不良少女〜バカヤロウって言って、ひっぱたいて、抱きしめて、更生させる〜 前編(創作 フィクション)
〜1990年代のとある田舎町〜
僕の名前は岩田岩男、15才の高校1年生だ
父さんの仕事の都合で転校することになった
引っ越し先は田舎で高校の数が少なかったため、引っ越し前に通っていた高校より大分、学力が落ちる学校に通うことになったけど家から歩いていけるのは嬉しかった
明日は転校初日だ
緊張するなあ…なかなか寝つけないので、僕は深夜まで勉強をしていた
…わお …わお、遅刻するわよ…いわお、遅刻するわよ‼ 岩男‼遅刻するわよ‼
えっ⁈今、何時だ⁈
7時50分⁈
ああ、もう完全に遅刻だ‼
[母さん‼なんで、起こしてくれなかったの⁈]
[なに言ってるのよ、何度起こしたと思っているの‼]
ああ、母さんとこんな不毛な言い争いしている場合じゃない
僕はテーブルに乗っていた食パンを一切れとって急いで学校へ向かった
なんてこった
よりによって転校初日に遅刻なんて
食パンをかじりながら走っていた僕は曲がり角で
バン と衝撃を受けて転んでしまった
いてて、誰かとぶつかったみたいだ…落としてしまったパンを拾おうとすると
痛えなコノヤロー‼オイ、テメー、どこ見てあるってるんだ、このシャバ増がよお‼ひき肉にしてやんぞ‼
いきなり、僕を罵倒した相手は、パサパサに傷んだ金髪の女の子だった
女の子は続けざまに
ああ、テメーのせいで、せっかくの純トロ(※1)が全部こぼれちゃったじゃねーか‼どう、落とし前つけるんだ、シャバ増‼
と言って、道に転がっている小さな瓶を拾っていた
じゅんとろ? なんだ、それ? 明らかに不良少女だ
関わったら面倒くさそうなので
すいません、弁償します、と言って1000円札を少女の前に置いて学校に向かった
不良少女はまだ何か叫んでいたが、相手にせずに走り去った
学校につくと、先生に
[転校初日から遅刻か…まあ、いい、1時間目は私の授業だから、このまま一緒にきなさい]
と言われた
教室に入ると先生が
[今日から転校してきた、岩田岩男くんです]
と言って紹介してくれた
[じゃあ、岩田はあそこの空いてる席に座って]
何か視線を感じる…
僕の席の隣に座っていたのは、さっきぶつかった不良少女だった
[オイ、シャバ増、さっきはよくも逃げてくれたな 生まれてきたのを後悔するくらいの ヤキ をいれてやるから、覚悟しとけよ]
そう言う彼女の口から見える歯はほとんどが溶けたようにボロボロで、わずかに残った歯も真っ黄色だった
昼休みになり、不良少女に校舎裏につれていかれた僕は、バットや竹刀を持った男女6人に囲まれた
[おう、テメー、朝はレイコの純トロを台無しにして逃げたらしいな]
グループの番長らしき男が言った
僕は
[逃げてないよ、お金だって1000円払ったし]
と言うと、番長は
[テメー舐めてんのか、シャバ増‼純トロが1000円で買えるかよ‼2000円だ、2000円‼ 逃亡料と迷惑料、合わせて10000円払え‼]
と言った
面倒くさくなった僕は、油断している番長の懐に潜りこみ、足払いをして転ばせて頸動脈を絞めて一瞬で落とした
怯んだ5人に向かって
[僕がダメにしたものが2000円なら、あと1000円は払うから、もう許してください]
と、言って 1000円を置いて教室に戻った
次の日、教室にいくと、不良少女から
[テメー格闘技やってんな‼汚えぞ、シャバ増のフリをしやがって‼]
と、言われたので、
[中学まで、柔道やってただけだよ、もうやめたけど]
と、言うと
[なんで、やめたんだよ、テメー]
と、言われたので
[関東大会の決勝で、ケガをしてもう、柔道できなくなったんだ…]
と、言うと
[えっ昨日、あんなに強かったじゃん、もう治ったの?… のか、テメー?]
と、言われたので
[素人相手に落とすくらいはできるけど、本気で柔道やっている相手には、僕の右手はもう通用しないんだ…]
というと、不良少女は
[ふうん…バカヤロウ…]
と言って僕の右手を真っ直ぐに見つめた
僕は、はじめて彼女の顔を直視した
髪はパサパサした金髪だが、目は非常に大きくて、鼻筋はしっかりと通っていた
まじまじと彼女の顔を見た僕は思った
口元の汚えブスだな
そんな風にぼんやり思っていたら、不良少女は僕の胸と腕をつかんで、エイッ と 柔道の投げ技の払い腰に近いものをやろうとしてきた
不意うちであろうが、素人の女の子の投げ技なんかは食らわないはずの僕だけど、彼女が投げようとしたときに体が密着したのに戸惑ってしまって体のバランスを崩されそうになった
[あっ今、惜しかったよな?毎日挑戦するから、アタイが岩男を投げられたら、逃亡料10000円払えよ]
と、いって無邪気に笑ったレイコの汚い口元を見て、胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じた
(つづく)
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※1 純トロ…純度のトルエン(シンナー)のこと 昭和から平成初期において、1部の若者が薬物の変わりに吸引していた工業用有機溶剤
吸引するとトリップ状態になるが、健康被害がすごいため、薬物としての使用は徐々に減っていった
後編はこちら↓
