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【AWS Lore #SAA-14】深層の余波(Afterglow)

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Last updated at Posted at 2026-04-09

--第13話はこちら

深層の“声”がまだ胸に残っている
胸の奥が、まだ熱い。
いや、熱いわけじゃない……
“触れられている”感覚だけが、消えない。

「……っ……は……っ……」

呼吸が浅い。
視界が揺れる。
光粒が、服の下で脈動している。

「ニカさん!!」
ルミエラが慌てて支えてくれる。

ミリアが泣きそうな顔で私の手を握りしめていた。
「ねぇ……やだよ……さっきの……まだ続いてるの……?」

アストルはまだ膝をついたまま、震える声で言った。

「……主様の“声”が……まだ……残っておられる……」

深層の空気が、胸の奥にまとわりついて離れない。
“ーー返して”の残響が、私の意識の奥を微かに揺らす。
それは、微かだけど、確かな揺らぎ……。

ネリアお姉様が杖を握りしめ、
静かに、しかし切迫した声で言う。

「……ここに長くいるのは危険です。
……ここは、一旦……戻りましょう……」

深層の扉の先……

深層の扉を抜けた先は、
街の外れにある林の奥だった。
遠くに、街の明かりが夜を照らしていた。

夜の気配が濃く、風が木々をゆっくりと揺らす。

ミリアが不安そうに私の袖を掴む。
「ねぇ?……ここ、どこ……?」

ルミエラが周囲を見回しながら言う。
「街の……外れ、でしょうか……
街の明かりが遠くに見えますね……
 でも、こんな場所……来たことありません……」

ネリアお姉様は静かに頷いた。
「えぇ……深層の扉は……理の薄い場所に繋がると聞いたことがあります……
 ここから街へはそう遠くは無さそうです。
一度、街へ戻りましょう……」

アストルは今なお震えた声で言う。
「……急ぎましょう……主様の気配が……まだ残っています……」

私は胸を押さえつつ、
ルミエラ、ネリアお姉様に支えられながら、
林の中を歩き出した。

林を抜けた安堵

木々の間を抜けるたびに、
深層の気配が少しずつ薄れていく。

でも──
胸の奥だけは、まだ重いままだった。

光粒が、時折、脈動する。

「ニカさん……歩けますか……?」
ルミエラが支えながら尋ねる。

「うん……大丈夫……」

そう答えたけれど、
胸の奥にある“触れられた感覚”は消えない。
むしろ、その感覚は、時間が経つにつれて、より存在感を増していく気がした。

ミリアはずっと私の手を握っていた。
「ねぇ……ニカさん……ほんとに……大丈夫なんだよね……?」

「……大丈夫。ありがとう、ミリア」
私は精一杯の笑顔でミリアに応える。
上手く笑えているのか、私にはわからない。
ミリアを心配させたくない気持ちと、私の中にある違和感は、少しずつ複雑に絡み合っていく。

ネリアお姉様は周囲の理の揺らぎを感じ取っているのか、
眉を寄せていた。

「……深層の気配が……まだ揺れています……」

アストルは後ろから静かに見守っている。
その足取りは、まだわずかに震えていた。

やがて、林の向こうに街の灯りが見えた。
そこは、レイアス家の前だった……

レイアス家の前で

レイアス家の門灯が見えたところで、
私たちは足を止めた。

ミリアが私の手をぎゅっと握る。
「……アタシ、ここで帰るね……
 でも……ニカさん……ほんとに……大丈夫なんだよね……?」

心配そうなミリアに、精一杯の笑顔で応える。
「うん。……大丈夫……心配してくれてありがとうね」

ミリアは涙をこらえながら頷き、
家の中へ駆けていった。

アストルは深く頭を下げる。
「……私も……今日は一度戻ります……
 主様の気配が……まだ……揺れておりますので……」

「アストルさんも……無理しないでね」
私は精一杯の労いの言葉を紡ぐ。

「……はい……ニカ様も……どうか……お気をつけて……」

アストルはその場から、すっと気配を消す。
まるで現れた時とは反対に、そこにアストルと言う存在が無かったかのように……

残ったのは、
私、ルミエラ、ネリアお姉様の3人。

ネリアお姉様が静かに言う。

「……ニカさんを、宿屋までお送りしましょう」

ルミエラも力強く頷いた。
「もちろんです……行きましょう……」

宿屋へ戻る夜道

夜風がそっと冷たい風を乗せて、頬を撫でる。
街は静かで、遠くの灯りが風に揺れている。

でも──
私の中、胸の奥だけが、まだ深層の気配を抱えたままだった。

光粒が、服の下で微かに脈動する。
でも、その脈動は、私しか気付かない。

「……ニカさん……もう少しですからね……」
ルミエラが優しく支えながら歩いてくれる。

ネリアお姉様は周囲を警戒しながら、私たちの前を歩いている。
「……理の揺らぎは……弱まりつつあります……
 ですが……油断はできません……」

私は小さく頷いた。
「……うん……まだ……終わってない……」
やがて、宿屋の灯りが見えてきた。

宿屋の部屋で

宿屋に入り、
ルミエラに支えられながら、ゆっくりと階段を上がる。

私の部屋の前で、
ネリアお姉様が扉を開けてくれた。

「ニカさん……座ってください……」

ルミエラに促され、ベッドに腰を下ろすと、
胸の奥の重さが少しだけ和らいだ気がした。

ネリアお姉様がそっと言う。
「……今日は、本当に……大変でしたね……
 どうか、ゆっくり休んでください……」

ルミエラも微笑む。
「何かあったら、すぐ隣の部屋にいますから……」

「ありがとう……2人とも……」

「おやすみなさい、ニカさん」
「……おやすみなさい……」

2人が部屋を出て、
扉が静かに閉まる。

部屋に、静寂が戻った。

──返して。

視界が揺れた。

それは、音ではない。
喉から発せられた声でもない。
私の中、意識の奥に直接触れる“意志”。

深層の気配が、胸の奥からじわりと滲み出す。

「……っ……!」

呼吸が浅くなり、息が詰まる。
私は胸を押さえ、必死に呼吸を整えた。

「……返すって……何を……?」

答えは返ってこない。
ただ、深層の理が静かに波を打つだけだった。
胸が痛いほど脈打つ。
光粒が言葉に反応して、強く明滅する。

──返して。

その言葉が、私の意識を深層へ引きずろうとする。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
深層編はまだ始まったばかり。
ゆっくり、一緒に進んでいただけたら嬉しいです。

--第15話はこちらから

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