさが、逆に胸に刺さる。

“理の揺らぎ”

私とルミエラが話していると、
私の右隣の部屋から、ネリアお姉様が静かに姿を見せた。

ネリアお姉様が私の近くに立った瞬間──
いつもの優しく包み込む表情がわずかに揺れた。

「……深層の気配が……まだ残っていますね……
 ニカさんの周囲に……微かに揺らぎが……」

ネリアお姉様の指先が私の手に触れた瞬間、
胸の奥の重さが一瞬だけ和らいだ。

(……私が……揺らぎの中心……?)

そんな考えがよぎる。

胸の奥で、また“何か”が脈打つ。

3人で宿屋の食堂へ向かう途中、
胸の奥が突然、存在を主張する様に強く脈打った。

「……っ……!」

光粒が反応して、微かに明滅する。
あの声は聞こえない。
でも、確かに“何か”が、私の中の“何か”が揺れている。

ルミエラもネリアお姉様も気づいていない。
私だけが、その波を受けている。

(……返して……?
 いや……今は聞こえない……)

不安だけが、静かに積もっていく。

来訪者

食堂に入り、私たち3人は空いたテーブルに座る。
ほのかに香るコーヒーの香りが、朝の穏やかさを強調している。

扉が静かに開く。

ティリアが、入ってきた。
私たちを見つけて、落ち着いた足取りでこちらへ歩いてくる。

「ニカさん。ルミエラさん。ネリアさん。おはようございます。
 昨夜の件が気になり……様子を見に来ました」

声は静かで、表情もほとんど変わらない。

「……ミリアは、今朝はまだ休んでいます。
 泣いた跡はありましたが、体調に問題はありません。
 しばらくすれば落ち着くと思います」

淡々と、単調に必要な情報だけを述べる。

そして、同じ調子で続けた。

「それと──アストルから伝言があります」

その言葉に、私の周りの空気が少しだけ張りつめる。

「深層の主様が“目覚めかけている”と。
 ニカさんの身に、何か変化が起きていないか……
 確認するように、と」

その言葉が落ちた瞬間、
また、胸の奥が強く脈打った。

光粒が、服の下で明滅する。

深層の記録庫へ

もう、私の異変は隠しきれなかった。
心配そうに、ルミエラが私の手を握る。
ネリアお姉様は私の様子を確認し、いつにもなく深刻な表情で言った。

「……深層の記録庫に行きましょう。
 “返して”……ニカさんが聞いた……
この言葉の意味を探るには……そこしかありません」

私は胸を押さえながら、小さく頷いた。

「……うん。……そこで何かがわかるなら……
私は行きたい……」

胸の痛みはより強くなっていく。
静かに、でも確実に──
深層の影が近づいてきていた。


✦ お読みいただき、ありがとうございます
深層編はまだ始まったばかりです。
ゆっくり、一緒に進んでいただけたら嬉しいです。

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